調査レポート

世界のラグジュアリー企業ランキング 2020

ファッションとラグジュアリーの新しい時代

新型コロナウイルスによるパンデミックは、顧客行動の変化と共に、ラグジュアリー企業が価値創出へ向けた新たなパラダイムを導入することを加速させた。ラグジュアリー企業は、自分たちの姿を従来では考えられなかった方法で再構築し、これまで以上に顧客とのエンゲージメント強化を図っている。本稿では、ファッションとラグジュアリーの新しい時代について検討し、ニューノーマルにおいて業界を牽引していくトレンドについて検証した。

新型コロナウイルスによるパンデミックによって、人的、社会的、経済的な障害が多く生じており、私たちは近代における前例のない危機を経験している。しかしながら、ラグジュアリー業界では、この未曾有の破壊的な状況の中で、ラグジュアリーそのものを見つめ直すことで新たな方針を検討し、ニューノーマルにおいての新しいビジネス機会やそれに伴うビジネスモデルについて検討する動きが出てきている。

多大な困難に対応するには、ラグジュアリー企業が持ち続けてきた2つの要素である「伝統」と「新たな環境下に対する即応性」の両方が必要である。
 

ラグジュアリー企業は顧客とつながる新しい方法を模索しており、顧客や地球環境への配慮など進化するニーズに対応し、新しい価値や視点を受け入れることが必要になっている。

中でもサステナビリティーへの対応は、ファッション・ラグジュアリー企業のアフターコロナでの復活へ向けた重要な鍵となるだろう。既に世界のラグジュアリーブランドは、「グリーン」テクノロジーや気候変動に対するカーボン・オフセットなどへ巨額の投資を行っている。
 

また、ラグジュアリー企業は、デジタル化の推進に遅れをとっていたが、パンデミックにより急速にデジタル化を推進し始めており、顧客とのコミュニケーションやAIなどを活用した消費者データ分析などを加速化させている。

しかし、リアル店舗での顧客体験がデジタルに完璧にとってかわるわけではない。ラグジュアリー企業は、コロナ禍においてもソーシャルディスタンス、安全な衛生環境を確保した店舗へ転換し、かつパーソナライズされた店舗経験を提供し続けるために、オムニチャネル化でのアプローチを進めようとしている。


2019年度の世界のラグジュアリー企業Top100社の売上高は前年の2,660億米ドルから150億米ドル増加して2,810億米ドルとなった。しかし中国や米国といった大規模市場で成長率が鈍化しており、為替変動の影響を除いた売上高成長率は8.5%と、前年度の成長率10.8%は下回った。Top10社が初めてTop100社の売上高合計の半分以上を占め、さらにはTop100社の純利益合計の71.1%ものシェアを占めた。また、Top100社のうち、12社が売上高及び営業利益の前年度比2桁成長を記録したハイパフォーマー企業となった。


本レポートではラグジュアリー市場におけるトレンドや課題についての見解を示している。さらに世界のラグジュアリー企業Top100社を2019年度(2019年12月31日までの会計年度)の連結売上高に基づいてリストアップし、地域別、商品カテゴリー別にその動向を分析している。

主な調査結果:

  • 2019年度の世界のラグジュアリー企業Top100社にランクインするために必要な売上高は、前年度比2000万米ドル増の2億3,800万米ドルで、Top100社の平均売上高は28億米ドルであった。
  • Top100社のラグジュアリー品売上高に占めるTop10社の構成比は前年より増加し、過去7版ではじめて過半数を超え、51.2%であった。
  • 中国、日本および米国に拠点を置くラグジュアリー企業Top100 社の2019 年度の前年度比売上高成長率は、2018 年度に達成した高い成長レベルから急落した。一方でスイス、フランスおよび英国に拠点を置く企業は、Top100 社の平均よりも高い11.2%の純利益率を達成
  • 商品カテゴリー別では、複合ラグジュアリーが12.8%の売上高成長率となり、他のカテゴリーを上回る成長を見せた。同カテゴリー企業の売上高は、2019 年度のトップ10 社のラグジュアリー品売上高の総額の3 分の1以上を占めた。

 

原文(英文)レポートは以下よりご参照いただけます。

Global Powers of Luxury Goods 2020

世界のラグジュアリー企業ランキング 2020(PDF, 970KB)

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