最新動向/市場予測
アフターコロナの宿泊業 生き残りへの処方箋(第1回/全2回)
新型コロナウイルスの猛威は、世界中の人々の行動様式に大きな変化をもたらしています。特に日本における緊急事態宣言の発出、海外各国におけるロックダウンおよび水際対策による国境封鎖でヒト・モノの流れが大きく制限されたことにより、特に宿泊業では甚大な影響を受けていることは論を俟ちません。本稿では、現状を主に財務的な視点から短期的な生き残り施策を展望します。(週刊ホテルレストラン2020.8.21日号掲載)
宿泊業におけるコロナ影響
全世界で人流が止まり、宿泊事業者は過去最大レベルの経営危機を迎える
英ホテル調査会社STRによると、 『2020年3月の国内ホテルの“稼働率”は32.5%、4~5月は14.0%前後』『“平均客室単価”は前年同月比▲28.5%~▲47.5%』『“RevPAR(販売可能な客室1室あたりの収益)“は4~5月で前年同月比▲90.0%超』と、いずれの指標も過去最悪の水準で推移している。実際にコロナの影響に伴う経営破綻状況は、2020年7月8日時点で40件と、宿泊業は全業種中2番目に多く、宿泊業におけるコロナの影響がいかに深刻であるかが数字上でも明らかである。
2020年5月末に緊急事態宣言が解除されたものの、6~7月の宿泊予約状況は約8~9割の事業者が「70%以上減少」と回答(国土交通省『令和2年版国土交通白書』)、消費者の58.6%が「夏以降の旅行についても旅行回数を減らす(本誌アンケート結果)」と答えており、これらに「インバウンド需要の長期低迷」「宴会需要の減少」「出張の減少」「第二波リスク」などを考慮すると、構造的にコロナ以前のマーケットには完全に戻ることはなく、活気を取り戻すまで数年間という年単位の期間を要するであろう。
企業における財務的インパクト
最悪の場合、5社に1社・3,800もの事業者が来年度債務超過に
今回、“過去最大レベルの経営危機”が企業の財務にどのようなインパクトを与えるか、筆者らは簡易シミュレーションにより可視化を試みた。シミュレーションの前提として「国内観光需要」「インバウンド需要」「出張需要」「宴会需要」などそれぞれの回復シナリオに基づき、「A.宿泊特化型」「B.フルサービス型」それぞれの事業者タイプ毎の財務インパクトのシミュレーションを実施した。
続きはPDFでご覧ください。
筆者
デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社
マネージングディレクター 稲川 直樹
ヴァイスプレジデント 原田 翔太
PDF(記事全文)のダウンロードはこちら
記事全文はこちらのPDFからご覧いただけます。