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「PC1台で意思決定を大きく変える」―AIの進歩により、データサイエンティストに求められる役割とは
2018年11月、デロイトアナリティクス染谷 豊浩による講演
2018年11月27日、東京都内で開催されたDataRobot, Inc.主催『AI Experience 2018 Tokyo』において、デロイトアナリティクスの染谷 豊浩が「デロイト トーマツが考えるデータサイエンティストの将来像とAIの民主化」と題し、講演を行いました。
目次
- データ分析ブームと、データサイエンティストの変遷
- AIの発展の中、データサイエンティストは何を求められるか
- ブームを経た10年後のAI、そしてデータサイエンティストが魅力的な職種であり続ける理由
- プロフェッショナル
データ分析ブームと、データサイエンティストの変遷
インターネットの普及、モバイルデバイスやクラウドなどの技術の進歩に伴い、人々とデータの関わり方は変化してきています。2012年には「21世紀、データサイエンティストこそが最も魅力的な職業である」という記事が話題になり、2015年頃からは大手メディアでAIに関するニュースが扱われる機会も増加しました。
講演者の染谷は「2018年現在は、“データ分析ブーム”であると思われるが、AIの進歩で、データサイエンティストを取り巻く状況は今後どう変化するのか、本日は考えたい」とプレゼンテーションを始めます。
「データサイエンティスト」という職種に対するイメージは大きな変貌を遂げました。職種そのものへの一般的な認知が不足していたことから、不遇であった20年前と比較して、企業のビッグデータやAIに対する投資が増えている背景もあり現在では人気職業のひとつとなっています。一方で、日本におけるデータサイエンティスト人材は5万人不足していると言われており、スキルや役割が曖昧であることから採用が困難である、と染谷は続けます。
AIの発展の中、データサイエンティストは何を求められるか
現状のデータサイエンティストには、データ分析のための「技術的・分析的スキル」と、「ビジネス感覚・コミュニケーションスキル」の両方が求められています。しかし、あくまでそれは理想であり、実際にこのようなスキルを持ったデータサイエンティストを採用するのは大変困難です。
テクノロジーの進化に伴う「AIの民主化」への流れによって、データサイエンティストの役割はどのように変わるのでしょうか。現状の「データ分析ブーム」や「AIブーム」を背景に、テクノロジーはさらに高度化を迎えます。「AIの民主化」が進むことで、データサイエンティストが人気職種であり続ける“ポジティブなシナリオ”も、データサイエンスがビジネススキルとしてコモディティ化し、専門職種が消滅する“ネガティブなシナリオ”も、AIブームである現時点においては想定する必要があります。
ここで染谷は、テクノロジーで自動化が進む領域は確かに存在するものの、ビジネスにおける課題設定、データの理解、データ活用後の業務の見直しなどについてはまだ人間の経験や知識が求められるだろう、と見解を述べました。
ブームを経た10年後のAI、そしてデータサイエンティストが魅力的な職種であり続ける理由
データサイエンティストの立場から、染谷は90年代の「データマイニングブーム」と現在の「AIブーム」を比較します。
90年代に起こったデータマイニングブームにおいては、大量データの探索によってビジネスが大幅に改善されることが期待されていました。データを蓄積するためのインフラ整備の機会に繋がったほか、データによる定量化や意思決定の手法が普及するなど良かった点もありましたが、分析モデルの正確性が重視され、活用のためのノウハウが不足していたため、ビジネス的なインパクトは限定的なものでした。
「AIの民主化」を前に、現在のAIブームを俯瞰すると、AIによって良い結果が得られるはずである、と期待される一方、AI導入に関する報道が先行し、導入後の成果に関する情報はまだ少ない、と染谷は語ります。画像や音声データの認識技術が進化することにより、新たなデータソースが活用可能になったとしても、データの解析技術はそこまで進歩していません。期待が先行している現在、RPAやSNSデータの活用もAIとして扱われるケースがあるなど混乱も見られ、AI活用に対する正しい理解が求められます。
「AIの民主化」に向け、データサイエンスが単なるブームで終わらないためには、「データサイエンティストが“ビジネスインパクト”を生み出し続けられるか」が重要である、と染谷は強調しました。
最後に染谷は「10年後のAIの姿」について、以下の4つの予測を掲げました。
- AIは「構築」から「利用」へ
・ 構築済みのAIモデルを利用する流れが進む(汎用化)
・ メンテナンス体制やコストが論点になる
- 規制対応のコストが大きくなる
・ データ保護・利用の規制が強化され、対応のためのコストが増大する
・ データはアセット(資産)であり、同時にエクスポージャー(リスク資産)となる
- AI自体がリスクになる
・ “誤ったデータやモデル”による経営リスクが深刻な問題になる
・ AIガバナンス/品質管理が重要な経営機能の1つになる
- もっと忙しくなる
・ AI活用を前提とした働き方となり、複雑で多くの業務を同時並行で進めることが求められる
・ AI活用を前提とした競争により、人間はより忙しくなる(過去の技術革新と同様)
「AIが進歩し、役割が変わったとしても、データサイエンティストの本質は変わらない。”PCが1台ありさえすれば、世の中の意思決定を大きく変えられる“、だからこそ魅力的な仕事であり続けると私は考えている」と講演を締めくくりました。
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