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調査レポート
ファミリーエンタープライズの転機:ファミリービジネステクノロジーのアート
企業成長に必要なテクノロジーインフラの近代化
企業の成長促進、生産性の向上、新たな市場機会への資本投下において、テクノロジーが果たす役割がますます重要になる中、強固なテクノロジーインフラを構築するには、持続的な投資、経営層からの強力なサポート、従業員との連携、ベンダーとの深い関係性が必要であり、数年がかりの取り組みとなります。ファミリー企業においては、訪れる機会や転機に備え、先見性のあるアプローチを取っていくことが重要です。
全8回にわたる「ファミリーエンタープライズの転機」シリーズですが、今回はテクノロジーインフラを近代化し、新しいテクノロジーを導入することにより、かけがえのないファミリービジネスをその先の未来に引き継いでいく方法について探っていきます。
ファミリーエンタープライズは、顧客中心であること、関係を重視すること、長期志向であることから、高く評価されています。IT 環境を運用するための要素を構築、維持するにあたり、これらのファミリーエンタープライズの特性を活かすことができます。
成長の促進、生産性の向上、新たな市場機会への資本投下において、テクノロジーが果たす役割がますます重要になる中、強固なテクノロジーインフラを構築するには、持続的な投資、エグゼクティブからの強力なサポート、従業員との連携、ベンダーとの深い関係性が必要であり、数年がかりの道のりになることを理解することが重要です。ファミリー企業においては、訪れる機会や転機に備えて、このような理解のもとに先見性のあるアプローチを取っていくことが基本です。
スケーラブルで戦略的な投資
本シリーズの第2回で探った通り、資本源は、ファミリーエンタープライズが、テクノロジーの導入などの新しい取り組みにどのようにアプローチするかという点に影響を与えます。Chris Jackson(Managing Director, Deloitte Consulting LLP)は、「ビジネスで行う資本配分の決定の中で、柔軟で迅速、かつスケーラブルな成長を可能にする強固なテクノロジーベースラインを確立することにより、多くのファミリーエンタープライズは、恩恵を受けることができる。」と述べています。Jacksonは、急速なペースで進むテクノロジーの変化を乗り切るために必要な重点分野として、クラウドコンピューティング、AI、機械学習などのテクノロジーへの投資を挙げています。
そのベースラインに沿ってテクノロジー資産の整理を行い、インフラを進化させるために明確な計画を策定することが、継続的な成功には不可欠です。このアプローチを取ることにより、以下のように様々なメリットを得ることができます。
・成長を支える
テクノロジーは、組織の成長意欲を高め、顧客エンゲージメントやブランドの価値向上をサポートすることができます。
・拡張を可能にする
テクノロジーの基盤は、インダストリーコンバージェンス(産業の壁の崩壊)と呼ばれるように、従来の産業やセクターの境界線があいまいになりつつある今、どのようなビジネスチャンスがもたらされるのかを考える際にも有効です。インダストリーコンバージェンスの例として、実店舗を持つ小売業者がヘルスケアやウェルネスに進出している例、クレジット販売というオプションが普及したことにより小売業者がオンラインショッピングに進出し、以前は銀行やクレジットカード会社の領域であった分野で事業を展開している例などが挙げられます。Jacksonによると、コアテクノロジーに投資をしていない企業には根本的なハンデがあるため、コンバージェンスのチャンスが訪れたときに機敏に対応できない可能性があります。
・バリュエーションの向上
適切なテクノロジーインフラはファミリーエンタープライズの本質的な価値を高める可能性があり、ファミリーエンタープライズが資本調達の代替手段を検討する際の重要な考慮事項になり得ます。
ファミリーエンタープライズがこれらの投資を検討するにあたり、取締役会は、経営者の意思決定を導いたり、異議を唱えたりすることで、重要な役割を担うことができます。取締役会は、グッドガバナンスの原則に沿って助言と監督を行うことで、多様な視点を提供し、戦略の形成に貢献することができます。機能している取締役会は、現状に異議を唱え、顧客エンゲージメントの改善、または研究開発、人事、財務などの業務上の改善により、競争優位のためにテクノロジーをよりよく活用する方法を検討するよう経営者を促すことで、付加価値を高めることが可能です。また、取締役会のメンバーは、自らの経験に基づき、次世代においても競争力を維持するために、これらの投資が重要だという洞察を提供できるかもしれません。
さらに、ファミリーメンバーや株主への分配と、必要なビジネス投資の規模を検討するなどのトレードオフの判断が必要な場合にも、助言を提供できるかもしれません。テクノロジーと変革の道のりは数年に及ぶこともあるため、リーダーと取締役会は、組織を導いていくために必要な努力と資本の度合いを考慮する必要があるでしょう。
棚卸し(成果志向を確立する)
テクノロジーインフラの進化についてファミリーと取締役会の足並みがそろったならば、次のステップでは、ファミリーエンタープライズのテクノロジーの状態を評価し、既存のシステムがファミリーエンタープライズの戦略的目標を達成するために十分整備されているかを判断します。
Jacksonは、「テクノロジーに関する意図的なプランニングにおいては、組織が引き出したいと考える具体的な価値と、そのためにテクノロジーが現在および将来的にどのように貢献できるかをじっくりと考えることが必要だ。」と述べています。
例えば、長年カスタム開発されてきたソフトウェアや自社運用のシステムに頼って顧客ニーズとコンプライアンスニーズに対応してきたファミリーエンタープライズを思い浮かべてみましょう。開発者や実務担当者を、より高価値のビジネスニーズに取り組ませることがこのファミリーエンタープライズの目標であるとすれば、リーディング プラクティスや最新の制御技術を利用したクラウドベースのテクノロジーやソフトウェアを活用することでその目標を達成できるでしょう。
同様に、テクノロジーが人材育成の目標を支援する場合があります。新しいテクノロジーや新興テクノロジーが整備された環境で働きたいと考える人材を惹きつけ、感動を与え、定着させられるかについての組織の能力とテクノロジーには直接的な相関関係があるようです。雇用主がリモートという働き方を受容し始め、もはや地理的な制約を受けなくなったポジションへの人材獲得が競争になっていることからも、テクノロジーは有利な条件になり得ます。
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