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CFO Insights 2021 March

インメモリ・コンピューティング(In-Memory Computing):「大幅な高速化を約束」

CFO Insightsでは、CFOが直面する課題に関しての最新情報や知見を毎月発信しています。今月は、経理財務部門における「インメモリ・コンピューティング」の活用性についてお伝えします。

インメモリ・コンピューティングとは?

デジタル情報を効果的に取り扱うためには、可用性(継続的な稼働)やタイムリーさを損なわずに大量のデータセットを処理できるアーキテクチャが必要となり、それはまさにインメモリ技術で実現できます。この技術の主な用途には、トランザクション処理、イベント処理、分散キャッシュ、シナリオのモデル化などがあります。

インメモリ・コンピューティング(以下、IMC)は、経理財務部門が同時に大量のトランザクションにアクセスし、分析できるようにアクセススピードを大幅に高速化します。リアルタイムでの自動通知は、より良い意思決定に役立ちます。さらに、拡張機能によって1000分の1秒単位で日々変化するビッグデータの計算を可能にします。

将来、多くの場面でのデータ管理ニーズにおいて、インメモリが不可欠なツールとなるでしょう。IoTから発生する情報量の爆発的増加ひとつを取ってみても、インメモリは企業がデジタルトランスフォーメーションを進める上で欠かせない機能になりそうです。

ハードウェアの視点から言えば、データ分析は3つの要素、すなわち、(1)演算を実行するプロセッサ、(2)(処理された)データを保存するストレージ(3)その2つの間でデータ転送を行うシステムで構成されています。当然ながら、これらの要素のうち最も遅いものが、データ分析を実行する上でのボトルネックとなります。具体的に問題となるのは、ランダムアクセスメモリ(RAM)の応答時間ではなく、ハードディスクの応答時間です。処理しようとするデータがハードディスクから迅速に取り出されないために、処理能力が最大限に活用されないのです。そこで、ひと言で言えば、IMCでは、これまでハードディスクに保存されていたデータをメモリ上に置くことになります。ハードウェア特性そのもの(メモリの性能向上) に重点対応すれば、応答時間は劇的に短縮されます。それにより、データ分析の処理スピードが、圧倒的に速くなります。次にIMC活用事例を紹介いたします。

インメモリ・コンピューティング活用例

ケース1

ある鉄道会社は、毎日12,000本の列車で2,300万人以上の乗客を運んでいました。旧来の技術では、オンライン予約のために同時にアクセスできる人数は4万人までに限られ、利用者の多くが列車の予約に最大で30分もかかるような状況でした。それが、インメモリ技術の導入で、12万人以上の同時利用者に対応できるようになりました。今では予約完了までほんの数秒しかかかりません。

 

ケース2

ある小売業者は、古くなってきた財務システム環境を刷新するための数年がかりのプログラムの一環で、インメモリを導入しました。従来、予算編成や予測に使用していたシステムは20年以上前のもので、スプレッドシートのテンプレートや附属明細表に大きく依存していました。同社が選んだソリューションは、合計金額から取引の詳細まで掘り下げる能力を持つ新たなシステムでした。このシステムが分析の向上、財務プロセスにかかる時間の短縮、出力表示オプションの拡充を実現しました。

ケース3

ある保険会社は財務プロセスを改善し、標準化するために新たな財務プラットフォームへの移行を望んでいました。インメモリ技術を導入することで、同社はほぼリアルタイムでデータにアクセスし、分析を行い、意思決定をサポートできるようになりました。

CFO組織にとっての「インメモリ・コンピューティング(IMC)」

概して財務業務全体にかなりの複雑さがあるものですが、その中でも財務の機能を損ないかねない領域がいくつかあります。例えば、複数のERPシステムは、組織が迅速かつ的を絞ったイノベーションサイクルを達成できなくなる要因のひとつです。運転資本の管理-DSO(売上債権回転日数)、キャッシュフロー、キャッシュポジション(現金持高)を含む-は慢性的な課題です。また、複雑さは決算サイクルを長期化させる大きな要因となっており、信頼性の高い財務データをいつでも必要な時に利用したいという財務チームの望みを阻む可能性があります。

財務部門でIMCを有効に活用すれば、最小在庫管理単位(SKU)レベルでの売上数量や収益の詳細な予測を用いて仕事ができるようになります。

IMCは、特定地域の市場や特定のチャネルにおける価格変更が財務および販売数量に及ぼす影響を相互に調査して、多次元のシナリオをテストできるようにします。アナリストは、特定のアクションが収益性、在庫、キャッシュフローに及ぼす影響をほぼ瞬時に判断できるようになります。IMC分析システムにより、複数の異なる前提条件やシナリオセットをわずか数分で実行し、結果を比較し、関係者が知識に基づいて最良のアプローチを議論できるようになるのです。

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