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CFO Insights 2021 September

パートナーマネジメントオフィス(PAMO):コスト削減だけに留まらない大きな価値を得るために

CFO InsightsではCFOが直面する課題に関する最新情報や知見を毎月発信しています。今月は、サービスプロバイダーとの協業を通じて戦略的にシナジー効果を生み出すために企業内に設置すべき"パートナーマネジメントオフィス(PAMO)"についてご紹介します。

経理財務部門においてアウトソーシングを中心とした業務プロセス効率化への動きが続く中、多くのCFOはコスト削減だけでなく、サービスプロバイダーとの協業を通じて戦略的にシナジー効果を生み出すことを検討しています。

大規模な変革が段階的に進むにつれ、さまざまなサービスパートナーが関与するようになりますが、そのパートナーシップが強固で透明性が高く健全であれば、パートナーの価値を引き出し、最大限活用できることでしょう。

この戦略的パートナーシップを構築、維持するには、拡張性があり、柔軟かつ強固なパートナーマネジメントオフィス(PAMO)を設置することが不可欠です。このPAMOはクライアントへの高品質なサービスを保証するためのBSO(ビジネスサービス最適化)エコシステムにおいて鍵となる要素です。

PAMOは、第三者パートナーを管理し、商品やサービスの評価、日々のリレーションや契約締結などをおこなう組織の一部門です。発生した出来事を可視化し、分かりやすく管理することが重要な役割です。

PAMO設置によるメリットと課題

PAMOのフレームワークにおいては、第三者のサービスプロバイダーは単なるベンダーではなく戦略的ビジネスパートナーとして捉えます。PAMOはパートナーとの戦略的な関係を構築し、長期的な関係強化をサポートするサービス部門です。そのためPAMOは従来のベンダー管理部門とは異なるプロセスや特徴を備えています。PAMOを設置する具体的なメリットは以下のとおりです。

メリット

  • リスクの軽減:移行評価するための戦略を定義し遂行します。マイルストーンペイメントの承認やプログラム間の相互依存を管理するガバナンス体制を定義するうえで重要な役割を果たします。
  • 柔軟性:契約で定めた業務を効率的に実行し契約内容との差異が少なくなるように、要件を予測します。
  • コスト削減:契約時に決めた目標と比較しながら、実際のパフォーマンス結果を綿密にトラッキングします。目標とする生産性の達成状況を把握することで、契約内容変更を交渉しスコープ・クリープ(要件変更)を管理します。
  • 品質向上:高品質のサービスを受けられるように、第三者サービスプロバイダーの活用を支援します。同時に、公正かつ適切な品質目標を定めたサービスレベルについてトラッキングや報告を行うだけでなく、そのレベル向上にも努めます。
  • 生産性向上:生産性の基準値を設定し、契約と照らし合わせて進捗状況をトラッキングします。生産性の向上につながった場合は最終的に工数を削減するか、または業務拡大を行うことができます。
  • 複数パートナーとの契約:新たに提携したサービスプロバイダーを、複数パートナーとの運用モデルに迅速に融合させるため、統合を加速します。

課題

しかしながら、最適なPAMOモデルを確立することは想像よりはるかに難しいことです。なぜなら、パートナーマネジメント機能の範囲が、単に選定したベンダーを管理することから、サービスプロバイダーとの戦略的パートナーシップを組織全体で長期的に維持することへと拡大しているためです。ただし、組織内の真のけん引役として見識にあふれたCFOであれば、次のような課題にも対処できることでしょう。

  • 経験豊富な人材の確保:業務範囲や契約の見直しに対応できるスキルを持った経験豊富な人材の確保
  • 柔軟性と拡張性:市場の変化や事業ニーズ、戦略的方針の変更に対応できる柔軟性と拡張性
  • 最適な組織設計:ベンダーの運用コストを管理・コントロールするほか、社内ガバナンスを強化するための最適な組織設計
  • 有用な資金と予算:業務効率向上と手作業の削減を可能にする最適な技術プラットフォームの利用
  • ツールと技術:最小限の人数で容易に展開可能な柔軟性と拡張性のある技術とツールキットの構築
  • バランスのとれたPAMO運用モデル:ハイブリッドモデルと一元化されたポリシー、プロセス、コントロールの拡張性のバランスをとり、実装すること
  • 役割と責任:役割と責任範囲の明確化および社内外のすべてのステークホルダーに対する明瞭な説明
  • 戦略的パートナーシップ:主要な事業部門に重要なサービスを提供する主要大手ベンダーとの戦略的パートナーシップの構築

PAMOの機能構成

デロイトのこれまでの経験や先進的な事例を通じたナレッジによれば、健全なPAMOモデルは次の5つの基本機能で構成されます。

契約管理

  • 契約義務の管理とトラッキング
  • コンプライアンスの管理
  • 契約ガイドのドラフト作成および正式な文書等による契約手続き
  • 契約修正
  • 契約交渉および再交渉
  • 契約書のドラフト作成サポート
  • 契約変更の処理
  • 契約リスクの管理

 

財務およびコマーシャル管理

  • レートおよび業務量、請求額、支払い方法の確認
  • メリット、コスト削減、サービスクレジットのトラッキング
  • 予算策定と予測支援
  • キャパシティの最適化管理および報告
  • 業績見通しの収集および集計

 

問題と照会内容の管理

  • エスカレーションされた問題に関する解決策の把握/問題の報告/問題の記録
  • 問題に対するエスカレーション管理プロセスの構築と管理
  • 訴訟管理の実施
  • ガバナンスの仕組みとフォーラムの相互依存に関する指針の提供

 

サービスパフォーマンスの管理

  • サービスレベル契約(SLA)の月末承認および例外違反プロセス
  • SLA変更管理の導入
  • 違反が続く場合のSLAエスカレーション
  • サービス提供またはパフォーマンスに問題がある場合の対処

 

ガバナンスとコントロール

  • ガバナンスフォーラムの設置と運用規約の制定
  • アジェンダの準備、問題と対応の把握、資料作成、フォーラム後のフォローアップ
  • 関連資料のバージョン管理とセキュリティ管理

おわりに

上記の基本的な機能は、PAMOを構築する上での単なる出発点にすぎません。例えば、コロナ禍のような状況下では、組織がパートナーとの提携を進める段階で、事業継続計画の観点でパートナーと知識やモチベーション、リスクを共有できる信頼関係を築くための最善の方法は何か、といった点も検討すべきです。

さらにCFOにとって重要なのは、パートナーとの関係によるメリットを最大化し、持続可能なPAMOの構築に向け長期的な視野を持ち続けること、またそれこそがパートナーシップにおける成功の鍵であることを常に意識しながら全体像を把握することです。これには、時間と労力をかけて主な社内ステークホルダーや重要なサービスプロバイダーとの関係を構築することが必要です。

また、適切なツールと拡張性のあるケイパビリティを備えた、優れたITソリューションへ投資すること、そして企業戦略の変更にも容易に適応できる柔軟なパートナーマネジメントの運用モデルを確立することなども求められます。すなわち、強固かつ効果的なPAMOを構築するには、柔軟性、革新性、そして決断力が必要になるでしょう。

ぜひお問合せを

アウトソーシングの新たなトレンドに向け企業は常に組織の見直しを行っています。エコシステムは今後ますます拡大し、ダイナミックになっていくことが予想されるため、PAMOへの投資はこれからも重要な要素であり続けるでしょう。

さらに視座を高く持つことで、PAMOは複数のサービスプロバイダーの革新力を戦略的に管理する強力なツールとして機能することができます。これには、アウトソーシングの構築、管理、提供方法に変更が必要となるだけでなく、価値を実証するための新たなトラッキング・調査機能も必要となります。

お問合せは、著者のWang Yue Cassandra (yuewang@tohmatsu.co.jp)までお願いいたします。

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