IASBは、財務諸表における気候関連及びその他の不確実性に関する設例を提案する

国際会計基準審議会（IASB）は、公開草案IASB/ED/2024/6「財務諸表における気候関連及びその他の不確実性（設例案)」を公表した。コメントは2024年11月28日まで募集している。

背景

利害関係者が、企業が財務諸表における気候関連リスクの報告にIFRS会計基準を不整合に適用し、財務諸表における気候関連リスクに関しての不十分な情報を開示している可能性があることを懸念していることを示した、アジェンダ協議2020 （IAS Plus－英語※ 1）におけるフィードバックに対応して、IASBは、財務諸表における気候関連リスクに関する狭い範囲のプロジェクトを、その維持管理プロジェクト・パイプラインに追加した。

本プロジェクトは、2023年3月 （IAS Plus－英語※ 2）に 、利害関係者の懸念に以下の方法で対応することを目的とするIASBのアクティブ・アジェンダに移行した。

• 教育的資料および記事の開発を検討する。
• IFRS解釈指針委員会といくつかの事項について協議する。
• 考え得る設例を検討する。
• 見積りに関する開示に関連して、考え得る狭い範囲の基準設定を検討する。

考え得る設例が、本日の公開草案の対象である。設例案は主に気候関連の不確実性に焦点を当てているが、示されている原則及び要求事項は他のタイプの不確実性にも同等に適用される。

設例案

公開草案IASB/ED/2024/6 「財務諸表における気候関連及びその他の不確実性（設例案）」には、8つの設例案が含まれている。

• 追加開示につながる重要性の判断（IAS第1号／IFRS第18号）
  この設例案では、製造企業は資本集約型の産業で事業を行っており、気候関連の移行リスクにさらされている。
• 追加開示につながらない重要性の判断（IAS第1号／IFRS第18号）
  この設例案では、企業はサービス・プロバイダーであり、気候関連の移行リスクに対して限定的なエクスポージャーを有する産業で事業を行っている。
• 仮定の開示：具体的な要求事項（IAS第36号）
   設例案では、企業の事業により大量の温室効果ガスを排出し、事業を行う一部の法域において温室効果ガス排出規制の対象となっている。
• 仮定の開示：一般的な要求事項（IAS第1号／IAS第8号）
  設例案では、企業は資本集約型の産業で事業を行っている。
• 仮定の開示：追加の開示（IAS第1号／IFRS第18号）
  この設例案では、政府が、将来においてその法域で事業を行い、利益を生み出す能力を制限することとなる規制を発表している法域で、企業が事業を行っている。
• 信用リスクに関する開示（IFRS第7号）
  この設例案では、企業は、さまざまなタイプの顧客にさまざまな商品を提供する金融機関である。
• 廃棄及び現状回復に関する引当金に関する開示（IAS第37号）
  この設例案では、企業は石油化学製品メーカーであり、石油化学施設のプラントの廃棄及びサイトの原状回復の義務を有する。
• 分解された情報の開示（IFRS第18号）
  この設例案では、企業は、その使用により大量の温室効果ガスが排出される、耐用年数が長期の有形固定資産の項目を所有している。

設例案に対するコメントは、2024年11月28日まで募集される。

発効日及び経過措置

IFRS会計基準に付属する資料（設例を含む）は、当該基準の不可欠な一部ではなく、したがって強制的なものではないため、発効日または経過措置は提案されていない。

さらなる情報

》IASBのプレスリリースの日本語訳（ASBJのWebサイト）
》IFRS財団のウェブサイト上の公開草案へのアクセス （PDF:216.17KB－IASBのWebサイト－英語）
》IAS Plusのプロジェクトページの財務諸表における気候関連およびその他の不確実性（IAS Plus－英語）
》iGAAP in Focus 財務報告「財務諸表における気候関連およびその他の不確実性についての設例を提案」（IAS Plus－英語）

※1》 ‘Agenda consultation 2020’（IAS Plus－英語）
※2》 ‘Climate-related Risks in the Financial Statements’（IAS Plus－英語）