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IASB、のれんと減損に関するディスカッション・ペーパーを公表          

IAS Plus 2020.03.19

IASBは、ディスカッション・ペーパーDP/2020/1「企業結合-開示、のれん及び減損」を公表した。本プロジェクトは、企業が買収する事業について、合理的なコストで投資家に提供する、当該事業を買収する意思決定について経営者に説明を求めることに役立つ情報を改善することを目的としている。コメント期間は、2020年9月15日に終了する。

国際会計基準審議会(IASB)は、包括的なディスカッション・ペーパーDP/2020/1「企業結合開示、のれん及び減損」を公表した。IASBの関連プロジェクトは、企業が購入する事業について、合理的なコストで投資家に提供する、当該事業を取得する意思決定について経営者に説明を求めることに役立つ情報を改善することを目的としている。この文脈で、IASBはIFRS第3号「企業結合」及びIAS第36号「資産の減損」の改善の可能性を検討している。本ディスカッション・ペーパーのコメント期間は、2020年9月15日に終了する。

 

背景

のれんと減損についてのIASBのプロジェクトは、IFRS第3号「企業結合」の適用後レビューに起因するものである。

適用後レビューについてのフィードバックは、のれんの減損が常に適時に認識されるとは限らず、IFRSが要求する開示は、買収時に予想されたように取得した事業が成果を挙げているかどうかを理解するのに十分な情報を提供していないことを明らかにした。また、IAS第36号「資産の減損」でのれんについて要求される減損テストはコストがかかり、複雑であるというコメントもあった。一部の回答者は、のれんの償却を再導入することも提案した。

2015年2月に、言及された懸念事項に対処し、IFRS第3号「企業結合」及びIAS第36号の改善の可能性を検討するために、IASB は、以下の重点分野をリサーチ・アジェンダに追加し、後にのれんと減損のプロジェクトへと発展した。 


• IAS第36号の減損テストを改善する。
• のれんについての事後の会計処理(減損のみのアプローチと償却及び減損アプローチの相対的なメリットを含む)。
• 企業結合で取得した無形資産の識別及び測定
  本日公表されたディスカッション・ペーパーに至る議論は、2015年9月に開始された。
 

予備的見解の概要

ディスカッション・ペーパーDP/2020/1「企業結合-開示、のれん及び減損」は、以下のトピックについての予備的な見解を示している。

 

取得に関する開示の改善

IASBは、企業が取得の戦略的根拠、取得の目的、及び目的の達成をモニタリングするための指標を開示することが要求されるべきであると考えている。これは、取得日に開示しなければならない。取得日以降、目的に対する成果を開示しなければならない。企業は、取得をモニタリングするために経営者が内部的に利用している情報を開示することとなり、したがって、外部の報告目的のためのみに情報を作成する必要はない。経営者が成果をモニタリングする間、開示が要求される。企業が成果のモニタリングを中止する場合、または成果をモニタリングするための指標を変更する場合、その理由を開示することとなる。IASBはまた、取得から期待されるシナジーの金額または金額の範囲を開示し、被取得企業の確定給付年金負債及び債務の額を開示し、実際の収益及びプロフォーマ収益の双方、営業利益及び営業活動によるキャッシュ・フローを開示することを企業に要求する追加の提案を開発すべきであると考えている。

 

のれんの会計処理の改善減損テストをより効果的に実施できるか? 

IASBは、合理的なコストでテストの有効性を大幅に改善することは実現不可能であると考えている。また、のれんは他の資産と一緒に減損についてテストする必要があるため、シールディングを除去することはできないことも指摘している。さらに、ディスカッション・ペーパーは、減損テストがどのように取得が成果を挙げていることを常に示すことはできないが、テストが失敗していることを意味するわけではないことも示している。成果を挙げている場合、テストは、資金生成単位全体の帳簿価額が、その合算された回収可能価額よりも高くないことを保証するという目的を達成することが期待できる。上記の開示のアイデアは、投資家が必要とする取得の成果に関する情報を投資家に提供するのに役立つ可能性がある。最後に、ディスカッション・ペーパーは、キャッシュ・フローの見積もりが楽観的過ぎる場合、IFRSを変更することによってではなく、監査人および規制当局によって対処することが最善であると指摘している。

 

のれんの会計の改善-のれんの償却を再導入するべきか?

減損テストは合理的なコストでは大幅に改善できないと結論付けたため、IASBは、のれんの償却を再導入するかどうかを検討した(減損テストは引き続き要求される)。ディスカッション・ペーパーは、ボードメンバーがこのトピックについて異なる見解を持っていることを指摘しているが、償却が財務報告を大幅に改善することになるという説得力のある証拠がないため、IASBは減損のみアプローチを維持すべきであるという、(ぎりぎりの)過半数による予備的な見解となっている。減損テストは、恣意的な償却費よりも有用な情報を提供すると考えられており、取得の意思決定についてより効果的に経営者に説明を求めることができる。IASBは、減損テストが厳格に適用されていないという懸念のため、または単にのれんの帳簿価額を減らすためのみのために、償却を再導入することは適切ではないと考えている。この文脈では、IASBはまた、企業が貸借対照表で、のれんを控除した資本合計を表示することを要求する提案を開発すべきであるという予備的な結論に達した。

 

のれんの会計処理の改善減損テストの簡素化

IASBは、強制的な年次の定量的な減損テストからの救済を提供すべきであるという予備的見解である。減損の兆候がある場合にのみ、定量的な減損テストが要求されることとなる。IASBは、重要性のある減損損失が兆項なしで発生する可能性は低いため、テストの堅牢性の低下はわずかであると考えている。同様に、IASBは、兆候がない場合にテストを実施することの便益はわずかであるという意見である。また、IASBは、使用価値の計算を改善することを意図している。これは、企業がコミットしていないリストラクチャリング及び資産の拡張のキャッシュ・フローを含めることを禁止するIAS第36号の制限を削除し、企業が使用価値を計算する際に税引後のインプットと税引後割引率を使用することを認めることにより達成されることとなる。 

 

その他のトピック

ディスカッション・ペーパーはまた、識別可能な無形資産をのれんとは別個に認識することを引き続き要求すべきであるというIASBの予備的見解も示している。IASBは、IAS第38号の要求事項を修正すべきであるという説得力のある証拠はないと考えている。取得した無形資産と自己創設無形資産の会計処理を合わせるかどうかを検討することは、本プロジェクトの範囲を超えることとなる。

ディスカッション・ペーパーに対するコメントは、2020年9月15日まで募集されている。

 

さらなる情報

下記リンクをクリックしてください:

IASBのプレスリリース(IASBのWebサイト-日本語)
ディスカッション・ペーパー DP/2020/1「企業結合-開示、のれん及び減損」(IASBのWebサイト-英語)
IASBスナップショットDPの紹介(日本語版) (IASBのWebサイト-日本語)
IAS Plusのプロジェクト・ページのれんと減損(IAS Plus-英語版)

 

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
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