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IASBは、IAS第1号及び重要性の実務記述書の修正を最終化  

IAS Plus 2021.02.12

IASBは、作成者が財務諸表にどの会計方針を開示するかを決定する際に支援することを意図する修正を含む、「会計方針の開示」(IAS第1号及びIFRS実務記述書第2号の修正)を公表した。本修正は、2023年1月1日以後に開始する事業年度に発効する。

国際会計基準審議会(IASB)は、作成者が財務諸表にどの会計方針を開示するかを決定する際に支援することを意図する修正を含む、「会計方針の開示」(IAS第1号及びIFRS実務記述書第2号の修正)を公表した。本修正は、2023年1月1日以後開始する事業年度に発効する。


背景

IASBのディスカッション・ペーパー「開示イニシアティブ-開示原則」(デロイト トーマツのWebサイト-※1)に対するフィードバックは、どの会計方針を開示するかを決定する際に企業を支援するためのガイダンスが必要であることを示唆した。重要性の適用がどの会計方針を開示するかの鍵であることが示された。しかし、IAS第1号「財務諸表の表示」は、重要性(materiality)を参照せず、IASBが「重要な(significant)」という用語の定義を提供することなしに、「企業は、重要な会計方針(significant accounting policies)を開示しなければならない」ことを規定している。

したがって、IASBは、企業に、重要な会計方針ではなく重要性のある会計方針を開示することを要求するために、IAS第1号の修正を開発することを決定した。本修正を支援するために、IASBは、IFRS実務記述書第2号「重要性の判断の行使」において記述されている「4 段階の重要性プロセス」の会計方針の開示に対する適用を、説明し明示するガイダンス及び設例も開発した。

 

変更点

「会計方針の開示」(IAS第1号及びIFRS実務記述書第2号の修正)は、以下のようにIAS第1号を修正する。

  • 企業は、今後、重要な会計方針(significant accounting policies)に代えて重要性のある会計方針の情報(material accounting policy information)を開示することが要求される。
  • 企業がどのように重要性のある会計方針の情報を識別することができるか説明し、会計方針の情報が重要性がある可能性が高い場合の例を提供するために数箇所の項が追加される。
  • 本修正は、関連する金額に重要性がない場合であっても、その性質のため、会計方針の情報に重要性がある場合があることを明確化する。
  • 本修正は、企業の財務諸表の利用者が財務諸表における他の重要性のある情報を理解するために必要となる場合、会計方針の情報に重要性があることを明確化する。
  • 本修正は、企業が重要性のない会計方針の情報を開示する場合、そのような情報が重要性のある会計方針の情報を覆い隠してはならないことを明確化する。

さらに、IAS第1号の修正を支援するために、IFRS実務記述書第2号が、「4段階の重要性プロセス」の会計方針の開示に対する適用を、説明し明示するガイダンス及び設例を追加することにより修正されている。

 

発効日及び経過措置
本修正は、将来に向かって適用される。IAS第1号の修正は、2023年1月1日以後開始する事業年度に発効する。早期適用は認められる。企業がIAS第1号の修正を適用する場合、IFRS実務記述書の修正を適用することも認められる。

 

反対意見
Françoise Flores理事は、最終修正の公表に反対した。Flores氏は、会計方針の情報が標準化されているまたはIFRSの要求事項を繰り返す場合であっても、基礎となる会計処理が複雑で企業の財務諸表の利用者が他の方法では重要性のある取引、他の事象または状態を理解できない場合には、会計方針の情報が重要性があると規定することは、重要性の概念を意図された範囲を超えて拡大解釈し、企業が重要性のない会計方針の情報の開示を削減することに役立つという、本修正の全般的な目的を損ねることと考えている。

 

 さらなる情報

IASBのプレスリリースの日本語訳 (ASBJのWebサイト)
》IAS Plusのプロジェクト・ページ Disclosure initiative - Accounting policies(IAS Plus-英語)
 

※1》「IFRS in Focus-IASBが開示原則に関するディスカッション・ペーパーを公表」(デロイト トーマツのWebサイト)

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