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サステナビリティ関連財務情報の開示に関する一般的な要求事項のプロトタイプ    

IAS Plus 2021.11.03

IFRS財団は、ISSBの一般的な表示基準に関するTechnical Readiness Working Group(TRWG)の提案である、一般的な要求事項のプロトタイプを公表した。

IFRS財団は、ISSBの一般的な表示基準に関するTechnical Readiness Working Group(TRWG)の提案である、一般的な要求事項のプロトタイプを公表した。
  

TRWGは、ISSBの開始を容易にするために2021年3月に創設された。これは、ISSBが検討するためのテクニカルな提案事項を提供することを目的として、投資者の情報ニーズを満たすことに焦点を当てた関連性のあるイニシアチブの作業を統合し、構築するように設計された。本日公表されたサステナビリティ関連の財務情報の開示に関する一般的な要求事項は、IAS第1号「財務諸表の表示」から着想を得て、投資者に対するサステナビリティ関連の開示に関する全般的な要求事項を示す。

 

目的及び範囲:

サステナビリティ関連の財務開示の目的案は、一般目的財務報告の主要な利用者が企業に資源を提供するかどうかを意思決定する際に有用である、報告企業が晒される重大なサステナビリティ関連のリスク及び機会に関する情報を提供することであると記述されている。基準案は、企業がIFRSサステナビリティ開示基準に従ってサステナビリティ関連の財務情報を作成し、開示する場合に適用されることとなる。
 

重要性:

企業は、報告企業に関する投資者及び他の資本の提供者にとって重要性のあるサステナビリティに関する事項についてのすべての情報を開示する。サステナビリティ関連の財務情報は、当該情報が省略、誤表示または覆い隠される場合、一般目的の財務報告書の主要な利用者がこれらの報告書に基づいて行う意思決定に、影響を与えると合理的に予想し得る場合、重要性があると記述される。

 

報告企業の境界及び接続性:

その一般目的財務報告のための報告企業の境界は、その財務諸表とサステナビリティ関連の財務開示とで同じであることが提案される。提供される開示は、サステナビリティ関連の財務開示と、一般目的財務報告におけるその他の情報との間の接続、依存関係及びトレードオフを、利用者が理解できるようにしなければならない。

 

一般的な特徴:

一般的な要求事項のプロトタイプを企業に適用することにより、ガバナンス、戦略、リスク管理及び指標と目標の4つの基礎項目に従って、企業の運営方法に不可欠な事項に焦点を当てた情報が開示される。本プロトタイプは、それぞれの基礎項目の目的及び当該目的を達成するための開示要求を設定する。

 

比較情報及び報告の頻度:

プロトタイプでは、企業は、当期に報告される指標及び主要な業績指標(KPI)を含むすべての金額について、前期に関する比較情報を表示することとなる。企業は、少なくとも 12 か月ごとに、財務諸表と同時に報告することとなる。

 

報告のチャネル:

投資者に対するサステナビリティ関連の開示は、投資者及び他の資本提供者を対象とし、財務諸表およびサステナビリティ関連の財務情報を含む、報告企業の一般目的財務報告の一部として開示されることとなる。

 

関連する財務諸表の識別:

サステナビリティ関連の財務開示は、関連する財務諸表を識別することとなる。関連する財務諸表がIFRSに準拠して作成されていない場合、サステナビリティ関連の財務開示は、財務諸表が作成されている基礎を開示する。

 

財務データ及び仮定の使用:

サステナビリティ関連の財務開示に財務データ及び仮定が組み込まれている場合、そのような財務データ及び仮定は、企業の財務諸表に組み込まれた対応する財務データ及び仮定と一貫することとなる。

 

適正な表示:

完全な一組のサステナビリティに関連する財務開示は、企業が晒されるサステナビリティ関連のリスクおよび機会を適正に表示することとなる。適正な表示は、関連性、信頼性、比較可能性及び理解可能性がある情報を企業が開示することを要求し、提供された情報が、重要なサステナビリティ関連のリスクおよび機会が企業の企業価値に及ぼす影響または潜在的な影響を利用者が理解することが可能になるために十分ではない場合は、追加の開示を含めることとなる。

 

見積りの不確実性の発生要因:

サステナビリティ関連の財務開示が直接定量化できず、見積りのみ可能である場合、合理的な見積りの使用は、サステナビリティ関連の財務開示を作成する上で不可欠な部分であり、見積りが明確かつ正確に記述され、説明される場合、情報の有用性を損なうものではない。

 

誤謬:

一般的な要求事項のプロトタイプは、過去の1つまたは複数の期間の企業のサステナビリティ関連の財務開示における省略及び誤表示として、過年度の誤謬を記述する。実務上不可能でない限り、企業は、発見された後に発行が承認される最初の一般目的財務報告においいて、重要性がある過年度の誤謬を遡及的に訂正することとなる。

 

準拠性の記述:

サステナビリティ関連の財務開示がIFRSサステナビリティ開示基準の関連するすべての要求事項に準拠している企業は、明示的かつ無限定の準拠に関する記述を含めることとなる。

一般的な要求事項のプロトタイプには、4つの付録がある。付録Aは、一般的な要求事項のプロトタイプで使用される定義された用語について説明する。付録Bは、サステナビリティ関連の財務情報および財務諸表情報を含む一般目的財務報告書を示している。付録Cは、重要性に関する適用指針を提供する。付録Dは、有用なサステナビリティ関連の財務情報の質的特性について記述する。

 

一般的な要求事項のプロトタイプは、IFRS財団のWebサイト(英語)からアクセス可能である。

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