IASB、サプライヤー・ファイナンス契約に関するIAS第7号及びIFRS第7号の修正を提案  

国際会計基準審議会（IASB）は、サプライヤー・ファイナンス契約に関する定性的及び定量的情報を提供することを企業に求めることとなる開示要求及び現行の開示要求の「指針（signpost）」を追加する、公開草案「サプライヤー・ファイナンス契約」（IAS第7号及びIFRS第7号の修正案）を公表した。コメントの提出期限は、2022年3月28日である。

背景

IFRS解釈指針委員会は、以下を質問するサプライチェーン・ファイナンス契約に関する要望書を受け取った。

• 関連する請求書がサプライチェーン・ファイナンス（またはリバース・ファクタリング）契約の一部である場合、企業はどのように受け取った財またはサービスに対する負債を表示するか。
• リバース・ファクタリング契約に関するどのような情報について、企業が財務諸表において開示することを要求されるか。
  

要望書に対応して、委員会は、2020年12月にアジェンダ決定を公表した。しかし、受け取ったフィードバック及びインプット、特に投資者及びアナリストからのものは、現行のIFRSの要求事項を適用したサプライヤー・ファイナンス契約に関する企業が提供する情報は、すべての投資者の情報ニーズを満たしていないこと示した。このフィードバックに対応して、IASBは、サプライヤー・ファイナンス契約に関する定性的及び定量的情報を提供することを企業に求めることとなる開示要求及び現行の開示要求の「指針（signpost）」を追加するように、IAS第7号「キャッシュ・フロー計算書」及びIFRS第7号「金融商品：開示」を修正することを暫定決定した。

主要な提案

公開草案ED/2021/10「サプライヤー・ファイナンス契約」（IAS第7号及びIFRS第7号の修正案）の主要な提案は、以下のとおりである。
 

• サプライヤー・ファイナンス契約を定義しない。
  その代わり、修正案は、企業が提案されている情報を提供することを要求されることとなる契約の特徴を記述し、修正案は、IASBの提案の範囲に含まれることとなるそのような契約の異なる形態の例も提供している。
  
  
• 開示目的を追加
  財務諸表の利用者が負債及びキャッシュ・フローについてサプライヤー・ファイナンス契約の影響を評価することを可能にする情報を、企業は注記に開示しなければならないこととなる。
  
  
• 以下に関する開示要求を追加することにより、IFRSの現行の要求事項を補完する。
  
  ・各サプライヤー・ファイナンス契約の契約条件
  
  ・各契約について、報告期間の期首及び期末における次の事項
  　　a) 当該契約の一部である金融負債の帳簿価額及び当該金融負債が表示されている科目
  　　b) 上記a)に基づいて開示する金融負債のうちサプライヤーがファイナンス提供者からすでに支払を受けているものの帳簿価額
  　　c) 上記a)に基づいて開示する金融負債の支払条件の範囲（例えば、請求日の30日から40日後）
  
  ・報告期間の期首及び期末における、サプライヤー・ファイナンス契約の一部を構成しない営業債務の支払条件の範囲

企業は、契約の契約条件が類似する場合にのみ、異なる契約についての当該情報を合算することが認められる。
 

• IFRS第7号における流動性リスクの開示要求及びIAS第7号における財務活動から生じた負債の変動に関する開示要求の中の例としてサプライヤー・ファイナンス契約を追加する。

発効日

IASBは公開期間後に発効日を決定する予定である。本修正は、IAS第8号に従って遡及的に適用される。早期適用は認められる。

さらなる情報
 

》IASBのプレス・リリースの日本語訳（ASBJのWebサイト）
》公開草案へのアクセス（PDF:245.11KB：結論の根拠を含む、IASBのWebサイト－英語）
》IASBの提案を説明するＩnvestor Perspective（PDF:22.84KB：IASBのWebサイト－英語）
》IFRS in Focus「IASBは、サプライヤー・ファイナンス契約に対処するためにIAS第7号およびIFRS第7号の修正を提案する」（デロイト トーマツのWebサイト）
》IAS Plusのプロジェクト・ページサプライヤー・ファイナンス契約（IAS Plus－英語版）