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買取再販事業の市場拡大における不動産事業分析

買取再販事業の市場の拡大が予測され、対象不動産の差別化が必要とされています。

近年の社会的背景から買取再販事業の市場は今後拡大すると予測されています。不動産にまつわる数多くの事業の分析のうち、今回は買取再販についてご紹介します。

中古住宅の買取再販市場は今後も拡大の見通し

不動産の買取再販とは、不動産を購入し、リフォームやリノベーションなどの手を加え、再度販売する事業です。買取再販の対象となる不動産の種類としては、戸建住宅・マンション・事務所などが挙げられます。

株式会社矢野経済研究所が2021年に実施した、中古住宅買取再販市場に関する調査では、中古戸建および中古マンションの買取再販戸数の年間合計数が2015年は24,300件であったのに対し、2021年予測は39,000件、2025年には50,000件に突入すると示されているように、住宅における買取再販の急速な市場拡大が見受けられます。

中古住宅買取再販市場規模推移と予測
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買取再販の市場拡大の背景と主な要因

買取再販の市場拡大の背景にはいくつかの要因がありますが、今回は次の2点をご紹介します。
 

【新築マンションの着工数減少と高値傾向の継続】

首都圏の新築マンションの着工戸数推移をみると、大規模タワーマンションの供給が見られた2005年~2006年をピークに、改正建築基準法の施行やリーマンショックの影響を受け、大幅に縮小しました。近年でも建設用地不足のため、鈍化傾向にあります。
用地不足に加え、世界的なスポーツの祭典の開催準備、ウクライナ情勢や新型コロナ感染拡大などに起因する建設資材の高騰に伴い、新築マンションの平方メートル当たり単価の価格上昇が続いています。中古マンションにおいても、リフォーム・リノベーション費用の増大傾向は否めませんが、新築マンションが高額で手を出しにくいことから、内装が新築のようにリノベーションされた中古マンションを検討・購入する動きが出ています。

新築マンション着工戸数推移(首都圏)
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新築マンション価格 平方メートル単価推移(首都圏)
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【脱炭素への社会的要請】

地球温暖化対策推進法に基づく政府の総合計画では、具体的なCO2削減量の数値目標が設定されており、2013年を基準に2030年度には46%の削減、2050年度にはCO2排出量実質ゼロを目標としています。目標達成には、今ある住宅をリノベーションにより長く使い続けることが効果的であると考えられています。
リノべる株式会社と金沢工業大学・佐藤孝一研究室、国士舘大学・朝吹香菜子研究室による研究では、千葉県北習志野台にて同規模の建物に建替新築をした場合と、リノベーションをした場合とで、建物1棟あたりの設計~建設段階のCO2排出量を試算したところ、リノベーションをした場合は建替新築の場合と比較して、最大76%のCO2削減効果があるという結果が得られました。

リノベーションによるCO2削減
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今後の見通し

これまでに述べた通り、近年の社会情勢などが買取再販事業の底堅い市場拡大を後押ししていますが、今後は買取再販事業者の商品である不動産流通量も増え、活発な仕入につながることが見込まれます。主な機会としては下記が考えられます。
 

【相続登記義務化に伴う不動産売却数増加見込み、仕入の増加】

2024年4月1日から、不動産の相続登記が義務化されます。これにより、不動産の相続を知った日から3年以内に相続登記が義務付けられます。また、長期間相続登記をしないままになっていた不動産についても3年間の猶予期間のうちに登記申請をすることになります。登記が促進され、所有者が不明の空き家減少に効果があると考えられますが、副次的な影響として、相続登記対象者による義務化3年以内での不動産売却活動が活発になると予測されています。
株式会社カチタスによる「第2回空き家所有者に関する全国動向調査」(2022年7月)では、空き家所有者1,000人を対象とし、相続登記義務化後どのように対処するかの質問をしたところ、「まだわからない」が38.8%、「売却をする」が25.5%、「家族で対策を考える」が14.9%の順で回答が得られており、登記期限までに売却を検討する人が一定数いる結果が得られています。
2024年4月以降、これまでに出回っていなかった不動産が流通し、買取再販事業者の仕入範囲が広がる可能性があります。
 

【2000年代前半建築タワーマンションなどの商品化】

【新築マンションの着工数減少と高値傾向の継続】の項目でも示しましたが、2000年代前半にタワーマンションなど大型分譲マンションの新築着工が多くみられました。建築されてから15年~20年を迎え、購入者の住み替えや経年による設備什器の入れ替えが考えられます。これらのリノベーション対象になる案件数が増えると予測され、取り扱いの幅が広がることが期待されます。

 

まとめ

これまで買取再販事業について見てきましたが、主に一都三県を中心に、専業事業者のほか、大手の不動産仲介会社やデベロッパー系列の参入も見られており、今後いっそうの業界認知度向上と成熟化が見込まれます。一方、買取再販事業者の立場としては、事業者数が増えていることから、取り扱い不動産の種別・対象エリア・価格帯・サービスなどの差別化が望まれます。

不動産アドバイザリーでは、不動産事業の様々な場面・市場に対応し、不動産開発・売買、設計・施工監理・建物評価・コンストラクションマネジメント、ホテルオペレーション、PPP・PFI、不動産ファイナンスなど、各分野のエキスパートによる知見を結集し、専門性が高く、多面的なアドバイザリーサービスを提供します。

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