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「アナリティクス」の活用でマネロン対策の高度化を~『経験ベース』の顧客リスク格付けの定期的な見直しに有効~
週刊金融財政事情2020.11.23掲載記事
昨年実施されたFATF相互審査の準備を通じ、国内金融機関のマネロン・テロ資金供与対策(AML/CFT)には多くの進展が見られた。取引モニタリングシステムや顧客リスク格付けモデルの導入も、多くの金融機関において進められている。しかし、これらは初期導入こそできたものの、ロジック、検知の閾値のチューニング等による高度化が必要な段階にある。そうした取り組みを合理的な根拠に基づいて実施するため、「アナリティクス」を活用することが考えられる。
散見される「経験ベース」のマネロン対策
マネロン対策では、多くの金融機関が「取引モニタリングシステム」を用いて口座等の動きを監視し、検知した異常な取引について調査を行った上で「疑わしい取引」として当局に届け出を行っている。このようなシステムでは、疑わしい取引を検知するための「シナリオ」(例えば「過去X日の間にY円以上の送金取引をZ回以上実施した口座」などの抽出ルール)や「閾値」(取引を抽出する際の金額・回数等の基準値。前述の例でのX、Y、Zの値)を設定する必要がある。
一方で、その設定方法は必ずしも精緻なものとはいえない。シナリオについては、システム導入時はシステムベンダーが提示する標準的なシナリオの中から選定することが多く、その際には、当局が示す「疑わしい取引の参考事例」をカバーしているかどうかを確認したり、金融機関が従前実施してきたモニタリングを参考にしたりして決定することが多い。閾値の設定も、当該金融機関の「経験値」に基づいて設定するか、あるいはあまり望ましい方法ではないが、金融機関が調査・届け出を実施する際の事務処理可能な件数から逆算して、過度な負担にならないよう調整するなどして決定されてきたのが実情である。
システムの導入時点では、金融機関はシナリオ・閾値の選定・設定に関する知見やデータの蓄積が十分でないため、当初はある程度割り切って決定することもやむを得ないが、導入後に定期的な見直しを行わなければ、適切とは言い難い状態のまま運用されることになる。
「顧客リスク格付け」も多くの金融機関で導入が進んでいる。リスクベースアプローチ(効率化の観点から、リスクの高低に応じた管理を実施する考え方)の観点から、すべての顧客に「高(H)」「中(M)」「低(L)」などの格付けを付与するために、地理的要素や業種・職業等の顧客属性を組み合わせてスコアで評価するスコアリングモデルが採用されることが多い。こうしたモデルの構築も、金融機関担当者の「経験と勘」によって実施されがちで、本当に顧客のリスクを適切に反映したものであるかの検証が必要である。
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