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2021年資産運用業界の見通し

成功のための改革

「2021年資産運用業界の見通し」では、200社の業界リーダーがそれぞれの新型コロナウイルス感染症からの回復について意見を述べています。ビジネス変革のカタリストとして、どのように新たな教訓が役立つでしょうか。

キーメッセージ

  1. 2020年夏に当社が独自に行なったサーベイの結果によると、ほとんどの資産運用会社が、従業員の安心感を高めるために、迅速な職場復帰計画の策定と計画のコミュニケーションにおいて改善の余地があることを示唆しています。
  2. 運用会社は人件費の管理において多方面からのアプローチを採用しており、ほとんどの対応が2020年夏までに実行されたことを、サーベイの結果は示しています。「一時帰休(furlough)」と「解雇(layoff)」の採用率が同水準である事実からは、経営陣の回復に向けた楽観的な見方と、パンデミック危機下においてあまり活用されていないアプローチを用いて人件費を管理しようとする創造的な姿勢が確認されます。
  3. 全般に、大方の運用会社において、経費削減の観点からデジタル・トランスフォーメーションに対するアプローチが変わりつつあるように思われます。また、テクノロジーを用いた支出の配分も、デジタル・インタラクションの安全性と効率性に寄与するとみられる方法で変化しています。一部の運用会社は、ベンダー・ソリューションや自前対応型のプロジェクトを活用する形で、デジタル・トランスフォーメーションの重視姿勢を後退させています。
  4.  デジタル・トランスフォーメーションは、多くの運用会社のブランドの一部を構成するようになる可能性があります。好むと好まざると、投資家は顧客対応の洗練度と手際よさの観点から運用会社を選ぶようになるかもしれません。
  5.  市場のボラティリティや私生活の困難を乗り切る上で蓄積した経験、そして顧客・従業員に対するコミットメントを背景に、資産運用業界は2021年末において、より頑強でデジタル機能の優れた姿に変貌を遂げる可能性が高いでしょう。

 

成功のための変革

2020年はCOVID-19の感染拡大が世界的なテーマとなりましたが、2021年は資産運用会社がパンデミック危機からどのように回復し、成功を実現させるのかが注目される見通しです。資産運用業界の中でも各社の影響は区々でしたが、業界全体としてのダメージは他の一部のセクターほど深刻ではありませんでした。収益が概ね横ばいにとどまる一方で、人材、業務体制、テクノロジー環境には影響が及んでいます。

世の中が大混乱をきたす前段階において、資産運用業界には、過去最長の上昇相場と利益率の低下(上位数社を除く)という2つの重要な潮流が存在していました(注1)。2~3月の市場の調整によって上昇相場が終了すると同時に、感染急増に伴う外出禁止令の発令によって業務体制は混乱に陥りました。市場の調整局面は短期間で終了したものの、現在でも多くの企業では復興作業が続いています。

注1:Yun Li, “This is now the best bull market ever,” CNBC, November 14, 2019.

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