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価値創造プロセスの体系的・統合的な実装

サステナブルROE逆ツリーで企業価値創造を捉える

金融機関の価値創造ストーリーを描き、非財務分野も含めた統合的な価値創造プロセスの構築をめざし、新たな指標としてサステナブルROE逆ツリーを提案します。

財務の観点から企業の事業規模や収益性を評価する指標は様々あるが、企業の価値は財務指標で表されるものだけではない。企業の価値を示すものとして、近年は知的財産や人的資本など形のない資源にも光があてられるようになってきている。人材やノウハウなどの金融機関の経営資源の多くは、現在の会計上では金銭価値に換算されないが、将来の収益の源泉となるものである。特に金融機関は形のない金融商品や保険商品を取り扱い、その商品やサービス提供を支える資源もまた無形のものが多い。

しかし、現在の財務諸表はそれらの価値を適切に表現できていないという指摘がある。財務諸表では表現できていない無形な企業の競争源泉が重要である場合、現在用いられているROEが企業価値を正しく表せていない可能性がある。そうである場合、無形な企業の競争源泉も勘案した、また、企業の価値創造プロセスと関連付けられた企業価値の指標として、ROEを再定義することは有意義であると考えられる。

本稿は、企業価値を示すものとして会計上認識される無形資産よりも幅広に無形の資産を捉え、財務指標に限らず非財務指標にまで拡大し、企業が将来産み出すと期待される価値を総合的に示そうとするものである。加えて、明確な価値創造のストーリーを組み立て、企業自身が価値創造プロセスを体系的・統合的に経営に根付かせ、かつ、さまざまなステークホルダーの理解を促す表現方法を模索する。本稿における考察は銀行・保険会社を例にして行っているが、他の業種にも参考になるものと考える。
 

図:価値創造プロセス

 

(出所)国際統合報告<IR>フレームワーク、価値協創のための統合的開示・対話ガイダンス2.0(価値協創ガイダンス2.0)を基にトーマツ作成

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