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保険会社のICTシステムの現代化と保険監督
オペレーショナル・レジリエンスの視点も重要に
情報通信技術(ICT)の進化やイノベーションの進展により、社会経済を取り巻く競争環境は構造的に変化しており、金融機関は大きなパラダイム・シフトに直面しています。金融機関、特に伝統的な金融機関が、こうしたパラダイム・シフトに自らを適応させ、そのビジネスを持続可能なものとしていくためには、ICTシステムの現代化(modernisation)は不可欠であると考えられます。本稿では、オペレーショナル・レジリエンスの向上やグローバル化、保険監督といった視点も交え、保険会社のICTシステムの現代化に向けた考え方を整理しています。
情報通信技術(ICT)やイノベーションの進展により、これまで金融機関が担ってきた金融サービスが分化され(アンバンドリング)、非金融サービスと組み合わせたサービスが提供される(リバンドリング)など、金融が新しい技術と融合することで、金融サービスは大きく進化してきています。また、「非金融」セクターからの金融への進出も増加しています。さらに、デジタル・トランスフォーメーション(DX)は、金融機関が直面しているこうしたパラダイム・シフトを加速させています。DXでは、ICTはあらゆる経済活動の根本となるコスト構造を変えており、したがって、伝統的なプレイヤーは、新たなコスト構造に適した形へと自らを変えていくことが求められ、それができなければ市場からの退出を余儀なくされると考えられています。
ICTシステムの現代化に際し、レガシー・システムの存在がその大きな障壁となり得ると考えられています。しかしながら、レガシー化したICTシステムそれ自体だけでなく、その背景にある組織や風土、経営者のリーダーシップ、ビジョン、戦略などにも目を向けることが重要です。例えば、ICTシステムを刷新することで得られたであろう収益の機会や顧客ニーズを正しく認識すること、また、経営陣の理解と強いコミットメントは、ICTシステムの現代化に向けた大きなドライバーとなり得ます。さらに、ICTシステムの現代化を、ビジョンや中長期のビジネス戦略との関係で整理することも不可欠です。加えて、オペレーショナル・レジリエンスの観点からは、アウトソーシングやグローバル化がICTシステムの現代化に新たな課題を提供することを念頭に置く必要があります。
こうしたことから、保険会社は、以下のような視点にも留意しつつ、ICTシステムの現代化に向けた取組みを進めることが重要であると考えられます。
- ICTシステム戦略は、保険会社のビジョン、経営戦略、中長期経営計画と整合的であるか。
- オペレーショナル・レジリエンスの向上という観点からICTシステムおよびそれに起因するリスク(アウトソーシングにかかるリスクを含む。)をとらえているか。
- ICTシステムにかかるガバナンスをグローバル・ガバナンスの枠組みで整理しているか。