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ASBJが改正企業会計基準第24号「会計方針の開示、会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」を公表

月刊誌『会計情報』2020年5月号

『会計情報』編集部

企業会計基準委員会(ASBJ)は、2020年3月31日に、改正企業会計基準第24号「会計方針の開示、会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」を公表した。

2018年11月に開催された第397回企業会計基準委員会において、公益財団法人財務会計基準機構内に設けられている基準諮問会議より、「関連する会計基準等の定めが明らかでない場合に採用した会計処理の原則及び手続」に係る注記情報の充実について検討することが提言された。

この提言を受けて、ASBJにおいて、2018年12月より、「関連する会計基準等の定めが明らかでない場合に採用した会計処理の原則及び手続」に係る注記情報の充実について審議が行われ、今般、2020年3月27日開催の第428回企業会計基準委員会において、表記の「会計方針の開示、会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」(以下「本会計基準」という。)の公表が承認されたことを受け、公表することとしたものとされている。

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<本会計基準の概要>

■本会計基準の公表の経緯(本会計基準第28-2項)

2018年11月に開催された第397回企業会計基準委員会において、公益財団法人財務会計基準機構内に設けられている基準諮問会議より、関連する会計基準等の定めが明らかでない場合に採用した会計処理の原則及び手続に係る注記情報の充実について検討することが提言された。この提言を受けて、ASBJでは、2018年12月より審議を開始し、その結果を会計基準として公表することとしたとされている。

 

■開示目的(本会計基準第4-2項、第44-2項及び第44-3項)

本会計基準では、重要な会計方針に関する注記の開示目的は、財務諸表を作成するための基礎となる事項を財務諸表利用者が理解するために、採用した会計処理の原則及び手続の概要を示すことにあり、これは、関連する会計基準等の定めが明らかでない場合も同じであるとされている。

 

■関連する会計基準等の定めが明らかでない場合(本会計基準第44-4項及び第44-5項)

「関連する会計基準等の定めが明らかでない場合」とは、特定の会計事象等に対して適用し得る具体的な会計基準等の定めが存在しない場合をいう(本会計基準第4-3項)。そのため、関連する会計基準等の定めが明らかでない場合に採用した会計処理の原則及び手続には、例えば、関連する会計基準等が存在しない新たな取引や経済事象が出現した場合に適用する会計処理の原則及び手続で重要性があるものが該当すると考えられる。なお、対象とする会計事象等自体に関して適用される会計基準等については明らかではないものの、参考となる既存の会計基準等がある場合に当該既存の会計基準等が定める会計処理の原則及び手続を採用したときも、関連する会計基準等の定めが明らかでない場合に採用した会計処理の原則及び手続に含まれるとされている。

また、会計基準等には、一般に公正妥当と認められる会計処理の原則及び手続を明文化して定めたもの(法令等)も含まれる。そのため、関連する会計基準等の定めが明らかでない場合に採用した会計処理の原則及び手続には、業界の実務慣行とされている会計処理の原則及び手続のみが存在する場合で当該会計処理の原則及び手続に重要性があるときも該当すると考えられ、これには企業が所属する業界団体が当該団体に所属する各企業に対して通知する会計処理の原則及び手続が含まれるとされている。

 

■重要な会計方針に関する注記(本会計基準第4-4項から第4-6項)

本会計基準では、重要な会計方針に関する注記について、企業会計原則注解(注1-2)の定めを引き継ぎ、次のように取り扱うとされている。

(1)財務諸表には、重要な会計方針について、採用した会計処理の原則及び手続の概要を注記する。

(2)会計方針の例としては、次のようなものがある。ただし、重要性の乏しいものについては、注記を省略することができる。

①有価証券の評価基準及び評価方法

②棚卸資産の評価基準及び評価方法

③固定資産の減価償却の方法

④繰延資産の処理方法

⑤外貨建資産及び負債の本邦通貨への換算基準

⑥引当金の計上基準

⑦収益及び費用の計上基準

(3)会計基準等の定めが明らかであり、当該会計基準等において代替的な会計処理の原則及び手続が認められていない場合には、当該会計方針の注記を省略することができる。

 

■未適用の会計基準等に関する注記(本会計基準第22-2項及び第28-3項)

本会計基準では、未適用の会計基準等に関する注記に関する定めの記載箇所を変更した。未適用の会計基準等に関する注記に関する定めは、これまで会計方針の変更の取扱いの一部として定められていたため、専ら表示及び注記事項を定めた会計基準等に対しては適用されないと解されていた。しかし、この定めを独立した項目に移動することで、未適用の会計基準等に関する注記に関する定めは、既に公表されているものの、未だ適用されていない新しい会計基準等全般に適用されることを明確化することを意図しているとされている。

なお、この移動に伴い、専ら表示及び注記事項を定めた会計基準等に関して未適用の会計基準等に関する注記を行う場合の取扱いを明確化した。

■適用時期及び経過措置(本会計基準第25-2項及び第25-3項)

本公開草案では、適用時期等について、次のように取り扱うこととされている。

(1)本会計基準は、2021年3月31日以後終了する事業年度の年度末に係る財務諸表から適用する。ただし、公表日以後終了する事業年度の年度末に係る財務諸表から適用することができる。

(2)本会計基準では、本会計基準を適用したことにより新たに注記する会計方針は、表示方法の変更には該当しないものの、本会計基準を新たに適用したことにより、関連する会計基準等の定めが明らかでない場合に採用した会計処理の原則及び手続を新たに開示するときには、追加情報としてその旨を注記する。

 

■その他

詳細については、ASBJのウェブページ(https://www.asb.or.jp/jp/accounting_standards/accounting_standards/y2020/2020-0331-03.html)を参照いただきたい。

以 上

本記事に関する留意事項

本記事は皆様への情報提供として一般的な情報を掲載するのみであり、その性質上、特定の個人や事業体に具体的に適用される個別の事情に対応するものではありません。また、本記事の作成または発行後に、関連する制度その他の適用の前提となる状況について、変動を生じる可能性もあります。個別の事案に適用するためには、当該時点で有効とされる内容により結論等を異にする可能性があることをご留意いただき、本記事の記載のみに依拠して意思決定・行動をされることなく、適用に関する具体的事案をもとに適切な専門家にご相談ください。

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