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IASBが、ディスカッション・ペーパー「企業結合−開示、のれん及び減損」を公表

IFRS in Focus|月刊誌『会計情報』2020年6月号

注:本資料はDeloitteの IFRS Global Officeが作成し、有限責任監査法人トーマツが翻訳したものです。この日本語版は、読者のご理解の参考までに作成したものであり、原文については英語版ニュースレターをご参照下さい。

トーマツIFRSセンター・オブ・エクセレンス

国際会計基準審議会(IASB)は、ディスカッション・ペーパーDP/2020/1「企業結合ー開示、のれん及び減損」(DP)を公表した。このIFRS in Focusは、DPの主要な概念を概説している。

  • IASBは、企業が購入する事業について、投資家に提供する情報を改善するために、強化された開示の要求事項を開発することを提案している。これには、取得年度における経営者の企業結合の目的と、取得後の期間にわたって、取得年度の目的に対して企業結合が挙げている成果を開示することを企業に要求する提案が含まれている。
  • IASBはまた、のれんの償却を再導入すべきではないと提案している。
  • 減損テストを簡素化するためのIASBの見解は、年次の減損テストからの救済を提供し、使用価値の見積方法を簡素化するための修正を提案すべきであるというのものである。
  • DPのコメント期間は2020年9月15日に終了する。
567KB, PDF ※PDFダウンロード時には「本記事に関する留意事項」をご確認ください。

背景

2013年と2014年に、IASBは、IFRS第3号「企業結合」が意図したとおりに機能しているかどうかを評価するために、適用後レビュー(PIR)を実施した。PIRの結果、IASBは2つのプロジェクトを開始した。1つは、事業の定義を明確化し、狭くするものであり、すでに最終化された。もう1つは、DPが現在公表されているのれんと減損プロジェクトである。

このプロジェクトでは、IASBは、企業が購入する事業について、合理的なコストで投資家に提供する情報を改善したいと考えている。IASBは主に、新たな開示のアイデアの有用性と実行可能性、及びのれんの会計処理方法に関する新たな証拠又は論拠に関するコメントを求めている。

 

企業結合に関する開示の改善

企業結合のその後の成果

PIRの間、IASBは、企業が財務諸表の利用者が企業結合とその後の成果を理解するのに十分な情報(すなわち経営者の企業結合の目的が満たされたのかどうか)を提供していないというコメントを受取った。

IFRS第3号では、企業が企業結合の主な理由を開示することを要求している。より有用で企業ごとに固有の情報を提供するために、IASBの予備的見解は、次のことを開示する要求事項に置き換えることを提案すべきであるとしている。

  • 企業結合の戦略的根拠
  • 取得日における経営者の企業結合の目的

企業の経営者は、企業結合の際に多くの目的を追求し、それらの目的に向けた進捗状況を測定するためにいくつかの指標を使用する可能性がある。これらの指標は、財務指標(例えば、シナジーの金額、利益の測定値、資本利益率)、又は非財務指標(例えば、市場シェア、スタッフの確保、製品の発売)、あるいはその両方かもしれない。

IASBの予備的見解では、企業は次の情報を開示しなければならない。

  • 企業結合が行われる年に、経営者(IFRS第8号「事業セグメント」に規定されている、最高意思決定者(CODM))が、企業結合の目的を達成できたかどうかをモニタリングするために使用する指標
  • 経営者が企業結合の目的に対してモニタリングしている間、それらの指標を使用して、当該目的が達成された範囲
  • 経営者が企業結合の目的が達成されているかどうかをモニタリングしない場合、その事実と理由
  • 取得年度の2年目の終わりまでに、経営者が企業結合の目的が達成されているかどうかのモニタリングを中止した場合、その事実と理由。
  • 経営者が企業結合の目的が達成されているかどうかをモニタリングするために使用する指標を変更する場合、新しい指標と変更の理由。

見解

この予備的見解に達する際に、IASBは、企業結合に関する企業の内部情報を開示することは、情報が外部報告用にのみ作成されたものよりも堅牢である可能性が高いという利点を有することに注目した。さらに、このアプローチは、この情報を提供する企業へのコストを最小限に抑える。

 

その他の的を絞った改善

IFRS第3号のPIRの期間に、投資家は、企業結合におけるシナジーと確定給付年金負債に関するより多くの情報を望んでいると示していた。さらに、いわゆるプロフォーマ情報に関するガイダンスを改善すべきであると述べた。現行のIFRS第3号で要求しているプロフォーマ情報は、企業結合が年次報告期間の期首に行われたとしても、当期における結合された企業の収益と損益となっている。

これらの問題やその他の詳細な論点に対処するために、IASBの予備的見解は、次の提案を開発するべきであるというものである。

  • 投資家が次のことを理解するのに役立つ情報を提供することを企業に要求するために、IFRS第3号に開示目的を追加する。

−事業の買収価格に合意する際に、企業の経営者が企業結合から期待する便益

−経営者の企業結合の目的が達成された範囲

  • IFRS第3号の開示要求に対して、的を絞った改善をするため、次のことを行う。

−取得した事業と企業の事業を組み合わせることにより期待されるシナジーの説明を開示することを要求し、シナジーが実現すると予想される場合、シナジーの見積金額又は範囲及びこれらのシナジーを達成するための見積コスト又はその範囲

−財務活動に起因する負債及び確定給付年金負債は、主要な負債クラスであることを示す(これらの負債は別個に開示する必要がある)

−プロフォーマ情報を提供すために要求されている「純損益」という用語を、「取得関連の取引及び統合コスト控除前営業利益」(operating profit before deducting acquisition-related transaction and integration costs)という用語に置き換える。公開草案「全般的な表示及び開示」において、営業損益は定義されている

−取得日後からの取得した事業の営業活動及び、当期におけるプロフォーマ・ベースでの、結合企業の営業活動からのキャッシュ・フローを開示する要求事項を追加する

 

のれんの減損と償却

減損テストをより効果的に実施できるか?

IFRS第3号の適用後レビューの際、利害関係者は、企業は一般的に、のれんの減損損失の認識のタイミングが遅すぎることが多く、損失が発生した事象のタイミングからかなり後となっていると述べていた。彼らは、IASBに企業結合の成果が期待に合致しているか否か適時にシグナルを提供できるように、減損テストがのれんの減損損失をより効果的に認識されることを要請した。

のれんは、それが割当てられた資金生成単位又は資金生成単位グループの一部として減損テストされる。したがって、資金生成単位のヘッドルームは、減損からのれんをシールドすることができる。資金生成単位のヘッドルームは、回収可能価額と、のれんを含む認識された資産と負債の帳簿価額のとの差額である。

IASBは、このヘッドルームに基づく減損テストを設計することを検討した(ヘッドルーム・アプローチ)。このテストでは、のれんを含む資金生成単位の価値の減少を、IAS第36号「資産の減損」における減損テストで認識されていないヘッドルームに最初にすべて割当てるのではなく、取得したのれんに少なくとも一部を割当てようとした。

しかし、利害関係者は、このアプローチは減損テストを実行するのに多大なコストを追加するだろうと述べていた。さらに、IASBは「ヘッドルーム・アプローチ」はシールディングを減少はするが、除去するものではないと結論づけた。したがって、IASBの予備的な見解は、合理的なコストで適時にのれんの減損損失を認識するのに、IAS第36号の減損テストよりも大幅に効果的な別の減損テストを設計することは可能ではないというものである。それにもかかわらず、IASBは、減損損失を適時にかつ費用対効果の高い方法でのれんの損失を認識する、より効果的に減損テストをする手法を利害関係者が提案することを歓迎している。

 

のれんの償却を再導入すべきか?

減損テストを合理的なコストで大幅に改善することはできないと結論付けたため、IASBは(減損テストに加えて)のれんの償却を再導入するかどうかを検討した。

償却は、減損テストからの圧力をいくらか取り除くことができる。つまり減損テストを容易かつ低コストにし、取得したのれんに直接的に焦点をあてた簡素なメカニズムを提供することになる。取得したのれんの帳簿価額を減額することにより、償却は、経営者の過度の楽観主義のために、又はのれんが直接的に減損テストされていないために、のれんの帳簿価額が過大計上であると考えている利害関係者の懸念を解決するのに役立つかもしれない。

のれん償却の支持者は、取得したのれんは有限の耐用年数を持つ減耗資産であると主張している。さらに、企業のレピュテーションと競争力を維持する将来のコストは、取得したのれんを維持するのではなく、内部で新しいのれんを創出する。取得したのれんは継続的に消費され、内部で創出されたのれんに置き換える。

減損のみのモデルを維持することの支持者は、のれんの耐用年数を決定することは恣意的であることから、のれんの償却費用は投資家に何ら有用な情報を提供していないことを確認し続けている証拠があると考えている。加えて、キャッシュ・フローの見積りは常に経営者の判断によることになるという一方で、仮にうまく適用されれば、減損テストは、のれんを含む複合した資産が結合した回収可能価額を超えた帳簿価額ではないということを確認する目的を達成することが期待される。

IASBの予備的見解は、のれんの償却は投資家に提供する情報を大幅に改善するか、減損を実施するコストを大幅に削減するという説得力のある証拠がないので、減損のみのアプローチを維持することである。

見解

IASBがこの予備的見解を採決したとき、IASBが減損のみのモデルを維持することに同意したのは、僅差の過半数(IASBメンバー14人中8人)であった。IASBは、この見解に同意するのか、それとものれんの減損損失が適時に認識されないという主要な理由に対処するために償却を再導入すべきかを、関係者に質問している。IASBはまた、償却の支持者がのれんの耐用年数とその償却パターンをどのように決定するかを質問している。

 

のれんを除く資本合計の表示

IASBはすでに公開草案「全般的な表示及び開示」の中で、のれんを貸借対照表で別個の項目として表示することを要求している*1。IASBの予備的見解は、のれんを除く資本合計額の貸借対照表における表示を要求することによって、投資家が会社の財務状況をよりよく理解するのに役立つための提案を開発すべきであるということである。

のれんを除く資本合計の金額を表示することは、

  • のれんの効果に関してさらに透明性を提供し、企業の財務状況に対する投資家の理解に一層貢献する。
  • のれんが、資本合計のかなりの部分を占めている企業を強調するのに役立つ可能性がある。

投資家がこの金額を計算するのは簡単であるが、IASBは、この金額を別個に表示すると、より目立つと考えている。

 

減損テストの簡素化

年次の減損テストからの救済

利害関係者は、減損テストがコストがかかり、複雑である理由の1つは、減損の兆候がない場合でも、毎年テストを実施する必要があることだと述べている。

年次の減損テストからの救済を提供することの主な懸念は、減損テストの堅牢性を低下させるかどうかである。これは、一部の利害関係者が既に遅すぎると考えているのれんの減損損失の認識を遅らせ、これらの減損損失の情報価値を下げるかもしれない。

作成者を含む一部の利害関係者は、毎年減損テストを実施することが良いガバナンス・メカニズムであると考えている。テストを実施すると、経営陣は、ビジネス内の資金生成プロセスを評価することになり、良好なスチュワードシップを発揮することになる。一部の投資家は、減損テストに関する開示、特にテストにおける仮定と感応度に関する情報が役立つとコメントしている。

IASBの予備的見解は、資金生成単位に減損の兆候がない場合、企業がのれんを含む資金生成単位の年次の減損テストを実施する要求事項を廃止する提案を開発すべきであるとしている。IASBのメンバーは、このような変更によってどの程度コストが節約されるのか、また減損テストの堅牢性を低下させるかについて、異なる見解を持っている。兆候ベースのアプローチに移行すると、減損の兆候の識別に依存することが増えるため、IASBはIAS第36号の兆候の一覧を更新する必要があるかを評価する予定である。

IASBの予備的見解は、年間減損テストを実施する要求事項の廃止は、耐用年数を確定できない及び未だ使用可能ではない無形資産にまで拡大すべきであるとしている。

見解

IASBの予備的な見解は償却を再導入すべきではないという見解にもかかわらず、僅差の過半数(14人のIASBメンバーのうち8人)だけが年次の減損テストの要求事項を廃止することを支持した。彼らは、当該要求事項を廃止することで、テストの堅牢性がわずかに低下することには同意している。しかし、彼らはまた、会社に減損の指標がない場合、減損テストの利点は最小限なものとなり、そのような場合のコストを正当化しないと考えている。

 

使用価値の見積りの簡素化

確約されていないリストラクチャリング及び資産効率の向上から生じるキャッシュ・フローの制限を削除する

使用価値を算定する際には、企業は将来のリストラクチャリング又は資産効率の向上から生じると予想されるキャッシュ・フローを除外することが要求される。一部の利害関係者は、このようなキャッシュ・フローを除外するためには経営陣が財務予算又は予測を調整することが要求されるため、この要求事項は実施コストと複雑さを引き起こす可能性があると説明している。

IASBは、これらのキャッシュ・フローの制限を削除することは、実際に実施コストと複雑さを軽減すると予想している。さらに、使用価値の見積りは、年に1、2回の外部財務報告のためだけに作成する予測ではなく、定期的に意思決定のために内部的に作成し、モニタリングし、使用するキャッシュ・フロー予測に基づいているため、減損テストは誤りを起こしにくくなる。

IASBの予備的な見解は、企業が確約していない将来のリストラクチャリングから生じるキャッシュ・フローを含めること、又は資産の効率を改善又は向上することから生じるキャッシュ・フローを含めることに関する制限を、IAS第36号から削除する提案を開発すべきであるというものである。

本提案は、のれんを含む資金生成単位だけでなく、IAS第36号の範囲に含まれるすべての資産と資金生成単位に適用されることとなる。

IASBの予備的な見解は、これらのキャッシュ・フローをいつ含めるか、又は追加の定性的な開示を必要とするかを決定するための確率の閾値を設定することは、これらのキャッシュ・フローには不要であるというものである。これらのキャッシュ・フローは、使用価値の見積りに含まれるすべてのキャッシュ・フローに適用されるものと同じ要求事項の対象となる。企業は、経営者が承認した直近の財務予算又は予測に基づく、合理的で裏付け可能な仮定を使用することが要求される。

 

税引後割引率と税引後キャッシュ・フローを認める

利害関係者は、税引前割引率を算定することは高コストで複雑であると述べている。彼らは、税引前割引率は、一般的に評価目的では使用されていないため、理解するのが難しく、観察可能ではなく、有用な情報を提供しないと説明した。実務上、資産の評価は通常、税引後ベースで行われる。

IASBは、税引前キャッシュ・フロー及び税引前割引率を使用する要求事項を削除することに同意し、以下をもたらすことを見込んでいる。

  • テストを一般的な評価方法と合わせることで、テストを容易に理解できるようにする。
  • IAS第36号の開示の要求事項を満たすためだけに、税引前割引率を計算することを企業に要求しない。
  • 企業は通常、使用価値を見積る際のインプットとして税引後割引率を使用するため、投資家により有用な情報を提供する。
  • IAS第36号における使用価値とIFRS第13号「公正価値測定」における公正価値をより合わせる。

IASBの予備的な見解は、以下の提案を開発すべきであるということである。

  • 使用価値を見積る際に税引前キャッシュ・フローと税引前割引率を使用する、明示的な要求事項を削除する。
  • 使用価値を税引前又は税引後ベースのどちらで見積るかにかかわらず、企業が、内的に整合したキャッシュ・フローの仮定と割引率を使用することを要求する。
  • 企業が使用した割引率を開示する要求事項を維持するが、開示する割引率が税引前のレートでなければならないという要求事項を削除する。

本提案は、のれんを含む資金生成単位だけでなく、IAS第36号の範囲に含まれるすべての資産及び資金生成単位に適用される。

見解

IASBは、減損テストに関する以下の簡素化及びガイダンスを検討したが、提供しないことを決定した。

  • 使用価値に使用される企業固有のインプットと、処分コスト控除後の公正価値で使用される市場参加者のインプットとの差異に関するさらなるガイダンスを追加する。
  • 資産の回収可能価額(使用価値又は処分コスト控除後の公正価値)を見積る唯一の方法を強制する、又は企業が資産を回収する方法を反映する方法を選択することを要求する。
  • 企業がのれんを内部管理目的で監視している最小のレベルを表す資金生成単位のグループにのれんを配分することを要求するのではなく、企業レベル又は報告セグメントのレベルでのれんをテストすることを可能にする。
  • 資金生成単位の識別及び資金生成位へののれんの配分に関するガイダンスを追加する。

 

 

無形資産

IFRS第3号のPIRに対する多くの回答者は、企業結合で取得したすべての識別可能な無形資産をのれんとは別に認識する要求事項に課題を認識した。課題は、コストと便益の両方に関連する。一部の投資家は、提供された情報の有用性について懸念を表明した。他の利害関係者は、これらの識別可能な無形資産の一部を特定して測定することは、複雑であり主観的でコストがかかる可能性があると述べた。

IASBは、のれんに一部の無形資産を含めることがこれらの懸念を解決できるかを検討した。さらに、IASBは要求事項を変更する場合に以下の欠点を識別した。

  • のれんが異なる特性を持つ識別可能な無形資産と混在することで、それらの資産に関する情報のロスに繋がる。
  • 別個に認識される無形資産の割合を減らすことは、現代経済でますます重要になっている無形資産に関するより多くの情報を提供することによって財務報告を改善するという度重なる要求に応えていない。
  • IASBがのれんの償却を再導入しない場合、のれんに含まれる有限の耐用年数を有する無形資産を含めることは、無形資産の消費に関する情報が失われる可能性がある。IASBがのれんの償却を再導入した場合、これらの無形資産とのれんを混在させると、のれんに対する適切な耐用年数を決定することがさらに困難になる可能性がある。
  • いくつかの追加の複雑性が生じる可能性がある。例えば、識別可能な無形資産がのれんの中に含まれ、その後売却された場合、企業は販売時にどのような利益を認識すべきか?

したがって、IASBの予備的な見解は、企業結合で取得した識別可能な無形資産の認識要件を変更する提案を開発すべきではないというものである。

 

他の基準設定主体

DPは、2019年7月に米国財務会計基準審議会(FASB)から公表されたコメント募集、及び2019年3月に豪州会計基準審議会(AASB)が公表したIAS第36号に関するリサーチ・レポートの内容を要約したセクションを含んでいる。

IFRS第3号は、米国会計基準(US GAAP)と多くの側面でコンバージェンスされている。例えば、IFRS第3号及び上場企業に対するUS GAAPに従えば、共に企業はのれんを償却しない。IASBは、DPの質問のいずれかが、結果が現在存在するUS GAAPと整合するか、又はFASBの現在の作業後のUS GAAPに整合するかどうかに左右されるかどうかを、DPの回答者に質問している。その場合、回答者は、回答のいずれが変更となるか及びその理由を示さなければならない。

IASBは、AASBのレポートが提案しているように、IASBがIAS第36号を全面的に見直し、その代わりに新しい基準を公表すべきかどうかについての、利害関係者からのフィードバックにも関心を有している。このような見直しは、本プロジェクトの範囲を超えている。したがって、IASBは、IAS第36号を見直すより広範なプロジェクトを作業計画に追加すべきかどうかを決定するために、利害関係者にIASBの2020アジェンダ協議に回答することを奨励している。

 

次のステップ

IASBは、DPのすべての事項、特に各セクションの最後の「コメント提出者への質問」に示された質問ついてコメントを募集している。さらに、コメント提出者は、DPで提示されたIASBの予備的見解に関する他のコメント、及びIASBがIFRS第3号のPIRに対応して他のトピックを検討すべきかどうかについての他のコメントを提起することが奨励されている。

コメントの期限は2020年9月15日である*2

DPで表明された見解は予備的なものであり、変更される可能性がある。IFRS第3号及びIAS第36号の一部を修正又は置き換える提案とともに公開草案を開発するかどうかを決定する前に、IASBはDPについて受領したコメントを検討する。

以上

 

*1 公開草案「全般的な表示及び開示」の詳細については、本誌2020年4月号、5月号、6月号の「よくわかるIASB「全般的な表示及び開示」公開草案シリーズ」を参照いただきたい。

*2 2020年4月17日のIASB会議での審議の結果、コメント期限は2020年12月31日に延長された。

本記事に関する留意事項

本記事は皆様への情報提供として一般的な情報を掲載するのみであり、その性質上、特定の個人や事業体に具体的に適用される個別の事情に対応するものではありません。また、本記事の作成または発行後に、関連する制度その他の適用の前提となる状況について、変動を生じる可能性もあります。個別の事案に適用するためには、当該時点で有効とされる内容により結論等を異にする可能性があることをご留意いただき、本記事の記載のみに依拠して意思決定・行動をされることなく、適用に関する具体的事案をもとに適切な専門家にご相談ください。

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