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IASBは、「負債の流動又は非流動への分類」の発効日を延期する

IFRS in Focus|月刊誌『会計情報』2020年9月号

注:本資料はDeloitteのIFRS Global Officeが作成し、有限責任監査法人トーマツが翻訳したものです。この日本語版は、読者のご理解の参考までに作成したものであり、原文については英語版ニュースレターをご参照下さい。

トーマツIFRSセンター・オブ・エクセレンス

本IFRS in Focusは、2020年7月に国際会計基準審議会(IASB)より公表された「負債の流動又は非流動への分類-発効日の延期」に示されたIAS第1号「財務諸表の表示」に対する修正について解説するものである。

  • 2020年1月、IASBは「負債の流動又は非流動への分類」というタイトルのIAS第1号の修正を公表した。発効日は2022年1月1日以後開始する事業年度である。
  • 本修正の適用から生じる分類の変更の実施を遅延させる可能性のあるCOVID-19のプレッシャーにより、IASBは、2023年1月1日以後開始する事業年度に、本修正の発効日を1年延期する。
487KB, PDF ※PDFダウンロード時には「本記事に関する留意事項」をご確認ください。

背景

IASBは、2020年1月に「負債の流動又は非流動への分類」というタイトルのIAS第1号の修正を公表した。
本修正は、

  • 負債の流動又は非流動への分類は、報告期間の末日現在において存在する権利に基づくことを明確にしている。
  • 分類は、企業が負債の決済を延期する権利を行使するかに関する見込みの影響を受けないことを具体的に規定している。負債が非流動の分類の要件を満たしている場合、経営者が12か月以内に負債を決済する意図がある又は見込みがある、又は報告期間の末日と財務諸表の発行が承認される日の間に負債を決済するかどうかに関わらず、非流動に分類される。
  • 報告期間の末日現在において財務制限条項が遵守されている場合、権利が存在することを説明する。
  • 決済が、現金、資本性金融商品、その他の資産又はサービスの相手方への移転を指すことを明確化するために、「決済」の定義を導入する。
  • 本修正のより詳細な内容は、本誌2020年4月号IFRS in Focus「IASBが、負債の流動又は非流動への分類を明確化するためにIAS第1号を修正」を参照いただきたい。

本修正は、IAS第8号「会計方針、会計上の見積りの変更及び誤謬」に従って、2022年1月1日以後に始まる事業年度に遡及的に適用される予定であった。

本修正の公表後IASBは、COVID-19が、本修正の適用により生じる分類の変更の実施を遅延させる可能性があるプレッシャーを生じさせることに留意した。また、ローン・コベナンツの再交渉の開始を延期及び期間を延長させる可能性もある。

したがって、IASBは、企業に運用上の救済を提供する。

 

修正点

IASBは、本修正の発効日を2023年1月1日以後に開始する事業年度に1年延期する。IASBは、本修正に対して他には変更をしない。

本修正の早期適用は、引き続き認められる。

見解

IASBは、修正案の一部として開示の要求事項を導入するかどうかを検討したが、企業はIAS第8号に従うことが要求されるため、不要であると結論付けた。IAS第8号は、2020年1月に公表された本修正の適用が企業の財務諸表に及ぼす、起こり得る影響の評価に関連性のある、既知の又は合理的に見積り可能な情報の開示を要求している。



以 上

本記事に関する留意事項

本記事は皆様への情報提供として一般的な情報を掲載するのみであり、その性質上、特定の個人や事業体に具体的に適用される個別の事情に対応するものではありません。また、本記事の作成または発行後に、関連する制度その他の適用の前提となる状況について、変動を生じる可能性もあります。個別の事案に適用するためには、当該時点で有効とされる内容により結論等を異にする可能性があることをご留意いただき、本記事の記載のみに依拠して意思決定・行動をされることなく、適用に関する具体的事案をもとに適切な専門家にご相談ください。

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