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令和4年度税制改正大綱の概要
月刊誌『会計情報』2022年2月号
デロイト トーマツ税理士法人 公認会計士・税理士 大野 久子
令和3年12月10日、与党より令和4年度税制改正大綱(以下「大綱」)が公表され12月24日に閣議決定された。本稿では、大綱の項目のうち、法人に関する分野(法人課税一般、グループ通算制度や国際課税など)を中心に解説する。
なお、以下の内容は大綱に基づくものであり、実際の適用に当たっては、令和4年3月までに成立が見込まれる関連法令等を確認する必要がある点に、留意されたい。
法人課税
1.給与等の支給額が増加した場合の税額控除制度の改組
(1)人材確保等促進税制の抜本的見直し (大企業向け)
大企業向けの人材確保等促進税制の適用要件について、継続雇用者に対する給与等支給額の増加に着目した税額控除制度とされる。また、賃上げや教育訓練に積極的な企業については、税額控除率が上乗せされる。
具体的には、令和4年4月1日から令和6年3月31日までの間に開始する各事業年度において、青色申告書提出法人が国内雇用者に対して給与等を支給する場合に、継続雇用者給与等支給額の前期継続雇用者給与等支給額に対する増加割合が3%以上であるときは、控除対象雇用者給与等支給増加額の15%の税額控除ができる制度に変更される。また、継続雇用者給与等支給額の前期継続雇用者給与等支給額に対する増加割合が4%以上であるときは、税額控除率に10%を加算し(25%の税額控除率)、教育訓練費の額の比較教育訓練費の額に対する増加割合が20%以上であるときは、税額控除率に5%が加算される(20%又は30%の税額控除率)。
なお、一定規模以上の大企業については給与引上げ方針等を公表したことを経済産業大臣に届け出ている場合に限り適用されるため留意が必要となる。
(2)所得拡大促進税制の見直し(中小企業者向け)
中小企業における所得拡大促進税制について、令和4年4月1日から令和6年3月31日までの間に開始する各事業年度において、税額控除率の上乗せ措置が次のように見直された上、適用期限が1年延長される。
■ 雇用者給与等支給額の前期雇用者給与等支給額に対する増加割合が2.5%以上である場合には、税額控除率に15%を加算する(30%の税額控除率)
■ 教育訓練費の額の比較教育訓練費の額に対する増加割合が10%以上である場合、税額控除率に10%を加算する(25%又は40%の税額控除率)
2.大企業についての一定の租税特別措置の停止措置の見直し
平成30年度税制改正により導入され、令和3年度税制改正により適用期限の延長、停止対象の税額控除が拡大された大企業についての一定の租税特別措置の停止措置について、以下のいずれにも該当する場合には、継続雇用者給与等支給額に係る要件を、現行の「継続雇用者給与等支給額が継続雇用者比較給与等支給額を超えること」から、「継続雇用者給与等支給額の継続雇用者比較給与等支給額に対する増加割合が1%以上(令和4年4月1日から令和5年3月31日までの間に開始する事業年度にあっては、0.5%以上)」と強化される。
■ 資本金の額等が10億円以上であり、かつ、常時使用する従業員数が1,000人以上である
■ 前事業年度の所得金額が零を超える一定の場合
この一定の租税特別措置の停止は、「ムチ税制」とも呼ばれ、一定の要件を満たさない大企業について、対象となる租税特別措置が適用できないとされるものである。
具体的には、大企業が、前期比で所得が増加しているにもかかわらず、賃上げ要件及び設備投資要件(国内設備投資額が当期償却費総額の30%相当額を超えること)のどちらも満たさない場合には、その事業年度については、研究開発税制その他の一定の税額控除を適用できないとされている。この見直しでは、所得が拡大しているにもかかわらず、賃上げにも投資にも、特に消極的な一定規模以上の大企業に対し、停止措置が更に強化される。
停止措置の対象制度は、以下のとおりである。
▲研究開発税制
▲地域未来投資促進税制
▲5G投資促進税制
▲DX投資促進税制
▲カーボンニュートラルに向けた投資促進税制
3.オープンイノベーション促進税制の拡充
青色申告書を提出する株式会社等が、スタートアップ企業(特別新事業開拓事業者)とのオープンイノベーションに向け、スタートアップ企業の新規発行株式を一定額以上取得する場合、取得株式の取得価額の25%相当額を課税所得から控除できる課税の特例(オープンイノベーション促進税制)について、次の見直しが行われた上、適用期限が2年延長される。
4.5G投資促進税制の見直し
青色申告書を提出する法人が、「特定高度情報通信技術活用システムの開発供給及び導入の促進に関する法律」の規定に基づく認定導入計画に従って、認定特定高度情報通信技術活用設備を取得した場合、当該設備の取得価額の15%相当額の税額控除又は30%相当額の特別償却を適用できる課税の特例(5G投資促進税制)について、次の見直しが行われた上、その適用期限が3年延長される。
5.交際費等の損金不算入制度等の期限延長
交際費等の損金不算入制度についてその適用期限が2年延長されるとともに、接待飲食費に係る損金算入の特例期限が2年延長される。中小法人に係る損金算入の特例の適用期限についても、2年延長される。
資本金の額等に応じた各種制度の適用関係は、次の表のとおりである。
6.少額の減価償却資産の取得価額の損金算入制度等
次の制度について、次の表のとおり対象資産が見直され、中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例については適用期限が2年延長される。
7.大法人に対する法人事業税所得割の税率の見直し
(1)概要
法人事業税の所得割の標準税率について、現行では3未満の都道府県において事務所又は事業所を設けて事業を行う場合に、所得金額に応じた軽減税率が適用される。しかし、本改正により、資本金が1億円超の大法人である外形標準課税適用法人について、以下のとおり軽減税率の適用を廃止する見直しがされる。
(2)適用関係
上記の改正は、令和4年4月1日以後に開始する事業年度から適用される。
8.完全子法人株式等に係る配当等についての源泉徴収の廃止
一定の内国法人が支払を受ける配当等で次に掲げるものについては、所得税を課さないこととし、その配当等に係る所得の源泉徴収は行わないこととされ、令和5年10月1日以後に支払を受けるべき配当等について適用される。
■完全子法人株式等(株式等保有割合100%)に係る配当等
■配当等の支払に係る基準日において、当該内国法人が直接保有する他の内国法人の株式等の発行済株式等の総数に占める割合が3分の1超である場合における当該他の法人の株式等に係る配当等
完全子法人株式等(株式等保有割合100%)及び関連法人株式等(株式等保有割合3分の1超)に係る受取配当等については、配当等計算期間にわたる継続保有を要件に、受取法人において100%益金不算入となるが(関連法人株式等の配当等については負債利子控除後の金額)、現行法ではいったん源泉徴収をすることとされている。これらの配当等に係る源泉徴収が不適用となる。なお、3分の1超保有する場合の判定は、あくまでも配当等基準日時点の現況により行い、継続保有要件は課されない見込みである。
9.隠蔽仮装行為に基づく確定申告書等における簿外経費の取扱い
(1)概要
税務調査の現場において、証拠書類を提示せずに簿外経費を主張する納税者や証拠書類を仮装して簿外経費を主張する納税者への対応として、以下の措置が設けられる。
(2)適用関係
上記の改正は、令和5年1月1日以後に開始する事業年度から適用される。
10.その他
(1)環境負荷低減事業活動用資産・基盤確立事業用資産の特別償却
農林水産業の持続可能性を確保する観点から、環境と調和した生産活動に取り組もうとする農林漁業者等を後押しすることを目的として、環境と調和のとれた食料システムの確立のための環境負荷低減事業活動の促進等に関する法律(仮称)の制定を前提に、設備投資に対する税制上の支援措置が創設される。
(2)地方拠点強化税制の見直し
地方拠点強化税制について、次の表のとおり見直しが行われた上で、適用期限が2年延長される。
(3)農林水産物・食品の輸出拡大に向けた措置の創設
農林水産物及び食品の輸出の促進に関する法律の改正を前提に、青色申告書を提出する法人で同法の認定輸出事業者であるものが、同法の改正法の施行の日から令和6年3月31日までの間に、輸出事業用資産の取得等をして、その法人の輸出事業の用に供した場合には、5年間30%(建物及びその附属設備並びに構築物については、35%)の割増償却ができることとされる。
(4)固定資産の取得等の後に補助金等の交付を受けた場合の圧縮記帳制度の適用の明確化
次の制度について、固定資産の取得等の後に国庫補助金等の交付を受けた場合等の取扱いが法令上明確化される。
■国庫補助金等で取得した固定資産等の圧縮額の損金算入制度
■工事負担金で取得した固定資産等の圧縮額の損金算入制度
■非出資組合が賦課金で取得した固定資産等の圧縮額の損金算入制度
■保険金等で取得した固定資産等の圧縮額の損金算入制度
■収用等に伴い代替資産を取得した場合の課税の特例
(5)その他の租税特別措置等
その他の租税特別措置等について、次のとおり適用期限の延長及び内容の見直し等が行われる。
グループ通算制度
現行の連結納税制度は、令和2年度税制改正により、令和4年4月1日以後開始事業年度につきグループ通算制度に改組されることが決定しているが、このうち投資簿価修正等について一部見直されることになった。
1.投資簿価修正制度の見直し
(1)見直しの概要
通算子法人の通算グループ離脱時に、その離脱子法人の株式を保有する各通算法人において、離脱子法人株式の投資簿価修正をするに当たり、離脱子法人株式の帳簿価額とされる金額(離脱する通算子法人の簿価純資産価額)にその資産調整勘定等対応金額を加算できることとされる。グループ通算制度における投資簿価修正を行うと過年度に支出した買収プレミアム相当額の損金算入機会が失われる場合があり、経済界からの税制改正要望が強まったため、これに対応したものである。
改正前のグループ通算制度における投資簿価修正の基本的な考え方は、離脱子法人への投資簿価を、その中身である離脱子法人の簿価純資産価額で測るものである。具体的には、通算グループから通算子法人が離脱する場合、その株式等を保有する通算法人において、その帳簿価額が離脱子法人の簿価純資産価額×保有割合に等しくなるように、投資簿価を修正することとされている(法令119の3⑤、119の4①)。
この投資簿価修正を行うと、通算子法人株式を外部譲渡した場合に、株主である通算法人において計上される譲渡損益は、当該通算子法人における資産・負債の含み損益相当のみになる。
その結果、これからグループ通算制度の適用を迎えようとする企業グループにおいて問題となってきたのが、過年度にプレミアム付きで買収をしてきた子法人株式の取扱いであった。すなわち、過年度に業績を期待してプレミアムを付けて買収した子法人について、結果的に業績が上がらず、投資簿価がその中身に比して高くなっているような場合に、当該投資簿価修正を行うと、その投資簿価が簿価純資産に等しくなるよう株式帳簿価額が修正され、株式譲渡損がほとんど計上されない結果になり、過年度に支出したプレミアム相当分について損金算入する機会が失われるのである。
そこで、大綱において、過年度に支出したプレミアム相当分(資産調整勘定等対応金額)の概念を導入し、その金額について投資簿価に加算できるよう、改正が行われることになった。
なお、当該措置については、連結納税制度からグループ通算法人に移行したグループの連結開始・加入法人についても対象となることとされている。
また、対象となる離脱子法人からは、主要な事業の継続が見込まれないことにより離脱等に伴う資産の時価評価制度の適用を受ける法人が除かれる。
(2)資産調整勘定等対応金額とは
離脱子法人株式の帳簿価額とされる金額に加算できる「資産調整勘定等対応金額」の計算方法は、以下のとおりとされており、その子法人を買収したときの株式取得価額のうち、個別資産・負債の時価を超える金額として算出される。
■資産調整勘定等対応金額=離脱子法人の通算開始・加入前に通算グループ内の法人が時価取得した子法人株式の取得価額のうち、その取得価額を合併対価としてその取得時にその通算子法人を被合併法人とする非適格合併を行うものとした場合に資産調整勘定又は負債調整勘定として計算される金額に相当する金額
⇒非適格合併の合併法人における受入れ処理を転用し、子法人株式取得時の買収プレミアム的な部分を次のように計算することになる
▲子法人株式の時価取得が段階的に行われる場合又は通算グループ内の複数の法人により行われる場合には、各通算法人の各取得時における調整勘定として計算される金額×取得株式数割合の合計額
▲当該通算子法人を被合併法人等とする非適格合併等が行われた場合には零
(3)適用要件
当該措置の適用は、離脱子法人の株式を保有する各通算法人において、以下の両方に該当する場合に限られる。
■その離脱子法人に係る資産調整勘定等対応金額について離脱時の属する事業年度の確定申告書等にその計算に関する明細書の添付が必要
■計算の基礎となる事項を記載した書類を保存
実務上は、特に子法人買収時から相当期間が経過している場合などには、その具体的な計算や書類保存が困難であることが予想される。
2.通算子法人離脱等に伴う資産の時価評価対象の見直し
通算制度からの離脱等に伴う資産の時価評価制度について、時価評価資産から除外される資産から帳簿価額1,000万円未満の営業権が除外され、営業権については帳簿価額を問わず時価評価対象とされる。
3.通算税効果額相当額の益金不算入・損金不算入についての見直し
グループ通算制度を適用する場合、通算グループ内の各法人が申告・納税を行うが、通算グループ内の損益通算や繰越欠損金の通算その他の規定により、通算グループ内の他の法人の欠損や繰越欠損金等により自社の法人税の負担が軽減することがある。このように、グループ通算制度を適用することによって減少する法人税及び地方法人税の額に相当する金額として法人間で授受される金額を通算税効果額と呼び、この金額についての資金の精算をした場合においても、その受取額・支払額は法人税の所得計算において益金・損金に算入されないこととされている(法法26④、38③)。
この益金不算入及び損金不算入の対象となる通算税効果額から、利子税の額に相当する金額として各通算法人間で授受される金額が除外される見直しが行われる。
4.支配関係5年超要件の見直し
グループ通算制度開始及び子法人加入の際には、一定の要件を満たさない場合には繰越欠損金の切捨てや損益通算の一部制限、また、特定資産譲渡等損失の損金算入制限等の制限を受ける場合がある。この一定の要件を満たすかどうかの判定に当たり、まず、支配関係が5年超かどうかの判定を行う(支配関係5年継続要件)が、その判定内容が一部見直される。
(1)通算親法人が新設法人である場合の支配 関係5年超継続要件の判定相手の見直し
通算承認日の5年前の日後に設立された通算親法人についての支配関係5年継続要件の判定相手について、他の通算法人のうち最後に支配関係を有することとなった日(改正前:設立日)の最も早いものとの間で行うものに見直される。
改正前において、グループ通算制度開始日5年前の日後に設立された通算親法人について、上記支配関係5年超要件を判定する場合には、以下の場合には要件を充足するものして扱うこととされている(法令112の2③二)が、この判定相手が見直されるものである。
(2)判定対象法人が新設法人である場合の支配関係5年超要件の特例から除外される組織再編成の見直し
要件の判定を行う通算法人等が通算承認日の5年前の日後に設立された法人である場合に、支配関係5年継続要件について、設立日等から継続して支配関係があれば充足するものとされることとされている一方、一定の吸収型組織再編成が行われている場合には、当該特例が使えないこととされている。
この特例の適用から除外される組織再編成について、以下の追加と除外が行われる。
■通算子法人の判定において、特例の適用から除外される組織再編成に以下を追加
▲自己を合併法人とする適格合併で他の通算子法人の支配関係法人(通算法人を除く)を被合併法人とするもの
▲自己が発行済株式等を有する内国法人(通算法人を除く)で他の通算子法人の支配関係法人であるものの残余財産の確定
■特例の適用から除外される組織再編成から除外
▲通算グループ内の法人間の組織再編成
5.認定事業適応法人の欠損金の損金算入の特例における欠損金の通算の特例についての見直し
令和3年度税制改正と事業競争力強化法の改正により導入された、事業競争力強化法の認定を受けた認定事業適応法人の欠損金の損金算入の特例において、グループ通算制度を適用している場合には、欠損金の通算の特例があるが、各通算法人の控除上限に加算する非特定超過控除対象額の配賦は、非特定欠損控除前所得金額から本特例を適用しないものとした場合に損金算入されることとなるその特例十年内事業年度に係る非特定欠損金相当額を控除した金額(改正前:非特定欠損控除前所得金額)の比によることとされる等の見直しが行われる。
6.外国税額控除の修更正における遮断措置についての手続等の見直し
グループ通算制度においては、修更正時に全社が計算し直しになる手間を軽減するため、修更正の対象法人のみにおいて処理を完結するためのいわゆる遮断措置が設けられている。外国税額控除については、基本的に、修更正すべき金額を、修更正の進行事業年度において調整する措置(進行事業年度調整措置)がとられている。この措置に関連し、以下の見直しが行われる。
■税務当局が調査を行った結果、進行事業年度調整措置を適用すべきと認める場合には、通算法人に対し、その調査結果の内容(進行事業年度調整措置を適用すべきと認めた金額及びその理由を含む)を説明するものとされる
■上記の説明が行われた日の属する事業年度の期限内申告書に添付された書類に進行事業年度調整措置を適用した金額(税額控除不足額相当額又は税額控除超過額相当額)として記載された金額等がその説明の内容と異なる場合には、その事業年度に係る税額控除不足額相当額又は税額控除超過額相当額に係る固定措置が不適用とされる
■税額控除額等(税額控除額、税額控除不足額相当額又は税額控除超過額相当額をいう)に係る固定措置が不適用とされた事業年度について、その不適用とされたことに伴い修正申告書の提出又は更正が行われた場合には、原則として、その修正申告書又はその更正に係る更正通知書に税額控除額等として記載された金額をもって本固定措置が再度適用される
国際課税/組織再編
1.外国法人に対する過大支払利子税制の適用範囲の見直し
(1)概要
現行法上、外国法人について、過大支払利子税制(対象純支払利子等に係る課税の特例)は、恒久的施設帰属所得の計算においてのみ適用することとされている。今般の改正においては、外国法人の法人税の課税対象とされる次に掲げる国内源泉所得に係る所得の金額の計算上も本制度が新たに適用されるものとされており、適用範囲が拡大されている。
■恒久的施設を有する外国法人に係る恒久的施設帰属所得以外の国内源泉所得
■恒久的施設を有しない外国法人に係る国内源泉所得
この結果、外国法人において過大支払利子税制の適用対象となる所得は、下図の緑枠内(現行)に水色枠内(改正により追加)を加えたものとなるものと想定される。
法人住民税・法人事業税についても、上記見直しにかかる国税の取扱いに準じて所用の措置が講じられる。
2.子会社株式簿価減額特例の見直し
子会社からの配当と子会社株式の譲渡を組み合わせた租税回避を防止するための措置(子会社株式簿価減額特例)について、次の見直しが行われる。
(1)適用除外要件(特定支配日利益剰余金額要件)の見直し
1)概要
子会社株式簿価減額特例は、①内国株主割合要件、②特定支配日利益剰余金額要件、③10年超支配要件、④金額要件のいずれかを満たす場合には不適用とされる。このうち、特定支配日利益剰余金額要件について、以下2)の要件を満たす場合には一定の調整計算3)が認められる。
2)要件
①子法人の対象配当等の額に係る決議日等前に最後に終了した事業年度(以下「直前事業年度」)終了の日の翌日からその対象配当等の額を受けるまでの期間(以下「対象期間」)内にその子法人の利益剰余金の額が増加していること
②対象期間内にその子法人の株主等がその子法人から受ける配当等の額に係る基準時のいずれかが、直前事業年度の終了の日の翌日以後であること
③一定の書類保存要件を満たすこと
3)内容
特定支配日利益剰余金額要件の判定式について、下記の②の方法によることが認められる(任意適用)。
(2)適用回避防止規定(適用除外基準を満たす子会社を経由した配当等を用いた適用回避に対するもの)の適用の緩和
1)概要
子会社簿価減額特例においては適用回避防止規定が設けられている。この適用回避防止規定には、①合併・分割型分割を用いた適用回避スキームに対応するものと、②適用除外基準を満たす子会社を経由した配当等を用いた適用回避スキームに対応するものの2つがあるが、本改正では、②の規定(以下「本適用回避防止規定」)に関連し、必ずしも子会社簿価減額特例の適用回避につながらないと考えられるケースについてその適用の緩和が行われる。
2)改正内容
次のいずれかに該当する場合には、本適用回避防止規定は適用されないこととされる。
①対象配当等の額に係る基準時以前10年以内に子法人(下図S社)との間にその子法人(S社)による特定支配関係があった法人(以下「孫法人等」)の全て(A社)がその設立の時からその基準時※1まで継続してその子法人(S社)との間にその子法人(S社)による特定支配関係がある法人(①において「継続関係法人」)である場合※2
※1 基準時前に特定支配関係を有しなくなった孫法人等にあっては、最後に特定支配関係を有しなくなった時の直前
※2 子法人又は孫法人等を合併法人とする合併で、継続関係法人でない法人を被合併法人とするものが行われていた場合等を除くXJ
②次のいずれにも該当する場合
(ア)親法人(P社)と孫法人(B社)との間に、孫法人(B社)の設立の時からその孫法人(B社)から子法人(S社)に支払う配当等の額に係る基準時まで継続して親法人(P社)による特定支配関係がある場合
(イ)その基準時以前10年以内に孫法人(下記B社)との間にその孫法人(B社)による特定支配関係があった法人(以下「ひ孫法人等」)の全て(C社)がその設立の時からその基準時※1まで継続して孫法人(B社)との間にその孫法人(B社)による特定支配関係がある法人(②において「継続関係法人」)である場合※2
※1 基準時前に特定支配関係を有しなくなったひ孫法人等にあっては、最後に特定支配関係を有しなくなった時の直前
※2 孫法人又はひ孫法人等を合併法人とする合併で、継続関係法人でない法人を被合併法人とするものが行われていた場合等を除く
3)適用関係
上記改正は、令和2年4月1日以後に開始する事業年度において受ける対象配当等の額について適用される。
3.みなし配当の計算方法等の見直し
(1)概要
みなし配当の計算方法等について、次の見直しが行われる。
①資本の払戻しに係るみなし配当の額の計算の基礎となる「払戻等対応資本金額等」は、その資本の払戻しにより減少した資本剰余金の額を限度とされる。資本金等の額の計算の基礎となる「減資資本金額」についても同様。
②種類株式を発行する法人が資本の払戻しを行った場合における、みなし配当の額の計算の基礎となる「払戻対応資本金額等」その資本の払戻しに係る各種類資本金額を基礎として計算することとされる。資本金等の額の計算の基礎となる減資資本金額についても同様。
(2)改正の趣旨
利益剰余金と資本剰余金の双方を原資とする、いわゆる混合配当については、法人税法上、その全体をまとめて「資本の払戻し」として取り扱うこととされており、資本剰余金を減少した金額を基にプロラタ計算した金額が税務上の資本金等の額に対応する金額として取り扱われ、それを超える金額については利益積立金の配当(みなし配当)として取り扱われる。
払戻法人の税務上の利益積立金がマイナスの場合、資本剰余金を減少した金額を超えて税務上の資本金等の額が減額される結果となる場合があり、これについて令和3年3月11日最高裁判決では、法人税法の委任の範囲を逸脱した違法なものとして無効と判断された。
これに対応し、混合配当についての税務上の資本金等の額の減少額について、資本剰余金の減少額を上限とするよう改正が行われる。
資本払戻し法人側の処理(資本金等の額と利益積立金額の減少)についても、同様の改正が行われる。
(3)過去の申告分についての取扱い
令和3年10月25日に国税庁のウェブサイトに「最高裁判所令和3年3月11日判決を踏まえた利益剰余金と資本剰余金の双方を原資として行われた剰余金の配当の取扱いについて」が公表されている。これによると、本改正と同様の取扱いが過去に遡って適用されることとされており、納税者の状況により国税通則法の規定に基づき期限内であれば更正の請求を行うことが可能である。
4.新国際課税ルール(デジタル課税)
令和4年度税制改正に具体的な内容が含まれるものではないが、現在同時進行中のOECD及びG20において議論されているデジタル課税・グローバルミニマム課税の導入についても、今後の制度改正に向けた方向性の表明が、1ページを占めて宣言されており、令和5年度税制改正以後に大きな改正が予測されるところである。
個人所得課税
1.住宅借入金等特別控除の見直し
(1)住宅借入金等特別控除の特例措置
■令和3年12月31日に適用期限を迎える住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除について、適用期限が4年間延長される。また、住宅借入金等特別控除額が住宅ローンの支払利息額を上回り益税が生じる状況の是正措置として控除率の引下げや、カーボンニュートラルの実現に向けた住宅の省エネ性能向上や長期優良住宅の取得促進施策として、居住年や住宅の環境性能に応じ住宅借入金等の借入限度額や控除期間が定められる等の措置がとられる
▲適用期限:現行の令和3年12月31日から、令和7年12月31日まで4年間延長される
▲控除率:平成21年居住分以降、年末借入残高の1%で据え置きであったが、0.7%へ引き下げられる
▲所得要件:現行の合計所得金額3,000万円以下から2,000万円以下へ引き下げられる
▲その他、住宅の環境性能や居住年等に応じた借入限度額や控除期間の詳細は下表のとおり
■この住宅借入金等を有する場合の特別控除は、取得した住宅の床面積が40㎡以上50㎡未満の家屋で令和5年12月31日以前に新築したものについても適用を受けることができる(その年分の所得税に係る合計所得金額が1,000万円以下の年に限る)
■現行制度と同様に、各年の住宅借入金等特別控除額から所得税額を控除した残額がある場合には、当該残額につき一定の金額を限度として翌年分の個人住民税から控除される
(2)住宅借入金等特別控除の適用事務手続きの簡素化
■令和5年以後に居住の用に供する家屋について住宅ローン控除の適用を受ける個人について、年末残高証明書等の確定申告書への添付が不要となる
■令和6年1月1日以降の年末調整で住宅ローン控除の適用を受ける場合には、年末残高証明書の給与所得者の住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除申告書への添付が不要となる
2.上場株式等に係る配当所得等の課税の特例に対する措置
配当所得は原則所得税率5.105%~45.945%で総合課税されるが、上場株式等の配当所得等については、申告分離課税や申告不要という課税方法の選択も可能とされている。ただし、上場株式等に係る持株割合が3%以上(いわゆる大口株主)の場合にはこの選択はできず、総合課税となる。
現行法では、対象となる上場会社の発行済株式等の3%以上を直接保有する者のみが大口株主として定義されており、同族会社等を通じて対象上場会社を間接的に支配している個人株主は申告分離課税等の選択が可能となっている。この大口株主の要件について以下のとおり見直しが行われる。
■対象上場会社の株式等保有割合(同族会社を通じた保有割合を含む保有割合)が3%以上の場合も大口株主として、その者が受け取る配当は総合課税となる
■この場合の株式等保有割合とは、個人及びその個人を判定の基礎となる株主とした場合に同族会社に該当する法人が保有する株式の発行済み株式の総数に対する割合をいう
■令和5年10月1日以後に支払を受けるべき上場株式等の配当等について適用開始となる
資産課税
1.直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税措置の見直し
父母・祖父母など直系尊属からの贈与により、自己の居住の用に供する住宅用家屋を新築等するための資金を取得した場合、一定の限度額までは贈与税が非課税となる当該制度につき、一部要件の見直しが行われた上で、2年延長される。
(1)適用期限の延長・要件等の見直し
■適用期限が、令和3年12月31日から令和5年12月31日まで2年延長される
3)受贈者の年齢要件
■受贈者の適用年数が20歳以上から、18歳以上に引き下げられる
(2)適用関係ほか
■上記の改正は、令和4年1月1日以後(受贈者の年齢の引下げは同年4月1日以後)の、当該制度に係る贈与税について適用される
■上記(非課税限度額を除く)の改正は、住宅取得等資金の贈与に係る相続時精算課税制度の特例措置等についても同様に適用される
2.非上場株式等に係る相続税・贈与税の納税猶予の特例制度の見直し
新型コロナウイルス感染症の影響により次世代への事業承継の時期が後ろ倒しになっている傾向にあり、事業承継税制の特例承継計画の申請ペースが鈍化している状況を踏まえ、特例承継計画の提出期限が1年延長される。
■非上場株式等に係る相続税・贈与税の納税猶予の特例制度を適用するためには、特例承継計画を対象会社の主たる事務所が所在する都道府県に提出する必要があるが、次のとおり提出期限が延長される。
現行 | 改正案 |
---|---|
令和5年3月31日 |
令和6年3月31日 |
■特例承継計画の提出期限は1年延長されたものの、特例制度自体は令和9年12月末までの時限措置とされており、今回の大綱において延長を行わない旨が明記されているため、適用を検討している企業に関しては早期に事業承継に取り組むことが期待される。
消費課税
1.適格請求書等保存方式(インボイス制度)に係る見直し
令和5年10月1日から適用が開始される適格請求書等保存方式(以下「インボイス制度」)における適格請求書発行事業者の登録等について、次の見直しが行われる。
(1)免税事業者の適格請求書発行事業者登録の柔軟化
令和5年10月1日から導入されるインボイス制度では、企業が顧客に適格請求書を発行する場合には、原則令和5年3月末までに適格請求書発行事業者となるための申請書を税務署に提出する必要がある。原則、消費税の免税事業者が適格請求書を発行しようとする場合には、課税事業者選択届出書を提出することにより課税事業者となった上で、適格請求書発行事業者として登録申請を行う必要がある。当該課税事業者選択届出書を提出した場合には、通常提出した翌事業年度の開始日から課税事業者となるため、免税事業者はその翌事業年度の開始日から適格請求書発行事業者となることができる。
現行法では、免税事業者が令和5年10月1日を含む課税期間に限り、課税事業者選択届出書を提出せずに課税期間の中途で適格請求書発行事業者として登録することができ、その課税期間中の登録日から適格請求書を発行することを認める経過措置が導入されている。
大綱では、経過措置適用期間が延長され、免税事業者が令和5年10月1日から令和11年9月30日までの日の属する課税期間中に適格請求書発行事業者の登録を受ける場合には、課税期間の中途からの登録を可能とし、その登録日から適格請求書発行事業者(課税事業者)となることができることとされる。
なお、この取扱いは、免税事業者が適格請求書発行事業者の登録の必要性を十分に考慮し、柔軟なタイミングで適格請求書発行事業者となれるように配慮したものと考えられる。
(2)免税事業者が適格請求書発行事業者となった場合における事業者免税点制度の不適用
上記(1)の適用を受けて登録日から課税事業者となる適格請求書発行事業者(その登録日が令和5年10月1日の属する課税期間中である者を除く)のその登録日の属する課税期間の翌課税期間からその登録日以後2年を経過する日の属する課税期間までの各課税期間については、事業者免税点制度が適用されない。
この取扱いは、課税事業者選択届出書を提出した場合には、課税事業者となった課税期間の初日から2年間は原則として課税事業者を継続しなければならない(事業者免税点制度が適用されない)という現行の取扱いとのバランスを考慮したものとされる。
(3)納税管理人を選定していない場合等における税務署長処分権限の拡張
特定国外事業者(事務所及び事業所等を国内に有しない国外事業者をいう)以外の者であって納税管理人を定めなければならないこととされている事業者が適格請求書発行事業者の登録申請の際に納税管理人を定めていない場合には、税務署長はその登録を拒否することができることとされ、登録を受けている当該事業者が納税管理人を定めていない場合には、税務署長はその登録を取り消すことができることとされる。
また、事業者が適格請求書発行事業者の登録申請書に虚偽の記載をして登録を受けた場合には、税務署長はその登録を取り消すことができることとされる。
(4)適用関係
上記(1)から(3)までの改正は、令和5年10月1日以後に国内において事業者が行う資産の譲渡等及び課税仕入れについて適用される。
納税環境整備
1.電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存への円滑な移行のための宥恕措置の整備
令和3年度税制改正により、令和4年1月1日以降に行われる電子取引によって授受される取引情報(電子取引データ)に関しては、電子帳簿保存法の定める保存要件に従い、電磁的記録(電子データ)による保存が要求され、従来代替措置として認められていた出力書面による保存制度が廃止される。しかし、当該保存要件を満たすシステム準備が間に合わないという事業者側の要望を踏まえ、令和4年1月1日から2年間は、事業者側にやむを得ない事情があり、かつ出力書面を提示又は提出できる場合には、法令に定める保存要件にかかわらず、その電磁的記録の保存をすることができることとする宥恕規定が設けられる。
(1)概要
申告所得税及び法人税に係る保存義務者が行う電子取引につき、令和4年1月1日から令和5年12月31日までの期間は、以下の宥恕規定が設けられる。
宥恕措置の要件である「やむを得ない事情」について、令和3年12月27日付けで改正された電子帳簿保存法取扱通達では、「電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存に係るシステム等や社内でのワークフローの整備未済等、保存要件に従って電磁的記録の保存を行うための準備を整えることが困難であることをいう」と規定されている。
また、上記措置の適用については、当該電子データの保存要件への対応が困難な事業者の実情に配意し、引き続き保存義務者から納税地等の所轄税務署長への手続を要せずその出力書面等による保存も認められる旨、当該通達で規定されている。
(2)適用関係
上記の改正は、令和4年1月1日以後に行う電子取引の取引情報について適用される。
2.タイムスタンプの国による認定制度の創設に伴うスキャナ保存制度等の整備
社会全体のデジタル化を進めるに当たり、データの改ざんや送信元のなりすまし等を防止する仕組みであるトラストサービスの重要性が高まっている中、当該トラストサービスの1つであるタイムスタンプについては、一般財団法人日本データ通信協会による民間の認定制度が運用されてきた。しかし、国による信頼性の裏付けがないことや国際的な通用性への懸念等の意見を踏まえて、国としての裏付けを与えるタイムスタンプの認定制度が創設され、令和3年7月30日より認定の受付が開始されている。
これに伴い、電子帳簿保存法のような電子文書の保存に関する制度においても国による認証制度を有効な手段と位置付けるため、以下の見直しがされる。
(1)概要
国税関係書類のスキャナ保存制度及び電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存制度のタイムスタンプ要件について、現行は一般財団法人日本データ通信協会が認定する業務に係るタイムスタンプを付すことになっていたが、改正後は国による信頼性の裏付けを持った総務大臣の認定する時刻認証業務に係るタイムスタンプを付すことになった。
(2)適用関係
上記の改正は、令和4年4月1日以後に保存が行われる国税関係書類又は電子取引の取引情報に係る電磁的記録について適用される。また、令和4年4月1日から令和5年7月29日までの間に保存が行われる国税関係書類又は電子取引の取引情報に係る電磁的記録のタイムスタンプ要件について、従前どおり一般財団法人日本データ通信協会が認定する業務に係るタイムスタンプを付すことを可能とする経過措置が設けられる。
3.帳簿の提出がない場合等の過少申告加算税等の加重措置の整備
記帳水準の向上に資する観点から、記帳義務の適正な履行を担保するため、帳簿の不保存や記載不備について未然に抑止するための過少申告加算税・無申告加算税の加重措置が設けられる。
(1)概要
一定の帳簿※1に記載すべき事項に関し所得税、法人税又は消費税に係る修正申告書の提出等の前に、国税庁等の職員から帳簿の提示又は提出を求められ、かつ、次に掲げる場合のいずれかに該当するとき(当該納税者の責めに帰すべき事由がない場合を除く)は、当該帳簿に記載すべき事項に関して生じた申告漏れ等に課される過少申告加算税等について、通常課される額に申告漏れ等に係る税額の10%(次の②に該当する場合には5%)に相当する額を加算するほか、所要の措置がとられる。
①帳簿の提示若しくは提出をしなかった場合又は帳簿に記載すべき事項のうち、売上金額等の記載が著しく不十分である場合※2
②帳簿に記載すべき事項のうち、売上金額の記載が不十分である場合※2
※1 「一定の帳簿」とは、次に掲げる帳簿のうち、売上金額等の記載についての調査のために必要があると認められるものをいう。
▲所得税又は法人税の青色申告者が保存しなければならないこととされる仕訳帳及び総勘定元帳
▲所得税又は法人税の白色申告者及び青色申告者(簡易簿記又は現金主義)が保存しなければならないこととされる帳簿
▲消費税の事業者が保存しなければならないこととされる帳簿
※2 「記載が著しく不十分である場合」及び「記載が不十分である場合」と加重措置のイメージは次の表のとおりである。
(2)適用関係
上記の改正は、令和6年1月1日以後に法定申告期限等が到来する国税について適用される。
4.財産債務調書制度等の見直し
財産債務調書制度等について、次の見直しが行われる(以下の改正は、いずれも令和5年分以降の財産債務調書等に適用される)。
(1)財産債務調書の提出義務者の見直し
その年の各種所得の合計額が2,000万円を超えない居住者であっても、財産の合計額が10億円以上である場合、財産債務調書の提出義務者となる。
(2)財産債務調書等の提出期限の見直し
財産債務調書及び国外財産調書(以下「財産債務調書等」)の提出期限は以下のように見直しが行われる。
提出書類 | 現行 | 改正案 |
---|---|---|
財産債務調書 国外財産調書 |
翌年の3月15日 |
翌年の6月30日 |
(3)提出期限後に財産債務調書等が提出された場合の宥恕措置の見直し
提出期限後に財産債務調書等が提出された場合において、その提出が、調査があったことにより更正等があることを予知してされたものでないときは、その財産債務調書等は提出期限内に提出されたものとみなす措置があるが、この措置はその提出が調査通知前にされたものである場合に限り適用することとされる。
(4)財産債務調書等の記載事項の見直し
財産債務調書への記載を運用上省略することができる「その他の動産の区分に該当する家庭用動産」の取得価額基準が以下のように見直しされる。
記載省略可能な 家庭用動産 |
現行 | 改正案 |
---|---|---|
取得価額の基準 |
100万円未満 |
300万円未満 |
5.上場株式等の配当所得等に係る課税方式の統一
現行制度では上場株式等の配当所得等に係る課税方式について、税務上の有利・不利を勘案して所得税と個人住民税で異なる課税方式(申告不要・総合課税・申告分離課税)を選択可能だが、令和6年度分以後の個人住民税において、当該所得等に係る課税方式を所得税に一致させる方向で見直しがされた。これに伴い所要の経過措置が講じられる。
6.個人住民税における合計所得金額に係る規定の整備
■個人住民税の計算において、公的年金等控除額の算定の基礎となる合計所得金額には退職所得金額が含まれない旨が明確化された
■令和4年度分以後の個人住民税(令和5年に賦課される住民税)について適用される
関税
1.個別品目の関税率の見直し
繊維製品(女子用のブラウス等(綿製))の税細分は統合・簡素化され、税率が統一される。
2.海外の事業者を仕出人とする模倣品の水際取締りの強化
海外事業者から国内の事業性のない者に宛てて郵送等で持ち込まれた模倣品(商標権等侵害物品)は、関税法の「輸入してはならない貨物」として規定される。
3.その他
貨物運送用の反復使用される容器(通い容器)に係る免税手続は、簡素化措置の対象等が拡大される。
令和4年度税制改正トピックス
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本記事に関する留意事項
本記事は皆様への情報提供として一般的な情報を掲載するのみであり、その性質上、特定の個人や事業体に具体的に適用される個別の事情に対応するものではありません。また、本記事の作成または発行後に、関連する制度その他の適用の前提となる状況について、変動を生じる可能性もあります。個別の事案に適用するためには、当該時点で有効とされる内容により結論等を異にする可能性があることをご留意いただき、本記事の記載のみに依拠して意思決定・行動をされることなく、適用に関する具体的事案をもとに適切な専門家にご相談ください。