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「やりきる」ことを重視した、組織・人材変革

組織・人材変革の一つのカタチ、「伴走型支援」のご紹介~第1回~

昨今は、施策実行まで踏み込んだ関与や、課題が不明確でスコープを設定しにくいテーマの具体化と実行への橋渡しに関する支援が多くなっています。これを「伴走型支援」として、これまでの提言に留まらない組織・人材変革の方法論としてシリーズでご紹介します。初回は、伴走型支援が求められる背景と特徴を説明します。

「伴走型支援」とは何か

組織・人事コンサルティングというと、人事制度設計、エンゲージメント調査、リーダーシップアセスメント、研修などの手段で課題解決の支援をしているというのが、多くの企業の人事をご担当されている皆様の私たちに対する印象ではないでしょうか。実際、そのようなご支援をすることは多くあります。

一方で「人事のリソースが限られている中で施策の実効性を担保することが難しい」、「人材開発を強化すべく教育体系を整備したり、研修メニューを充実させているが、定着になかなか結び付かない」という声もよくいただきます。

そのような課題感にお応えすべく、最近は、施策実行まで踏み込んだ関与や、課題が不明確でスコープを設定しにくいテーマの具体化と実行への橋渡しに関するご支援が多くなっています。これを「伴走型支援」として、これまでの提言に留まらないコンサルティングの方法論として、本稿では求められる背景と特徴をご紹介します。

伴走型支援が求められる背景

では、なぜ伴走型支援のような関与の仕方が求められているのかについて、まずはその背景を整理しましょう。

大前提として、どのような時代やテーマであれ、社内変革は、社内の利害関係をはじめとする「目に見えぬ力」に影響をされ、「やりきる」、「効果を最大限に出しきる」ことは非常に難しいものです。そのため、私たちのような外部コンサルタントが関与することによって、社内を説得するためのファクトを収集したり、レファレンスデータを以て問題点を指摘したりすることは従来から取り組まれてきました。しかし、昨今では、その難易度はさらに上がっており、要因については大きく分けると2つあると考えています。

変革のスピードの高まりと“変革疲れ”の蔓延

今日はVUCAの時代であると叫ばれて久しいですが、変革が求められるスピードはますます高まっています。ひと昔前であれば人事制度などは5年、または10年に一度改定するようなものでしたが、最近は人材獲得競争が激しさを増すなかで、組織・人材に対する経営者の関心は高まっており、2-3年サイクルでの見直しがなされることも少なくありません。このような状況においては制度変更の主旨や背景が現場の管理職層に適切に理解され、制度運用が行われることが不可欠となります。一方で、人事のマンパワー・リソースが限られる中では制度改定の説明会で留まってしまうことも多く、定着しないまま、改定のみが繰り返されるという、従業員の立場に立つと、「何をやりたいのかわからない」、「わが社はどうなっているのか」というような雰囲気が社内に蔓延してしまいます。

社員に求められるスキルや働き方・価値観の変化

変化のスピード感が高まる中では、成果創出の難易度も飛躍的に高まることが多くなります。なぜならこれまで蓄積してきたスキル・経験・知見が通用しなくなるからです。昨今で言えば、COVID-19の影響やDXの潮流の中で、これまでとはがらっと異なる働き方が求められたり、知識・スキルが求められるようなシチュエーションは枚挙にいとまがありません。その状況下で、場合によっては、これまで以上の成果創出が求められるため、現場で働く社員が抱えている不安や不全感は想像に難くありません。

また、専門性人材や、ジョブ型の影響が推進されていくことで、一部社員は「会社に属する」といった意識から、「会社を活用する」という意識へ変化しています。組織変革においても、会社への帰属に強い関心を示さない社員には、人事部や事務局の発信が届きにくい側面もあると考えています。

デロイト トーマツ グループの伴走支援の特徴

初動を重視したプランニングとアプローチ

経営学の世界では、Static派(きっちり細部まで精緻に計画する)とContingency派(アウトラインを決めてやってみる)に大別されますが、コンサルティングにおいてもこのような流派があります。私たちが伴走型支援で重視しているのは後者です。おおまかなアクション計画を立てて、まずは場を動かす、その中で課題解決をしていくというアプローチをとらなければ、変革による効果を生み出していくことは、到底不可能です。

各現場の状態に即した伴走

現場の状態を正しく見極めることも極めて重要なアクションになります。なぜなら、現場の状態により、プロジェクトの内容を大胆にアレンジすることが必要だからです。私たちは、変革の目標やプロジェクトプランの策定状況、また、現場のケイパビリティやリソース、さらにレディネス(変革への積極性)に応じて、変革を成し遂げるためにどのようなアクションが最も必要なのかを見極めます。具体的にはこれら5つの要素が十分にある環境下の場合、現場で起こっている変革への機運の高まりを保持することが最も重要であり、プロジェクト側から様々なガバナンスを積極的に利かせていく必要性は低くなり、むしろ逆効果となりえます。

人材育成・スキル強化を重視した関わり

私たちが伴走型支援において大事にしているのは、そのプロセスの中で外部からの介入・刺激による伴走対象となる組織の人材育成です。例えば、営業組織におけるコンサルティング営業への転換がテーマであれば、多くの場合、営業力強化研修を行って、フォロー研修で定着を確認する、というようなことが一般的でしょう。しかし、私たちの場合は、伴走対象となる組織の営業会議に入り込み、そのリーダーおよびメンバーの現在の力量のアセスメント、個別のコーチング、営業活動のアクションにつながるインプットなど、総合的な支援を通じて、対象組織の底上げに取り組みます。それを通じて、プロジェクト終了後も組織が自走できる状態を作り上げていくことができます。

次回は、実際の伴走型サービスの支援事例(エンゲージメント向上サービス)をご紹介します。

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