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ミレニアル世代を惹きつけるマネジメントのあるべき姿

労働人口の減少、グローバル化、デジタル化など、企業を取り巻く環境が大きく変化する中、多様な人材を活用することは急務であり、女性・外国籍・シニア・LGBT等、様々な属性の人材の活躍を支援する動きが活発化している。本稿では、その中でも世代ごとの働き方・価値観の差異に着目し、ミレニアル世代を惹きつけるマネジメントの在り方について考察する。

ミレニアル世代とは

ミレニアル世代の出生時期の定義は様々だが、概ね1980年代~1990年代に生まれた世代を指す。本稿では1983年1月~1994年12月生まれと定義する。

ミレニアル世代を惹きつける取り組みの考え方

そもそも、「世代」は性別や国籍等のように明確な線引きがしにくく、セグメント別に検討することが実は難しいテーマである。また、ミレニアル世代は出生時期による定義はあるが、この世代の価値観・特徴をステレオタイプ化して施策を打ち出すことは避けるべきである。なぜなら、この世代には他の世代と比して多様な価値観が混在しており、1つに定義することはほぼ不可能であるためだ。もし仮に最大公約数を捉えその価値観・特徴を定義したとしても、この世代の価値観・特徴は日々変化していくため、その定義はすぐに陳腐化してしまうだろう。

ひいては、ミレニアル世代を惹きつけるためには、ステレオタイプ化するのではなくこの世代全員に通底している時代背景・外部環境と併せて必要なアプローチを見出すことが望ましい。以下においてミレニアル世代を惹きつけるマネジメントの在り方について、彼ら/彼女らが育った時代背景・外部環境と併せて説明する。

ミレニアル世代を惹きつけるマネジメントの在り方

① 財務パフォーマンスだけでなく、社会課題の解決にも意識を向ける

ミレニアル世代は、社会的な課題に真剣に取り組む企業に共感し、強いロイヤリティを示す傾向がある。これはデロイトがグローバルで実施しているミレニアル年次調査(2019年)でも裏付けられ、グローバルのミレニアル世代の42%、日本のミレニアル世代の38%は商品・サービスが社会・環境にプラスの影響を与えるという理由でその商品・サービスを利用すると回答している。

上記の背景として、ミレニアル世代が育った時代背景が影響していると考える。この世代はバブル崩壊後の景気が停滞している時期に生まれ、その後はリーマンショックを経験するなど、常に政治的・経済的混乱の中に育っているため、世間全般や将来に対して悲観的な考えを持っている。前述のミレニアル年次調査においても、「来年の自国の経済状況が改善する」と予想したグローバルのミレニアル世代は26%、日本のミレニアル世代は12%のみとなっており、このことが他の世代よりも社会的課題の解決に関心を持つ原因となっている可能性が高い。財務的なパフォーマンスを追いかけるのみでなく、ミレニアル世代が関心を持つ社会的課題にも着目することが、この世代の共感を得ることにつながる。
 

② マス型の人材マネジメントからパーソナライズした人材マネジメントへ

デジタルツールの普及によって個人が企業よりも多くの情報にアクセスできるようになったことから、個の力が増大し、企業と個人の雇用関係が変化している。インターネットが普及する前は個人が得られる情報が限られているため、自分が所属している企業からの情報がほぼ全てであったといっても過言ではない。そのため、従業員は企業に対し忠実であり、辞令が下されれば自分の意思に関係なく従うことが当たり前とされてきた。しかし、インターネットの普及により今やこの関係は逆転している。インターネットを通じて個人が情報を取得できるようになったことで、個人のキャリアの選択肢が広がり、個人が企業を選ぶ時代へと変化している。そのため、個人は自身の価値観に即した行動をとり、企業と自身の間に価値観の不一致があれば別の企業への就職も視野に入れる動きが出てきた。ミレニアル世代を始め、生まれた時からデジタルツールに触れてきた「デジタルネイティブ」の世代はこの傾向がより一層強い。

実際に、デロイトのミレニアル年次調査(2019年)では、グローバルのミレニアル世代のうち49%が2年以内に離職すると回答しており、離職意向の高さが分かる(日本のミレニアル世代も同傾向である)。今後、雇用の流動化が進むことは確実であり、優秀人材の獲得・リテンションは企業にとって重要な課題となる。魅力ある仕事をデザインし、働きがいを提供できない企業はやがて優秀人材の流出を食い止めることができず、敗者となり得る。企業は人材獲得の競争力を高めるため、従来の企業の価値観を優先する「マス型の人材マネジメント」から、従業員個々のニーズに寄り添う「パーソナライズした人材マネジメント」に舵を切る時期に来ている。

これらのマネジメント形態は、前提として、雇用関係の捉え方が大きく異なっている。前者において、雇用関係は雇う側の立場が優位であるのに対し、後者において、雇用関係は対等であり、会社と社員は雇用をお互いのメリットに貢献し合う長期のパートナーシップと捉えている。

 

③ パーソナライズした人材マネジメントを実現する雇用関係の例

上記の一例として、シリコンバレーのトップ企業の大半が導入している「アライアンス」という雇用関係について説明する。アライアンスは従来の終身雇用や、社員を取り替え可能な資産と見なすフリーエージェント制度とは異なり、両方のメリットを取り入れようとする新しい雇用手法だ。アライアンスにおいて社員と会社の関係は対等であるため、社員は会社の成功のために時間と労力を投入し、会社はその社員の市場価値向上のために時間と労力を投入する。

アライアンスは通常の雇用契約と異なり、働き方を複数の「コミットメント期間」の積み重ねと位置づけている。この「コミットメント期間」とは、特定のミッションに対する会社と社員の道義的責任を具体化したものを意味する。例えば、「〇年間で新プロダクトの販売方法を確立する」等、個々の社員に対しパーソナライズした内容を会社と社員で約束する。社員は在職中、一つの「コミットメント期間」が終了すればまた次の新しい「コミットメント期間」に移行することを繰り返すことになる。このように複数のコミットメント期間を通じて社員と会社の双方が約束を守ることを繰り返すことで、信頼関係を少しずつ深めていくことが出来る。つまり、アライアンスは終身雇用と同様に長期にわたる信頼関係を築き、なおかつフリーエージェントと同様の柔軟性を維持することができる仕組みと言える。

日本は現在でも終身雇用の考え方が色濃く残っており、大企業でも雇用関係までを見直している企業は数少ない。一方で、今後確実に起きる雇用の流動化を踏まえると、アライアンスのような概念はますます重要性を帯びてくるだろう。
 

終わりに

ミレニアル世代を惹きつけるマネジメントの在り方について説明をしてきたが、これらはこの先において普遍的に通用するものではない。前述のとおり、個人の価値観・ニーズは時代とともに変化する。常に優秀な人材を惹きつけるためには、変化する外部環境を捉え柔軟にマネジメントを変え続ける覚悟を持つ必要がある。

参考文献

  • 「ALLIANCE 人と企業が信頼で結ばれる新しい雇用」
    リード・ホフマン、ベン・カスノーカ、クリス・イェ(著)、篠田真貴子、倉田幸信(翻訳)

著者:立石 まな / Tateishi Mana
(デロイト トーマツ コンサルティング  コンサルタント)

※上記の役職・内容等は、執筆時点のものとなります。
 

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