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新たな公立病院改革ガイドラインの方向性

公立病院改革プラン改定に向けた検討ポイント

「持続可能な地域医療提供体制を確保するための公立病院経営強化に関する検討会」の初回会議が2021年10月6日に開催され、「新公立病院改革ガイドライン」の改訂版の発出に向け、その動きが本格化しています。今後発出が予想される新たな「公立病院改革ガイドライン」と、新たなガイドラインを踏まえた「公立病院改革プラン」の改定に向けた検討ポイントを解説します。

はじめに

「持続可能な地域医療提供体制を確保するための公立病院経営強化に関する検討会」の初回会議が、2021年10月6日に開催されました。感染症対応も含めた持続可能な地域医療提供体制を確保するための、公立病院に対する新たなガイドラインや地方財政措置について検討が行われています。新たなガイドラインの公表時期は未定ですが、平成27年3月に総務省より発出された「新公立病院改革ガイドライン」の改訂版の発出に向け、その動きが本格化しています。そこで今回は、今後発出が予想される新たなガイドラインがどのような内容になるか、発出を見据えた準備として今から何を準備すべきか、その方向性について検討してみたいと思います。

 

新公立病院改革ガイドラインの内容の振り返り

「新公立病院改革ガイドライン」では、前公立病院改革ガイドライン(平成19年12月総務省)で示された「経営の効率化」「再編・ネットワーク化」「経営形態の見直し」の3つの視点に加え、「地域医療構想を踏まえた役割の明確化」を加えた4つの視点でプランを策定するように求めています。追加された「地域医療構想を踏まえた役割の明確化」では、地域医療構想と整合性のとれた形で、「将来の病床規模・機能のあり方をどう考えるのか」「地域包括ケアシステムの中でどのような役割を果たしていくのか」「それに対する一般会計負担の考え方とは」などについて整理することが求められています。

 

地域医療構想を踏まえた持続可能な地域医療提供体制の確保に向けて

新たなガイドラインでは、「新公立病院改革ガイドライン」で追加となった「地域医療構想を踏まえた役割の明確化」の重要性が増し、さらに「持続可能な地域医療提供体制の確保」がキーワードになると想定されます。少子高齢化・人口減少・労働力減少が確実視される地域が多い中で、地域医療を守るために公立病院の経営を強化する一環として、「将来の病床規模・機能のあり方」や「病院間の機能分化・連携強化・再編統合」について今後も検討の必要性に迫られる事例が増えていくと想定されます。

これらの検討が必要となる共通の背景として以下の4点が挙げられます。

背景① 生産年齢人口の減少

背景② 住民ニーズとのミスマッチ

背景③ 厳しい経営状況

背景④ 制度的な要請

今後も①~③の背景は継続的に進むと想定され、またそれを見越した④の制度的な要請も継続的に行われると想定されます。このように考えると、冒頭に記載のとおり「地域医療構想を踏まえた役割の明確化」の重要性が増し、さらに「持続可能な地域医療提供体制の確保」がキーワードとなる、新たなガイドラインが発出するものと想定されます。

新型コロナウィルス感染症による新たなガイドラインへの影響

新型コロナウィルス禍において、公立病院は地域医療に重要な役割を果たしていることが改めて認識されました。各都道府県の病床・宿泊療養施設確保計画に位置づけられた即応病床数のうち公立病院のシェアは約32%であり、人工呼吸器等使用新型コロナ入院患者数の受入れでは公立病院のシェアは約56%になります。全国の病床数に占める公立病院の病床数は約13%であることを考えると非常に大きな意味を持つ数値です。

また医療法改正により、新興感染症等の感染拡大時における医療が、医療計画の、いわゆる5疾病5事業に6番目の事業として追加されることとなりました。すなわち、次の第8次医療計画(2024年度から2029年度)において新興感染症等への対策が盛り込まれます。

このような背景から、新たなガイドラインでは第8次医療計画との整合性をあらかじめ想定し、新興感染症等対策の視点も含めた「将来の病床規模・機能のあり方」や「病院間の機能分化・連携強化・再編統合」についての検討が求められるものと想定されます。

 

まとめ

新たなガイドラインでは、新型コロナウィルス感染症の影響を踏まえ、「新公立病院改革ガイドライン」よりも「地域医療構想を踏まえた役割の明確化」という論点がより一層重要になると考えられます。感染症対応の視点も含めた持続可能な地域医療提供体制を確保するために、平時から公立病院が取り組むべき対応として「将来の病床規模・機能のあり方」や「病院間の機能分化・連携強化・再編統合」についての検討が求められると想定されます。同時にこれらの実行にあたって最適な経営形態は何なのかという議論も必要となるでしょう。

「将来の病床規模・機能のあり方」や「病院間の機能分化・連携強化・再編統合」という論点は、新たなガイドラインの発出を待たずして検討を進めることが可能な項目です。人口減少や医療ニーズの変化・縮小、医師の働き方改革への対応を踏まえながら、公立病院として、どのような役割を今後地域で果たしていくべきなのか、その本質的な問いに対して、今のうちから検討を開始していくことが望ましいと考えられます。

 

執筆

有限責任監査法人トーマツ
リスクアドバイザリー事業本部  ヘルスケア 

※上記の部署・内容は掲載時点のものとなります。2021/11

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