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公立病院を中心とした地域医療再編事例「西臼杵モデル」
30年以上先を進む人口減少地域で求められる地域医療提供体制の確保
宮崎県西臼杵地域は、高齢化率が全国平均よりも30年以上先を進む人口減少地域なので、地域医療に関する課題先進地域であると言えます。その西臼杵地域で進められている公立病院を中心とした地域医療再編事例は、今後、日本の人口減少地域における地域医療再編のモデルとして、スタンダードの1つになる可能性がありますので、本稿にて紹介します。
目次
- 1.「西臼杵地域における医療連携に係る基本構想」の背景
- 2.地域医療再編事例「西臼杵モデル」の概要
- 3.役割を明確化するための病床機能転換
- 4.オンライン医療の実証事業~オンライン診療と服薬指導の一気通貫モデル~
1.「西臼杵地域における医療連携に係る基本構想」の背景
- 宮崎県北部に位置する西臼杵郡3町(高千穂町・日之影町・五ヶ瀬町)は、3町総人口が約1万9千人、高齢化率は既に40%を超えているため(2020年国勢調査)、日本の30年以上先を進む地域医療の課題先進地域であると考えられます。西臼杵郡3町はそれぞれで公立病院を運営しており、永年に渡って地域医療を支えています。
- 今後も西臼杵郡3町のさらなる人口減少に伴った医療需要の低下が見込まれ、働き手の不足、物価高騰によるコスト増加等を背景として、3公立病院の経営環境は非常に厳しくなっています。
- 2016年に公表された宮崎県地域医療構想においては、構想区域ごとに地域医療提供体制の適正化を目指した取り組みが進められています。延岡西臼杵地域においては、2019年2月、地域医療構想調整会議内に「西臼杵地域公立病院部会」が設置され、2021年10月に「西臼杵地域における医療連携に係る基本構想」が公表されました。
- 基本構想は3公立病院の既存建物を活用できる2030年頃までを想定して、3公立病院の経営統合・機能再編による持続可能な地域医療提供体制の確保を目指しています。
2.地域医療再編事例「西臼杵モデル」の概要
- 西臼杵郡3公立病院の統合再編事例における特徴は、複数自治体による複数公立病院を、建て替えずに既存施設を活用しながら、経営統合・機能再編することであり、全国的にも類似事例が少ないモデルです。しかし、今後、日本の人口減少地域において、参考にするべき統合再編事例の1つになると考えられます。
- また、西臼杵郡3公立病院の目指す方向性として、「マグネットホスピタル・西臼杵モデル」を掲げています。一般的にマグネットホスピタルとは、高度急性期病院のイメージが強いのですが、本事例では、同じ経営母体になる3公立病院において、急性期~慢性期・在宅医療・介護を包括的に提供できることが強みになりますので、新しいマグネットホスピタルの概念として、「西臼杵モデル」としています。
- 西臼杵郡3公立病院の経営統合は、西臼杵郡3町で既存の一部事務組合(西臼杵広域行政組合)に3公立病院を組み入れる予定です。
- 西臼杵郡3公立病院の機能再編は、高千穂町国保病院が急性期~回復期を中心、日之影町国保病院が慢性期を中心、五ヶ瀬町国保病院は介護療養機能を強化する方針で役割分担の明確化を図ろうとしています。
3.役割を明確化するための病床機能転換
- 2023年4月から高千穂町国保病院と日之影町国保病院は届出入院料を同時に変更しました。これまでは2病院ともに急性期一般入院料(看護配置10:1)を届出していたため、明確な役割分担が難しい状況でした。そこで、高千穂町国保病院の療養病棟入院料を急性期一般入院料に、日之影町国保病院の急性期一般入院料を療養病棟入院料に変更することにより、役割分担を明確化するための病床機能転換を実施しました。
- 一方、五ヶ瀬町国保病院は2024年3月末までに介護療養病床を介護医療院に転換する準備を進めています。
4.オンライン医療の実証事業~オンライン診療と服薬指導の一気通貫モデル~
- 「西臼杵地域における医療連携に係る基本構想」において、西臼杵郡3公立病院の外来診療と在宅医療でオンライン診療を積極的に活用することにより、業務の効率化と患者さんの利便性向上を目指しています。そこで、2022年12月~2023年3月末の期間で、五ヶ瀬町国保病院は薬局や民間企業と連携したオンライン医療の実証事業を行いました。
- オンライン医療の実証事業では、五ヶ瀬町国保病院に外来通院している患者さんを対象として、患者さんの自宅に近い公民館で、オンライン診療とオンライン服薬指導を一気通貫で受けられる仕組みを作りました。処方された薬剤を自宅に郵送することもできるため、患者さんの利便性向上に寄与すると考えられます。
- 今回の実証事業で得られた知見を踏まえて、人口減少地域に適した、オンライン診療とオンライン服薬指導のさらなる活用方法を検討する予定です。
執筆
有限責任監査法人トーマツ
リスクアドバイザリー事業本部 ヘルスケア
※上記の部署・内容は、掲載日時点のものとなります。2023/04
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