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米国ヘルスケアにおけるデジタルトランスフォーメーション

患者と医療提供者の関係性を根本的に改革する

過去20年間、多くの医療施設がデジタルテクノロジーを採用してきた。多くの場合、医療施設が持つ情報をEhRへ接続したり、モバイルアプリにAI機能を搭載するなど断片的であって、患者との医療提供者の関係性に変化を及ぼすほどではなかった。 今回のパンデミックが患者の嗜好変化、人材モデルの変化、臨床現場のイノベーションを加速させた。ヘルスケア分野でデジタルテクノロジー戦略を明確にする重要性が増している。

保険者・医療機関はデジタル機能の性能やケア提供の形態が患者との関係性を根本から変える道と考えている。

患者が、自身や家族の健康に関して自ら意思決定をしたいと思うようになってきており、保険者・医療機関は、患者に焦点を当てたデジタル投資を経営戦略の柱とするようシフトしています。調査回答者のほぼすべて(92%)が、デジタルトランスフォーメーションから達成したい最大の成果は、患者満足度と患者との関係性向上であり、ケアの質向上(56%)がそれに続くと述べています。

 

 

これら上位の達成したい成果と密接な連携を示すように、保険者・医療機関のインタビュー対象者は、「患者中心」のアプローチを取っていること、特にパンデミックの発生以来、ペイシェントエクスペリエンスと新たなケアデリバリモデルにデジタル投資を集中させていると話していました。「ウイズコロナでは、患者を向いたテクノロジーの採用を加速する必要があり、今後この動きが後戻りすることはありません。」と発言した方もいました。

「ペイシェント・ジャーニーは病院を受診するときだけではありません。受診前後あるいは来院がまったくない場合もあり、私たちは患者を気遣い、それぞれのポイントをつなぎ合わせて、患者の置かれた背景と事情を理解し、そうした一連の場面でデジタルツールを活用できるようにしておくことが重要です。」

ー大規模なヘルスケアシステム(保険者・医療機関)の最高デジタル責任者談ー

 

デジタルトランスフォーメーションは、財源確保と共に、人材、データ相互運用性、KPIの設定が課題である。

ヘルスケア業界のリーダーは、DXの過程でいくつかの課題に直面しています。データの品質とアクセスおよび人材確保は、調査回答者のDXに立ちはだかる主要な障壁でした。もちろん、財源確保も重要な課題です。

データとKPI測定:調査回答者は、データの相互運用性とAPIソリューションへの投資を今後3年間の最優先事項としました。相互運用性は、①増え続けるケアのコーディネーション、➁価値に基づく医療、および③健康格差の是正という広範な目標達成に役立ちます。さらに、調査回答者の大多数は、DXの進捗度合を測定するためにKPIを活用しています。インタビュー対象者は、KPIが時間とともにどのように進化してきたかについて、たとえば、数年前、「アプリのダウンロード数」は、患者数を測定するための重要なKPIでしたが、今や多くの医療機関は、患者満足度と関係性を測るために、月次アクティブユーザーや平均セッション時間などの踏み込んだ指標で測定しています。

 

人材:調査回答者は、DXの牽引をサポートする人材不足が克服すべき最大の障壁の1つであると話しました。回答者の12%のみが、十分な常勤換算数(FTE)を達成していると答え、3分の1がDXをサポートするための適切なスキルセットを組織内に確保していました。回答者の3分の1は、今後3年間は人材投資が最優先事項であると述べています。パネリストは、①テレワークの普及とそれがもたらす人材採用の地理的範囲拡大を利用して、➁ヘルスケア業界外から多様な視点とスキルセットを持つコンシューマー向けテクノロジー企業からの転職を促して、従来の領域を超えてヘルスケアのIT人材を確保していく必要性があると述べています。

財源:予算の制約があるにもかかわらず、回答者の3人中2人は、IT予算全体に占めるDXの先導への投資割合が、今後3年間で増加すると予想しています。ROIは予算配分を優先するための重要な基準になります。

 

デジタルトランスフォーメーションの成功は経営トップのリーダーシップが鍵である。

調査回答者は、リーダーシップと実装のマネジメントがDXの促進剤であると考えており、その中でインタビューに応じた方々は、組織のリーダーがDXの取組みを理解しサポートすること、また適切なリソース、人員配置、および意思決定権限をDX推進部門へ付与することの重要性を強調しました。これにより、DXのリーダーは、既成概念にとらわれずに考え、システム改良サイクルをスピードアップし、デジタルを取り巻く組織文化を変えることができます。

同様に、インタビュー対象者は、DXの過程で「変革のマネジメント」がいかに重要であるかを強調しました。DX、IT、サイバーセキュリティ、イノベーション、臨床、フロントオフィスを含む複数のチームが患者を向いたDX推進に関わり、DXプロジェクトを優先し、すべての利害関係者に目標の共通理解を促す必要があります。

 

執筆

有限責任監査法人トーマツ
リスクアドバイザリー事業本部  ヘルスケア 

※上記の部署・内容は掲載時点のものとなります。2021/12

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