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医療機関における健康経営の取り組み

持続し続けるための健康経営

「健康経営」という言葉をよく耳にするかと思います。健康経営は企業が中心となって行うもので、医療機関や施設などには関係ないとお思いの方も多いのではないでしょうか。業界業種等に関わらず、従業員を抱える組織にとって、健康経営の取組みには大きなメリットがあります。健康経営は、従業員の健康管理者たる経営者が、健康管理を経営課題として戦略的に実践するものであるからです。

医療機関における健康経営の取り組み

1.医療機関のおける健康経営

「健康経営」という言葉をよく耳にするかと思います。健康経営は企業が中心となって行うもので、医療機関や施設などには関係ないとお思いの方も多いのではないでしょうか。業界業種等に関わらず、従業員を抱える組織にとって、健康経営の取組みには大きなメリットがあります。なぜなら、健康経営には、企業が従業員の健康に配慮することに対して、従業員の健康管理者は経営者であるという考え方があるからです。経営者の指導力の下、健康管理を戦略的に実施することで、従業員は心身共に健康でイキイキと働くことができ、将来的には組織の活性化、企業価値向上、業績向上、労働生産性向上、健康障害防止、ベテラン社員の活躍、優秀な人材獲得や定着率の向上に繋がります。

なお、健康経営の実践には、その取り組みが“経営基盤から現場の施策まで”の様々なレベルで連動・連携していることが重要であり、これは「(1) 経営理念・方針」、「(2) 組織体制」、「(3)制度・施策実行」、「(4) 評価・改善」の4つの取組みに大別されます。そして、健康経営の実践の前提として、労務管理の基礎である「(5) 法令遵守・リスクマネジメント」があり、それら4つの取り組みの基礎をなすものです。

「健康経営評価指標」は、企業の健康経営に向けた取組内容や実行体制を評価するためのストラクチャー(構造)・プロセス(過程)の評価指標と、健康経営の質を評価するためのアウトカム指標からなります。アウトカム指標は主にプレゼンティーイズム ※1・アブセンティーイズム ※2 という企業従業員の生産性向上に資するアウトカムが中心となります。この「アブセンティーイズム」および「プレゼンティーイズム」によって把握できる生産性を改善・向上していく上では、影響因子となりえる健康関連指標である「身体的指標」、「生活習慣指標」、「心理的指標」や、組織効果としてのワーク・エンゲイジメントの状況を把握していくことが重要となります。

<図表>健康経営度調査におけるフレームワークと健康経営評価指標との関係

 

健康経営度調査におけるフレームワークと健康経営評価指標との関係
出典:企業の「健康経営」ガイドブック~連携・協働による健康づくりのススメ~(改訂第1版) 経済産業省 商務情報政策局 ヘルスケア産業課

※1 欠勤や早退などで職場に出勤せず、業務につけないことを指します。また、それによる労働パフォーマンスの低下も含みます。さらに踏み込んでいうと、病欠などによる労働者の常習的、長期的な欠勤を指す場合もあります。

※2 出勤しているのに心身の不調により十分なパフォーマンスが発揮できず、業務遂行能力や生産性が落ちてしまう状態のことをいいます。

 

健康経営に係る各種顕彰制度

経済産業省や厚生労働省が健康経営に係る各種顕彰制度を推進することで、優良な健康経営に取り組む法人が「見える化」され、社会的な評価・認知が高まりつつあります。

その一つ、日本健康会議による健康経営優良法人認定制度の2018年12月現在の認定状況は以下のとおりです。

健康経営銘柄:24社
健康経営優良法人【大規模法人部門】(ホワイト500):235法人
健康経営優良法人【中小規模法人部門】95法人

なお、総計541法人中、医療法人10、社会福祉法人2の下記が選定されています。

(医療法人)
社会医療法人共愛会(福岡県)、医療法人鴻池会(奈良県)、社会医療法人仁寿会(島根県)、医療法人せいおう会(東京都)、医療法人生光会(東京都)、医療法人清幸会(広島県)、社会医療法人董仙会(石川県)、医療法人同友会(東京都)、特定医療法人博愛会(福岡県)、医療法人美心会(群馬県)

(社会福祉法人)
社会福祉法人旭生会(鹿児島県)、社会福祉法人聖隷福祉事業団(静岡県)

*は2年連続選定

医療機関では、ヘルス・リテラシーが高い従業員が多く、他業種に比べて、保健事業、生活習慣病予防等への専門職介入といった内部職員の利活用などが実施しやすい環境にあります。また、健康経営では保健データや医療データを収集し、現状把握、分析、課題把握、対策、効果測定を行うことが求められていますが、医療機関には保健データや医療データを自ら分析等を行う人材が多いことから、他業種と比較して、導入や取り掛かりの敷居が低いことが言われています。

健康経営のモニタリングの指標として、アブセンティーズムとプレゼンティーズムがよく取り上げられます。雪の聖母健康保険組合の事例では、アブセンティーズムコストが全体の約4%であるのに対し、相対的プレゼンティーズムコストは約80%という結果が出ており、プレゼンティーズムコストをいかに抑制するかが、今後の課題と捉えられています。

 

<図表>雪の聖母健康保険組合の事例

出所:「コラボヘルスガイドライン」厚生労働省(平成29年7月)
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