調査レポート

自動車部品サプライヤーのグローバル動向

主要3市場における、トレンドおよび動向に関する考察(2022年第1四半期)

CO₂排出量の削減要請、パンデミック、半導体供給の逼迫、さらには、ロシアのウクライナ侵攻等、絶え間ない外部環境変化は、自動車部品サプライヤー各社における喫緊の課題となっている。一方で、その濃淡は地域別に異なり、求められる施策も当然に異なるといえよう。本レポートでは、当社グループのグローバルでの知見を活用し、主要地域別に自動車部品サプライヤー各社への示唆を提示することを試みる。

喫緊の課題

半導体逼迫

半導体供給の逼迫は、コロナ禍以降さらに厳しくなっている。周知のとおり、自動車OEMでは半導体在庫が一気に枯渇し、2022年6月現在も解消には至っていない。半導体在庫の大部分が、利幅の大きい高級・大型車セグメントに振り向けられ、結果として、A/Bセグメントの車両生産は大きく減少することとなった。半導体大手の増産計画はハイエンド向け(主として電子デバイス用途)が依然として主流であり、自動車向けローエンド製品の供給回復は2023年まで待つ必要がありそうだ。

CO₂排出規制

世界的に2035年くらいまでに内燃機関車が段階的に「代替されていく」ことが既定路線となった。(その規制内容とレベルは国・地域によって大きく異なる。)

ロシアによるウクライナ侵攻

自動車部品サプライヤーの生産拠点の一時閉鎖、および物流の分断により自動車OEMへの納入が滞った。供給側もさることながら、需要減少も顕著であり、2030年までに、累計2,500万台減(※侵攻以前との比較。生産台数ベース)と予想される。

構造改革と組織再編

2035年迄に域内の内燃機関車が「代替」されてしまう見込みである欧州では、すでに構造改革・組織再編が始まりつつある。内燃機関関連事業の切り出し、他社への売却といった動きが見られており、ここではプライベートエクイティファンドが重要な役割を果たしている点も特徴である。一方で、カーボンニュートラル/ESG重視の動きが追い風になる事業は、「売り手市場」にあると言えるだろう。

北米においても、電動化のみならず、コネクテッド・自動運転に関連して、製品・技術の垂直統合を目指す動きがみられ、いくつかのM&A事例を既にみることができる。

一方で、アジアの動きは相対的に遅れており、CO₂排出規制が比較的緩やかであることは一つの原因だろう。そうは言えども、構造改革や組織再編の流れを避けることは最早難しく、自動車OEMによる系列サプライヤーの再編事例は、その一例と言えるだろう。

デジタル化

デジタル化の方向性には若干の違いはあるものの、各市場で着実に推進されている。欧州ではGAFAMのメガクラウドセンターにあらゆる業務・データを集約することに一定の躊躇があるものの、サプライチェーン効率化にデジタル化は不可欠という認識が共有され、自動車部品サプライヤーにおける様々な取り組みが見られている。

効率化・自動化が既定路線である北米では、パンデミックを起因とするサプライチェーンの寸断が、その重要性を痛感させ、結果として、スマートファクトリーや全自動化された物流センターの設立といった取り組みが強化されている。

加えて、アジアでは、サプライチェーン上流に位置する自動車部品サプライヤーへのサイバー攻撃を契機に、当該リスクに対する手当が、極めて重要なアジェンダとなりつつある。

ESG

"カーボンニュートラル"という言葉は、自動車部品サプライヤー各社にて極めて重要なアジェンダとなっていることは疑う余地は無いだろう。例えば、ドイツの自動車産業においては、バリューチェーン全体の40%の企業は対策を、自動車OEMも自社要件への準拠の程度を見極められるように動きを始めている。北米では、ESGレポート、CSR報告書、財務報告書等、"カーボンニュートラル"に係る報告書について、投資家、取引先等の利害関係者が比較分析するための、統一した基準づくりが求められている。また、アジアでも、日系OEM3社のEV戦略の発表以降、自動車部品サプライヤーにおける関心が高まりつつある。

"カーボンニュートラル"の実現に向けた工程表の作成、並びに、「数値の見える化」に向けた施策の具体化が、多くの自動車部品サプライヤーの直近の課題となるだろう。

自動車部品サプライヤーのグローバル動向(PDF)

※こちらからダウンロードください

調査レポート[PDF, 1.7MB]
お役に立ちましたか?