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ナレッジ
中長期計画の基本戦略・個別戦略
学校法人における中長期計画の策定(第2回)
学校法人の中長期計画の意義、計画の内容、計画を達成するポイント等について解説する本シリーズの第2回は、ミッションを果たしビジョンを実現するために策定する、主にマーケティング、イノベーションにおいての「基本戦略」「個別戦略」について解説する。
基本戦略
基本戦略とは、誰に(ターゲット)・何を(独自価値・強み)提供するか を定めたものである。ドラッカーによれば(“ドラッカーの遺言”より)経営の本質とは「『成果』を得るために、どんな『強み』を活かして、何をしなければならないのか?」を考え・実践することとしている。その強みを活かすには、ターゲットが明確でなければならない。
取り組み事例①
【少人数教室】【全講義英語】【24時間図書館】の3つの価値を提供している事例
教育システム・教育環境の強みを活かした事例であり、グローバル人材を求める有力企業(東証1部上場ほか)から注目され、卒業生の就職率はほぼ100%となっており、グローバル教育を求める学生(ターゲット)に対して、このような独自価値を提供している。
取り組み事例②
きめ細かな就職支援を実施している事例
就職支援は教育の一環として捉え、学生の高出席率維持(就職ガイダンスや各種対策講座)、負担の軽減(全ての対策講座を受講料無料で実施)、個人指導の徹底(模擬面接・履歴書指導他)、的確な情報提供(昼休みを利用した企業説明会)等、教育効果が高まる工夫をしている。
個別戦略
ドラッカーによれば(“マネジメント 基本と原則 ”より)法人(企業)の目的は、顧客の創造である。そのためには、マーケティングとイノベーションを実践しなければならないとしている。
マーケティング:顧客の欲求からスタートする
イノベーション:新しい価値・満足を顧客に生み出す
※本稿では、顧客=学生・生徒、社会 と位置づけている。
マーケティング戦略
まずよく知られているマーケティングの4Pを学校法人にあてはめてみると次のようになる。
たとえば、無料の公開講座(商品・サービス)に関していえば、SNSで社会人向け授業の様子を発信し(広報・募集促進)、社会人向け専門教育(商品)への関心・応募へ誘導することが考えられる。
4Pの中でも関心が高い広報(募集活動)については、他法人とのちがいを顧客視点でいかにわかりやすく伝えるかがポイントである。そのためには、全教職員が、常に学生視点-自分が学生だったらという視点で考える習慣が重要である。
イノベーション戦略
イノベーションの対象は、教育・研究活動はもちろんであるが、学生支援サービスも重要な対象となる。学ぶ場であり学生支援の場でもある図書館についての事例を紹介したい。
また図書館に関連して、グーグルの創業物語となったスタンフォード大学の図書館の改革事例を紹介する。
ポイントは、問題の再定義(質問の変更)というシンプルな作業を行った点である。
図書館に関するイノベーションの視点としては、学生の閲覧図書の履歴を集計・分類し学生にフィードバック(平均閲覧数等)というサービスも面白い。学生がどれだけ勉強しているかを確認でき、一方で図書館の書籍がどれだけ活用されているかを検証することもできるからである。
教育改革(イノベーション)については、様々な取組みが行われているが、時には、現状の延長線でなく、新たな視点で検討することも必要である。そこで「イノベーションのDNA」を紹介する。
質問力は、スタンフォード大学の事例でもその重要性は認識されているが、たとえば、関連づける力として、理系&文系のコラボ授業や、右脳&左脳の組み合わせ授業などいろいろなバリュエーションが考えられるところなので、検討する価値は大きいと思われる。