事例紹介

「大学支援フォーラムPEAKS」の活動の概要とその意義

日本を「世界で最もイノベーションに適した国」にするために

デロイトトーマツの教育セクターでは、Society5.0の実現に向けた大学を中心としたイノベーション創出促進のための産学官の取組みを支援しています。以下では、2019年5月に設置された「大学支援フォーラムPEAKS」の取組みをご紹介します。

「大学支援フォーラムPEAKS」とは

大学はいかなる国家・時代においても「知の創造」のための中核組織であり、「イノベーション」と密接な関係にある。

日本でも、「統合イノベーション戦略2019」(令和元年6月21日閣議決定)に掲げられている「Society5.0実現に向けたイノベーション・エコシステム」の構築において、大学等の果たす役割に対し非常に大きな期待が寄せられているものの、現実に目を向けてみると、日本の大学は様々な経営上の課題に直面しており、イノベーションの創出に十分な貢献が出来ていないという状況がある。

こうした状況を踏まえ、2019年5月、「大学支援フォーラムPEAKS」が設置された。PEAKSとは、Leaders´ Forum on Promoting the Evolution of Academia for Knowledge Societyの略称である。産業界・アカデミア・政府の3つの部門の文字通りの「PEAKS(=トップ)」が中心となって集まり、強力なコミットのもと図表1に示す3つのゴールを設定し、日本を「世界で最もイノベーションに適した国」にするための具体的な取組みを行っている。これまでも産学連携やイノベーションという観点では、様々な形態で産業界やアカデミアの連携が進められてきた。しかしながら今回のPEAKSがこれまでの取組みと異なる点は、以下の2点に集約される。

  • 産学官の現場のトップが中心メンバーとして参画していること
  • 産学だけではなく「官」も議論に実際に参画し、本当の意味で産学官での取組みとしていること

1点目に関しては、産学双方から上がっていた「トップ同士が話し合う」ことの重要性を反映しているという意味で非常に意義深い。産学連携については、多くのケースで、現場の担当者レベルで産学双方が話し合いながら進めるということが主流である。しかし、思い切った決断を伴う内容を実施するためには、トップコミットメントがより重要であるという考え方を踏まえ、PEAKSのメンバーの中心は、産業界においては経団連企業のCEOであり、アカデミアにおいては国立大学法人を中心とした主要な研究大学の総長・学長といった産学のトップマネジメント層となっている。イノベーション創出のための役割を十分に果たすため、大学の抱える課題の解決は待ったなしの状況にある。トップコミットメントで思い切った決断を行い、産学官で強い連携を取りながら、あるべき姿を実現するための改革を推し進めていくという強い決意が読み取れる。

2点目に関しては、ただ現場の声を拾い上げるだけでなく、改革に向けた具体的な行動を取るために、実際に政策を作る立場にある「官」をオブザーバーではなく、メンバーとして巻き込み、課題を共有しつつ、一緒になってあるべき施策について検討することが出来ているという点で画期的である。PEAKSの取組みでは、毎回、それぞれのテーマに関係する各府省の担当者がメンバーとともにテーブルに着席し、課題感を共有し、議論に参加する。「官」の側から現場の状況に疑問があれば、質問を投げかける。産学官と言われていても、実際は「産学」のみでの連携が進んでいるケースが多いが、実際に改革を進めていくためには、制度を作り上げている「官」が本当の意味で一緒に取組む場を設置することは非常に重要である。

PEAKSはその活動を通じて、産学の現場からの声を拾い上げ、好事例については横展開を図るとともに、課題感を共有し、必要な制度改革についてはポリシーメイカーである政府側のメンバーを含めて具体的な議論を進めており、規制緩和の実現や科学技術基本計画をはじめとした政策にこうした現場の声を反映させる取組みも行っている。
 

図表1 大学支援フォーラムPEAKSの目的

大学支援フォーラムPEAKSの目的
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これまでのPEAKSの活動

PEAKSの活動は、会議体でのディスカッションが中心である。図表2にPEAKSの体制を示す。PEAKSのすべてのメンバーが集まり、好事例の共有や現場の声を拾い上げ、組織としての提言を行うためのディスカッションを行う場である全体会合、PEAKSの意思決定機関である幹事会、そして大学の有する主要な経営上の課題をテーマとして取り上げ、各テーマにおける産学官の現場の責任者が参加し、諸課題の解決のために必要な取組みを具体的に検討するワーキンググループの3つが中心となっている。


図表2 大学支援フォーラムPEAKSの体制

大学支援フォーラムPEAKSの体制
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図表3に、各会議体の目的と2019年度の取組みの概要を示す。

全体会合ではPEAKSの設立および関連した規約等を決定し、幹事会ではその他会議体での取組みに対し随時助言を与え、また議論を総括し制度改革に繋げるための具体的な行動に向けた準備を進めた。また、PEAKS設立の構想時より、関係者より上がっていた「エッジの立ったビジョンを立てて、バックキャスティングで取組みを進めるべきである」という声を反映し、幹事会の直下に設置されたビジョン策定委員会においては、約半年をかけて、PEAKSが目指すべき「ビジョン」案を討議し、幹事会と連携し、PEAKSのビジョンを構築するとともに、このビジョンを実現するために取るべき具体的な行動を「PEAKS10の行動指針」として整理した。


図表3 大学支援フォーラムPEAKSの各会議体における2019年度の取組みの概要

大学支援フォーラムPEAKSの各会議体における2019年度の取組みの概要
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さらにワーキンググループについては、2019年度の夏以降、産学連携、大学IR(Institutional Research)、財務・経営、評価の4種類が始動し、例えば産学連携については、「産学連携イノベーションの推進」や「博士人材育成、活用」、「大学発ベンチャー、企業」などのテーマについて、毎回その分野のスペシャリストを各界から招き、現場視点での討議を行った。

また、大学IRでは、ワーキンググループの主査である北海道大学の長谷山美紀教授が中心となって構築されたIRシステムを参画大学間で横展開し、各大学で導入を進めつつシステムのブラッシュアップを行い、より多くの大学で利用可能な大学共通IRシステムの構築を目指して取組みを進めている。当該システムに関しては、大学の保有する様々なデータを分析し、大学の持つリソースの特性を共通の形式で分かりやすく提示することができるため、大学経営に活用することはもちろん、例えば各大学のもつ研究分野の強みや研究シーズを把握するという意味では、産学連携の相手となる産業界にとっても有益なものとなる可能性が高い。当該ワーキンググループでは、導入した大学共通の資産として、こうしたデータを今後どのように活用していくかという点についても議論が進められているところである。

 

結びに代えて

前項で示した通り、2019年度は設立初年度ながら、PEAKSが目指すべきビジョンとその実現のための行動指針を策定し、また4つのワーキンググループの立ち上げに成功した。取組みはいずれもスタートしたばかりであるが、幹事会等での活動を通じて、大学が持つポテンシャルを十分に発揮するために必要な環境を整備すべく、制度の改革や構築に様々な影響を与えることで寄与している。

設立2年目である2020年度は、昨年度の取組みをより一層充実させつつ、2019年度より準備を進めている海外プログラムや新たなテーマのワーキンググループのスタートをはじめとした新しい取組みについても積極的に行う予定とされている。

産学官による、日本を「世界で最もイノベーションに適した国」 にするためのこうした動きについて、引き続き注目していきたい。

参考資料:

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