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これからの住宅事業のあり方について
住宅の変革期における不動産事業者への処方箋
テクノロジーの発展やコロナ禍の影響によるライフスタイルの変化を受け、住宅のあり方が変化するなかで、老朽化マンションの管理不全が問題になっています。本稿ではこの問題を解決するために、どのような仕組みを構築する必要があるのかについて考察します。
日本では、戦後から長期にわたり、政府によって住宅供給戸数の増加・質の向上が図られてきた。たとえば分譲マンションは1956年に日本で初めて建設されて以来、複数回のマンションブームにより大量供給されてきた。一転して、2000年代に入ってからは人口減少による住宅需要の低下が考慮され、住宅ストックの活用へと住宅政策の方針転換がなされている。
また、昨今ではテクノロジーの発展や、新型コロナウイルス感染拡大の影響によるニューノーマルなライフスタイルの定着を受け、住宅のあり方そのものが過渡期に直面している。例えば、在宅勤務の普及により、住宅のなかに新たにテレワークのための機能が必要とされ始めている。また、賃貸借契約期間にとらわれず、スマートフォン1つで物件探しから入退去までの手続きが行えるなど、住居探しの利便性が向上している。こういったサービスの登場で、住み替えへのハードルが下がったこともあり、住宅は長期間居住するものという前提が覆されつつある。
このような住宅を取り巻く環境のなかで、現在特に問題となっているのは、老朽化したマンションの管理不全である。管理不全に陥る要因としては、所有者や相続人が、空室となったまま保有している中古マンションの経済的な価値を感じず、他者に売却・賃貸しないことや、マンションの改修・建替えなどの合意形成の場に参画しないことが挙げられる。政府も規制緩和や指導などの施策により解決に向けて取り組んでいるものの、日本人の新築住宅信仰が、この問題の解決を難しくしている。
今後、老朽化したマンションの管理不全を防ぐためには、新しいテクノロジーを用いた新たなマンション管理を行うだけでなく、住宅市場における中古マンションの価値やブランドイメージを維持・向上させ、流通を促進する仕組みを構築する必要がある。このような仕組みを構築するためには、デベロッパーや管理会社がキープレイヤーとなる。
本稿では将来を見据えて、分譲・管理、さらにはエリアマネジメントの観点から、生活者に選ばれ続ける経済的価値の高いマンションとなるために求められる対策を考察する。
『これからの住宅事業のあり方について』の目次
- マンション業界の変化と展望
- エリアマネジメントとデジタル化
- 今後のマンションに求められる機能
- 今後のマンション管理に求められる取組み
- グループ収益の最大化に求められる取組み
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