最新動向/市場予測

Real Estate Predictions 2019

A Constructive View on Real Estate(和訳版)

Real Estate Predictions 2019では、デロイト グローバルの不動産セクターチームが中心となり、2019年の不動産業界に影響を与える重要なトピックスについてレポートをまとめている。スマートビルディング、サイバーセキュリティ、コワーキングスペース、ブロックチェーン、不動産テックなどが、今後の不動産業界にもたらしうる変化を予測し、不動産業界の各プレーヤーがどのように向き合っていくべきか具体的な考察を行っている。

本レポートのトピック

1. データ主導のビジネスモデルが不動産を変える

テクノロジーが進歩し、新旧構造物の両方にとってより手頃なものとなり、共同作業プラットフォーム、センサー、スマートデバイスの進化が続く中、ビルが生成するデータの量は飛躍的に増大している。不動産市場の参加者(投資家、資産運用会社、不動産管理会社、テナント)がこうしたデータを有効活用し、ユーザーやオーナーまたは不動産そのものの固有のニーズに焦点を当てたデータ主導のサービスと新たなビジネスモデルを開発すれば、競争上の優位性を獲得し、破壊的影響から逃れることができる。とはいえ、データを最適化してパフォーマンスと収益性の改善につながる知見を生み出せるのは、すべての不動産ステークホルダー(建設事業者、投資家、オーナー、テナント、サービス提供者)が共同で取り組んだ場合に限られる。

2. 不動産におけるデジタルツイン

テクノロジーの普及やスマートビルディングの発展に伴い、不動産企業は物的資産のデジタル化を推進するようになるだろう。それにより、ビルの運用や管理を一元的に集約させて、テナントがどのようにビルを利用しているかリアルタイムなデータを取得することで付加価値の高いサービス提供が可能になったり、ビルのセンサーに基づくデータからコストや稼働停止時間を削減するなど予測的なビルメンテナンスを実行することが可能になるなど、全体的に顧客体験を良いものにすることができる。

3. 産業用不動産:もはや「低成長セクター」ではない

最近まで、産業用不動産市場は不動産業界における「低成長セクター」と見られていた。ところがここ数年で、産業用倉庫と配送センターは企業不動産における最も優良な資産として注目されるようになった。賃貸率が上昇し、リターンは他の主要な企業不動産セクターを上回っているからだ。これはすべて、電子商取引(EC)の台頭によるものである。

4. 不動産における循環型経済

世界中の政府、企業、非政府組織(NGO)が不動産・建設業界における建材使用量の最小化に力を注いでいる。例えばオランダでは近年、建設や改修に要する建材使用量を2030年までに50%の削減を目指すことが合意された。循環型経済を作る上での障壁と機会について考察したい。

5. サイバーセキュリティの課題

広範なテクノロジーの進歩が企業不動産(CRE)の従来のビジネスモデルを転換しようとしている中、オーナーと運営事業者は、サイバー攻撃に対する情報セキュリティやデータ機密性などの新たな形態のリスクに対処する必要がある。例えば、センサーによって実現されるビル管理システムなどに見られるモノのインターネット(IoT)の利用拡大は、CRE企業への攻撃対象領域を広げる可能性がある。すなわち、オーナーと運営事業者およびテナントに財務的および風評的ダメージを引き起こしかねない機密データへのアクセスを増加させる。ここで浮上するのが、CRE企業はサイバーリスクに対処する準備を整えているのかという疑問である。

Real Estate Predictions 2019〔PDF,6MB〕

6. 不動産におけるブロックチェーンは成熟している

ブロックチェーンへのさらなる実践的なアプローチを求められており、不動産業界におけるブロックチェーン・テクノロジーの採用に向け、プライバシー、データのオーナーシップ、国際標準に基づくデータ交換、データ品質の改善といった点で、アプローチを加速する為には多くの課題がある。

7. 不動産マネジメントに柔軟性を持たせる

不動産ビジネスにおける需要は今や、従来の事業運営モデルからより柔軟なソリューションへとシフトしている。技術進歩とデジタル化、持続可能性への要求、ユーザーのライフスタイルの変化のすべてが、不動産戦略マネジメントと価値創造における適応性の向上を促す要因となっている。

8. 仕事の未来は変化している

仕事を取り巻く環境は変化している。あらゆる業界のクライアントは、破壊的要因がもたらす課題や機会に直面している。不動産業界も例外ではなく、破壊的要因が物理的な職場にも同じように大きな影響を及ぼすと考えられており、入居企業、デベロッパー、投資家は、その影響を注意深く考慮すべきである。デロイトは、業務の自動化と置き換えからダイバーシティと世代交代まで主要な破壊的要因を踏まえ、不動産業界が2019年に対応すべき主要なトレンドを4つ特定した。

9. 不動産テック:デジタル不動産を推進する

企業不動産(CRE)関連の企業は、「不動産テック(PropTech)」と呼ばれる比較的最近になって台頭してきた不動産テクノロジー・スタートアップにどう対処すべきか、まだ理解していない。より広範な金融サービス分野の大半がパートナーシップ・メンタリティー(取引先や利害関係者をパートナーとみなす考え方)に移行する中、CRE企業は依然として不動産テックを潜在的な協力相手ではなく、ディスラプター(破壊者)とみなしている。

図:投資家は不動産テックがCREに及ぼす影響の度合いを「ある程度」ないし「大きい」と評価している
10. 都市化と公共交通指向型開発(TOD)の未来

次世代のアーバン・モビリティは世界中の都市にまたとない機会をもたらす。自動運転車、ライドシェアリング・サービス、さらには様々なテクノロジーの導入によって交通エコシステムが変化しようとしており、それに伴って都市の景観も一変しつつある。未来のスマートシティの活動を支えるのは、コネクティビティ、創造的コラボレーション、ネットワーク化された地域社会のレベルアップと、大幅に進化した複雑な交通エコシステムである。

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