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我が国における収益認識基準の開発と不動産業への影響(第1回)

IFRS第15号を適用するための5つのステップ

本稿は第1回として、我が国における収益認識基準の開発にあたってのベースとなる考え方を提供しているIFRS第15号を適用するための5つのステップ(コア原則)の概要を見ていくこととし、不動産業に与える影響は、当該開発の進捗状況を踏まえ適切と判断されるタイミングで今後(順次)解説することとしたい。

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はじめに

 企業会計基準委員会は、第308回委員会(2015年3月20日開催)において国際財務報告基準 第15号「顧客との契約から生じる収益」(以下「IFRS第15号」)を踏まえた我が国における収益認識基準の開発に向けた検討に着手することを決定した。現状、我が国には、企業会計原則における一般的な収益認識の規定および工事契約やソフトウェア取引といった特定領域の収益認識基準は存在するが、包括的な収益認識基準は存在していない。我が国の会計基準を国際的に整合性のあるものとし、より有用な財務情報を提供するとともに、会計基準の体系の整備を図る等の観点から、収益認識基準の開発に向けた検討が着手された訳であり、今後の動向が注目される。
 収益認識基準の開発に向けた検討では、まず、IFRS第15号の十分な理解と会計処理に関する適用上の論点の抽出が行われる予定である。不動産業に与える影響は、当該開発の進捗状況を踏まえ適切と判断されるタイミングで今後(順次)解説することとしたい。本稿は第1回として、我が国における収益認識基準の開発にあたってのベースとなる考え方を提供しているIFRS第15号を適用するための5つのステップ(コア原則)の概要を見ていくこととする。
 なお、国際会計基準審議会は、IFRS第15号の発効日を1年延期して2018年1月1日以後開始する事業年度からとする公開草案を公表しており、我が国における収益認識基準の開発が、IFRS第15号の発効日を念頭に進められる方針が示されるかどうかも大きな関心事のひとつであると言えよう。
また、本文中の意見は執筆者の私見であり、有限責任監査法人トーマツの公式見解ではない。

1. IFRS第15号の適用範囲
 IFRS第15号は、リース、保険商品、金融商品等の他の基準書に含まれるものを除き、すべての顧客との取引に適用される。「顧客」はすべての取引の相手方ではなく、企業の通常の活動のアウトプットである財またはサービスを対価と交換に獲得するために当該企業と契約した当事者である。

2. IFRS第15号のコア原則(5つのステップ)
 IFRS第15号のコア原則は、企業が約束した財またはサービスの顧客への移転を、当該財またはサービスとの交換で権利を得ると見込む対価を反映した金額で収益を認識するものであり、具体的には以下の5つのステップに従って会計処理を行うことになる。

ステップ1            顧客との契約を識別する          
ステップ2  契約における履行義務を識別する
ステップ3  取引価格を算定する
ステップ4 取引価格を契約における履行義務に配分する
ステップ5 企業が履行義務の充足時に(または充足するにつれて)収益を認識する           

3. 【ステップ1】顧客との契約を識別する
 契約とは、強制可能な権利および義務を生じさせる複数の当事者間の合意であり、文書、口頭、企業の取引慣行により含意される場合がある。また、場合によっては複数の契約を結合して1つの契約としての会計処理が要求され、さらに、契約の範囲や価格の変更が行われた場合の取り扱いも定められている。

4. 【ステップ2】契約における履行義務を識別する
履行義務とは、契約に含まれている顧客への財またはサービスを移転する約束であり、契約で明示されている財またはサービスに限らず、取引慣行等により含意されている約束も含まれる可能性がある。従って、契約を慎重に分析・検討し、履行義務を適切に識別する必要がある。
財またはサービスは、顧客がその財またはサービスからの便益を、それ単独でまたは顧客にとって容易に利用可能な他の経済的資源と組み合わせて得ることができ、かつ、その財またはサービスを顧客に移転する約束が契約の中の他の約束と区分して識別できる場合には、別個のものである。

5. 【ステップ3】取引価格を算定する
取引価格とは、約束した財またはサービスの顧客への移転と交換に企業が権利を得ると見込んでいる対価の金額である(第三者のために回収する金額(一部の売上税等)を除く)。取引価格は、固定対価、変動対価(値引き、リベート、返金、インセンティブ等)、または現金以外の対価を含む場合もある。さらに、契約が重大な金融要素を含んでいる場合、貨幣の時間価値の影響を考慮して取引価格を算定する。

6. 【ステップ4】取引価格を契約における履行義務に配分する
ステップ2で識別されたそれぞれの履行義務に対し、ステップ3で算定された取引価格の配分は、契約において約束した別個の財またはサービスのそれぞれの独立販売価格の比率に基づいて行う。契約に記載された価格や定価は独立販売価格である可能性があり(ただし、独立販売価格と推定してはならない)、また、独立販売価格が直接的に観察可能でない場合には、市場の状況等に関する合理的に利用可能なすべての情報を考慮して独立販売価格を合理的に見積もる。

7. 【ステップ5】企業が履行義務の充足時に(または充足するにつれて)収益を認識する
履行義務は、一時点で充足される場合(財の販売に一般的)もあれば、一定の期間にわたり充足される場合(サービスの提供に一般的)もあるため、履行義務がどの時点で充足されるのかを決定する必要がある。企業が履行義務を一定の期間にわたり充足するものでない場合、当該履行義務は一時点で充足される。
履行義務は、約束した財またはサービス(資産)を顧客に移転し、顧客が支配を獲得した時に充足される。従って、企業は、資産に対する支配、すなわち、当該資産の使用を指図し、当該資産からの残りの便益のほとんどすべてを獲得する能力を顧客に移転(顧客が獲得)した時期を判断する。
次の要件のいずれかを満たす場合には、財またはサービスに対する支配を一定の期間にわたり移転するため、一定の期間にわたり収益を認識する。
(a)顧客が、企業の履行によって提供される便益を、企業の履行と同時に消費する
(b)企業の履行が資産を創出または増価させ、顧客が当該資産の創出または増価につれてそれを支配する
(c)企業の履行が、企業が他に転用できる資産を創出せず、かつ、企業が現在までに完了した履行に対する強制可能な権利を有する
また、一定の期間にわたり充足される履行義務について、企業は、当該履行義務の完全な充足に向けての進捗度の適切な測定方法(アウトプット法、インプット法)を決定し、収益を一定の期間にわたり認識する。
一時点で充足される履行義務については、上述の資産に対する支配の要件を考慮するとともに、支配の移転の指標、例えば、支配企業が支払いを受ける現在の権利を有していること、顧客が資産の法的所有権を有してること、企業が資産の物理的占有を移転したこと等も考慮して、収益認識時点を決定する。

以上

参考文献・参考資料
国際財務報告基準 第15号「顧客との契約から生じる収益」(国際会計基準審議会)
企業会計委員会議事資料 第308回、第311回、第312回(企業会計基準委員会)
 

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