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【寄稿】 解説・コーポレートガバナンス・コード改訂/コード改訂への企業の対応
一般社団法人 日本IR協議会 機関誌『IR-COM 2019年1-2月号』掲載
日本IR協議会が発行する機関誌『IR-COM』の2019年1-2月号に有限責任監査法人トーマツ パートナーの杉山 雅彦による寄稿記事が掲載されました。
以下、『IR-COM 2019年1-2月号』に掲載された記事の転載です。一般社団法人 日本IR協議会より当該記事の転載の許諾を得ています。
2018年6月のコーポレートガバナンス・コードが改訂と同時に、金融庁から改訂を対象とした投資家と企業の対話ガイドラインが公表された。改訂コードの附属文書の位置づけである。機関投資家と企業の対応において、重点的に議論することが期待される事項をとりまとめたもので、コード改訂の対する対応策を検討する上で参考になると思われる。
ガイドラインにおける企業の対応でポイントとなるのは次の通りである。以下、留意すべき点について説明する。
改訂に伴う企業の実務対応
「1.経営環境の変化に対応した経営判断」「2.投資戦略・財務管理の方針」に対応するためには、まず自社の資本コストを適切に把握しなければならない。そのうえで事業環境におけるリスク評価を実施し、事業ポートフォリオの組替えが検討できる体制を構築する必要がある。
具体的な対応策としては、企業の管理会計制度を高度化したうえで、事業毎の財政状態と損益状況を把握する仕組みを構築することである。
また、財務情報のみならず、企業内外の非財務情報を適時に識別・評価したうえで、リスク評価を実施する仕組みを構築すべきである。
「3.CEOの選解任・取締役会の機能発揮等」に対応するためには、監査役会設置会社であれば、改訂前は任意機関であった独立指名委員会と報酬委員会を設置することが必須となる。よって上場企業のうち、これら委員会を設置していない企業は具体的な対応が必要となるが、機関設計は時間を要するためすぐにでも準備を始めたほうがよいだろう。
また、CEOの後継者計画についても、具体的な計画を策定出来ている上場会社は多くないと思われるため、計画策定のための準備を早急に始めるべきであろう。ダイバーシティの観点から女性取締役の選任は今後必須となるため、CEOの後継者計画のみならず、女性を含めた幹部候補生の育成・登用計画も併せて検討することが重要である。
独立社外取締役の質および量の双方の観点から、役割期待は今後より高まると思われる。最低2名を遵守するだけでは不十分で、独立社外取締役の数、および資質について企業として説明できることが今後重視される。監査役については、資質・経験・能力について企業としての説明責任が増すことになる。
政策保有株式については、保有の適否と保有目的について、より一層の説明が求められることになるため、単なる説明理由だけを考えるのではなく、さらなる縮減に向けての具体的な活動を行うことが重要になってくるであろう。
投資家と企業の対話ガイドラインの主な内容
1.経営環境の変化に対応した経営判断 |
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2.投資戦略・財務管理の方針 |
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3.CEOの選解任・取締役会の機能発揮等 |
(CEOの選解任・育成等)
(経営陣の報酬決定)
(取締役会の機能発揮)
(独立社外取締役の選任・機能発揮)
(監査役の選任・機能発揮)
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(4.政策保有株式、5.アセットオーナーの部分を除く)