最新動向/市場予測

企業リスクに影響を与える昨今の事象について

2021年7月16日

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)や、政治、経済、社会情勢などの企業活動に影響を与える事象に関して、北米、中南米、欧州、中東、アフリカ、アジア・オセアニアの各地域ごとに、最新状況を踏まえ考察します。

1 エグゼクティブサマリー

  • COVID-19の感染拡大は継続しており、2021年6月25日には、世界の感染者数は1億8000万人を超えた。地域別では、アフリカの感染拡大が顕著であり、また、変異株の拡大も脅威である。特に「デルタ」は欧州と東南アジアで猛威をふるっており、インドネシアにおいては在留邦人が数多く死亡する事態ともなっている。
  • 7月5日、ナイル川上流のダムにエチオピアが貯水を開始したことにより、今後、紛争が長期化・先鋭化する兆しとなっている。今後水資源に関わる資源紛争は世界的に頻発することが危惧される。
  • イランは、核開発を進める姿勢を鮮明にしており、今後イランを取り巻く情勢が急激に緊張化することが憂慮される。

 

2 COVID-19

世界のCOVID-19への対応状況

  • WHOおよびJohns Hopkins大学等の最新のデータによると、世界で確認された感染者は221の国・地域で2021年6月25日に1億8000万人を突破し、世界的な感染拡大が続いている。また、死者は7月17日に400万人を超え世界に衝撃を与えている。

北米におけるCOVID-19への対応状況

  • 世界最大の感染国となっている米国では、ワクチン接種が進んだため各地で経済活動が再開されている。しかし変異型の感染が広がっており、ほとんどの州で新規感染者が増加に転じていることから楽観視はできない。

欧州におけるCOVID-19への対応状況

  • WHOは、2021年7月1日、「10週間続いた欧州での新規感染者数の減少が終わり、市民や当局が警戒を怠れば第三波は避けられない」との見解を示した。英国では、直近の新規感染者は3万人を超えているが、政府は新規感染者数よりも重症者数を重視しているため7月19日から各種規制の撤廃を予定している。しかしロンドン市はこれに異議を唱えており、英国内でも意見の一致はみられない。従来よりも感染力が強いと言われるインド由来の「デルタ」が欧州全域で猛威を振るっており、ECDCは6月23日、このままの状況が続けば、EUでは8月末に新規感染者の9割が「デルタ」になると発表している。この感染拡大の要因としては欧州で6月からサッカーヨーロッパ選手権が開催されていたことが指摘されており、今月から開催される東京オリンピック・パラリンピックへも示唆を与えている。
  • EUは5月19日、夏の観光シーズンに向けての合意内容を発表した。ワクチン接種を完了していれば6月15日からEU域内での移動は自由。7月1日からは基準を満たした国でワクチン接種を完了したEU域外の観光客も受け入れるとのことである。

中南米におけるCOVID-19への対応状況

  • 中南米では所得格差が激しいため、貧困層を中心とした感染拡大の収束の兆しが見えない。さらに変異型も猛威を振るっており今後の世界の感染拡大の核になっていると言える。ブラジルでは感染拡大に歯止めがかからず、2021年7月10日には累計感染者数が1900万人を超え、世界第3位である。
  • アルゼンチン、コロンビア、ペルー、チリ、メキシコなどでも累計感染者数が100万人を超えており、ペルー由来の変異株「ラムダ」が猛威を振るっていることが確認され今後が懸念される。

中東におけるCOVID-19への対応状況

  • 中東地域でもイランとトルコが中心となって感染拡大が続いている。イランでは2021年7月14日に感染者数が累計で340万人を超え、トルコも7月15日に累計感染者数が550万人を超えた。

アフリカにおけるCOVID-19への対応状況

  • WHOは7月9日「アフリカでは、前週の1週間あたりの新規感染者数がこれまでで最も多く、第三波の感染拡大が続いている」と発表した、またアフリカ連合(AU)が「大陸全体で感染者数は580万人に上っている」と報告した。サハラ以南における感染が顕著である。そのためWHOはアフリカへのワクチン供給を各国に要請しているが、現状の接種率は2%程度に留まっている。アフリカ大陸で最大の感染国南アフリカは、直近16日間で30万人以上の新規感染者が出ており、累計感染者数が220万人を超えた。感染は貧しい黒人が多く住む地域で拡大しており、変異したウィルスの感染力と相まって、今後も感染拡大傾向が続くと懸念される。
  • 南アフリカでの感染拡大により、周辺国、特にモザンビーク、ナミビアへの感染が拡大しており、医療水準がかなり低いので死亡率が極めて高いことが懸念される。

アジア・オセアニアにおけるCOVID-19への対応状況

  • これまで比較的感染が抑制されていたとされる東南アジアの国々で6月に入り感染拡大が顕在化している。特に東南アジアで最大の人口を有するインドネシアでは、6月25日以降感染が急激に拡大して深刻な状況となっている。ジョコ大統領は7月1日、緊急措置の発動を発表したが抑えることは全くできず、医療体制は事実上崩壊している。外務省は、7月12日にこれまでにインドネシアにおいて在留邦人が14名も死亡したと発表した。現在在留邦人の一部が日本の航空会社による特別便で帰国している。なお在インドネシア日本大使館のホームページでは感染状況や医療機関に関する情報も提供されているので参照されたい。タイ、マレーシア、ベトナム等でも感染が拡大している。そのため日本政府は6月15日、これら4か国(インドネシア、タイ、マレーシア、ベトナム)にワクチンの提供を決定した。マレーシアとインドネシアの感染拡大の原因はラマダンがあげられる。

COVID-19ウィルスの変異型の発生

  • WHOは2020年12月14日以降COVID-19ウィルスの変異型について逐次報告書を出している。WHOは2021年5月31日、特定国への差別的な扱いを防ぐため、主な変異ウィルスについてギリシャ文字による呼称を使うよう各国の政府などに奨励した。それにより英国由来の変異株は「アルファ」南アフリカ由来は「ベータ」ブラジル由来は「ガンマ」インド由来は「デルタ」となっている。報告書によれば6月27日現在、「アルファ」が確認された国や地域は172となっており、「ベータ」は120、「ガンマ」は72、「デルタ」は96と更新され、変異株が世界各地で拡大していることがわかる。
  • ウィルスは日々確実に進化し、それに伴い変異していくので、今後も世界的に変異型の発生は必定である。新たな変異は日本でも発生する可能性がある。
  • WHOのベトナム事務所は、5月29日、「アルファ」と「デルタ」の特徴を併せ持つ新たな変異株が確認されたと発表している。
  • WHOは6月14日、ペルー由来の「ラムダ」を注目すべき変異株に指定した。「ラムダ」は南米中心に、米国、ドイツ、スペイン、イスラエル等世界29か国で確認されている。感染率と重症化率が従来型よりも高いとされており、今後各種変異型が世界的に感染拡大の核になる可能性があるので留意が必要である。

新興国におけるCOVID-19感染者数の増加

  • COVID-19の感染者数が急激に増加している国は新興国に多い。その背景としては、①これらの国は近年のグローバル化の進展に伴い世界中から投資を集めているため、人の行き来が活発化している。②人口が多く場所によっては人口密度が非常に高く、衛生状態も一般的に悪い。③所得格差が非常に大きいため通常の医療サービスを受けられない貧民層が多い。④財政難の国が多く、経済活動を止めた場合の補償などが出来ないため、経済活動の再開を急ぐ傾向にある。以上このようなことから新興国では感染が広がりやすい環境にあると言える。現時点で確認感染者数が100万人以上の国は29か国あるが、そのうち新興国(BRICs,VISTA、NEXT11、ASEAN等24か国)が11か国(インド、ブラジル、ロシア、トルコ、アルゼンチン、メキシコ、イラン、南アフリカ、インドネシア、フィリピン、バングラデシュ)を占めている。

世界各国におけるワクチン開発および接種状況と経済の再開

  • 2021年7月15日現在、ワクチン接種は欧米を中心に進められており、国別では非常に高い接種率の国もある。例えばOur world in dataによれば、規定回数のワクチン接種を終了した国民の割合ではイスラエルが最も高く、約61%となっている。米国は約48%、英国は約52%となっている。日本は約20%と急速に進んでいる。


※COVID-19の感染者数はWHOおよびJohns Hopkins Universityの資料に基づく
 

3 グローバル全体の動き

最低法人税率に関する大筋合意(G7サミット)

  • G7サミットに先立つ財務相・中央銀行総裁会議において、法人税率引き下げ競争に歯止めをかけるため、各国の法人税の最低税率を15%にすることが大筋合意され、その後G7サミットで追認された。それを受けてOECDも7月1日に国際的な法人税改革に関する交渉会合を開き、同様の結果を得た。大筋合意した。
  • 7月10日、イタリアのベネチアで開かれていたG20財務相・中央銀行総裁会議においてもG7サミットの決定を追認した。またそれに加えてG20では、巨大IT企業の税逃れを防ぐための「デジタル課税」を世界的に課すことでも一致し、10月の次回財務相会議での最終決着を目指すことが明確となった。

最低法人税率に関する大筋合意(G7サミット)に関する考察

  • 日本企業は法人税が極端に低い国にはそれほど進出していないが、東南アジアにおいて法人税の減免などの恩典を受けている場合が多いため、今後方針・戦略の立て直しが必要になると思われる。

 

4 北米

【社会】

サイバーテロ

  • 米パイプライン最大手企業のパイプラインが2021年5月7日から操業を一時停止せざるを得ない状況になった。報道等によると、海外のハッカー集団からサイバーテロ(身代金を支払わなければデータを使えなくしたり公表したりするというランサムウェアによるテロ)を受けたとのことである。これにより同パイプラインは約1週間操業を停止した。同社は身代金を支払い、操業を再開したと報じられている。また、5月31日、ブラジルの世界的な食肉加工会社はランサムウェアのテロを受け、主要工場の操業を停止し、6月9日に身代金を支払ったと発表した。
  • 米国のIT企業は7月2日、自社が提供する企業向けソフトが「ランサムウェア」のサイバー攻撃を受け、最大1500社が被害を受けていると発表した。

サイバーテロに関する考察

  • このような犯罪において身代金の支払いが公表されることは、今後このようなテロの発生を助長するということである。今までの身代金を目的としたテロにおいては誘拐が一般的であったが、今回のようなシステムを対象とするテロは新たな形態であり、今後世界的に増加していくことが憂慮される。ちなみに誘拐においては中南米を中心に事前に誘拐の対象にならないという立場を買うこともあり(誘拐の免罪符)今後サイバーテロにおいても同様の免罪符の売りつけという手法が広がることが懸念される。これまでのオリンピックでは開催国や組織委員会および協賛企業に対するサイバーテロが数多く発生した。

 

5 中東

【政治】

イスラエルとイランの関係

  • イスラエルの安全保障上の最大の懸念はイランによる核保有である。イランは宿敵であるイスラエルが潜在的な核保有国であるため欧米各国から大きな批判を受けているにも関わらず、約10年前から核開発を進めている。そのためイスラエルとしてはどのような手段を用いても、イランの核開発を阻止したいと考えている。以前イランの核施設で複数の火災や爆発が発生した。一部メディアは、その背景にイスラエルが関与しているという報道をしたが、これに対してイスラエルは、肯定も否定もしないという姿勢で臨んだ。
  • イラン政府は2021年4月11日、テヘラン南部ナタンズの核開発施設がサイバー攻撃を受けたと発表した。その後イスラエルの現地報道機関は、この事件はイスラエルの諜報機関が行ったものであると報じた。これに対してイスラエル政府の公式発表はないが、イラン政府はイスラエルへの報復を示唆している。イランが4月14日オマーン沖でイスラエル船籍の船を攻撃したと報じられた。今後武力衝突等に発展することが危惧される。
  • 現在、オーストリアのウィーンを中心にイラン核合意の復活についてバイデン政権とイランが交渉を続けている。
  • 国際原子力機関(IAEA)は7月6日、イランが最大20%濃縮の金属ウランを製造する計画を通告してきたと発表した。金属ウランは核兵器に使用される恐れがあるため、これに対して米国等の国際社会が反発しており、その中でも特にイスラエルは危機感を強めていて、今後状況によっては武力行使等の強硬策に出ることも否定できない。

イスラエルとアラブ諸国の関係

  • 昨年後半、トランプ政権時の米国の仲介により、UAE、バハレーン、モロッコ各国とイスラエルの国交樹立の合意が成立したと米国が発表した。
  • これによりメディアの中には中東和平が推進されるとの憶測も流れたが、現実的にはイラン封じ込め政策の一環に過ぎないと言える。
  • 2020年11月23日イスラエルの複数のメディアが、ネタニヤフ首相が22日にイスラム教の盟主であるサウジアラビを極秘に訪れ、ムハンマド皇太子と会談したと一斉に報じた。真偽は不明であるが、イスラエルとサウジアラビアの国交樹立に向けた動きはイスラエルの新政権下でも続くと思われる。

イスラエルとアラブ諸国の関係に関する考察

  • 上記のようにイラン封じ込めのための米国の仲介によるイスラエルとアラブ諸国との国交樹立の動きは今後も拡大するものとみられる。
  • イスラエルとイランの間は、偶発的な出来事により軍事衝突の可能性が高くなっていると言える。
  • バイデン政権下では中東情勢が和平に向かうと見ている専門家も少なくないが、米国国務省の中には保守派が数多くおり、イランに対して強硬派が少なくないため、現在の対中東政策が大きく変化しないものとみられ、中東情勢の緊張化は続くと考えられる。

 

6 アフリカ

【政治】

エチオピアによるナイル川上流の貯水

  • エジプト政府は7月5日、エチオピア政府から、「ナイル川上流にある巨大発電用ダムで貯水を再開した」との通告を受けたと発表した。これに対してエジプト政府は強く反発しており、紛争に発展する可能性が非常に高い。以前からこの件は問題になっており、エジプトが米国に仲介を依頼して、2019年11月にトランプ大統領がエジプト、スーダン、エチオピアの各外相をワシントンに呼び、協議をしたが物別れに終わっている。その際にトランプ大統領がエジプトによる武力行使の可能性に言及したことが話題になった。

エチオピアによるナイル川上流の貯水に関する考察

  • 現在エチオピアは工業化が進展しており電力需要が急激に拡大している。そのためエチオピアは約10年前からこのダムの建設を計画してきた。また、エチオピア、エジプト両国共に2020年に人口が1億人を超え、今後も増え続けていくことが予想される。エジプトは国内の水需要の95%をナイル川に依存しており、ナイル川の水の確保はエジプトにとって死活問題である。一方のエチオピアも長い間にわたりこのダムの建設が悲願であることから、両国ともなかなか譲歩できず、紛争の長期化・先鋭化の可能性が否定できない。

今後の天然資源を巡る争いに関する考察

  • 天然資源を巡っては、昔からアフリカや中東で国家間紛争、内戦等が発生している。今までは石油等の鉱物資源をめぐる争いが多かったが、今後は水資源をめぐっての争いが主流になる可能性が高い。
  • 世界的な人口増加に伴い、水資源に対する需要が拡大しており、世界的に見ても水資源は重要な問題になっている。国際河川で流域が複数の国にわたり、しかも地政学リスクの高いところがこのような紛争の起きやすい地域と言える。今後、ナイル川以外ではアラル海流域、ガンジス川、ユーフラテス川等の水資源を巡って紛争が起こるリスクがある。

 

<世界各地の水紛争の例>

世界各地の水紛争の例
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出典:国土交通省ウェブサイトhttps://www.mlit.go.jp/mizukokudo/mizsei/mizukokudo_mizsei_tk2_000021.html

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新型コロナウイルスに対する当社の対応について(4月7日更新)

 

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