最新動向/市場予測

企業リスクに影響を与える昨今の事象について

2024年4月5日

政治、経済、社会情勢などの企業活動に影響を与える事象に関して、北米、中南米、欧州、中東、アフリカ、アジア・オセアニアの各地域ごとに、最新状況を踏まえ考察します。

エグゼクティブサマリー

  • イスラエルとハマスの戦闘は、まだ収束の兆しが見えてこないが、米国はイスラエル寄りの姿勢から転換しつつあり、今後イスラエルの姿勢の変化が期待される。
  • ミャンマーでは軍政側の劣勢が顕著となっており、今後の更なる混乱が危惧される。
  • 台湾で発生した地震が、先進半導体の供給にどのような影響を与えるのか憂慮される。

 

1 グローバル全体の動き

【経済】
エネルギー価格・穀物価格高騰の影響
  • 世界的なLNG価格の高騰と2022年2月のロシアによるウクライナ侵攻により、2022年3月前半にNYの先物市場の代表的な原油(WTI)は125ドル/バーレルまで高騰したが、産油国の増産や、中国を筆頭に世界的な需要の減少予測から下落傾向となり、2023年3月には70ドル前後となった。その後OPECとロシアなど石油産油国でつくる「OPECプラス」が度々減産等で合意したため、徐々にあがり、9月後半には90ドル前後となった。10月以降、米国の金融引き締めの長期化や世界的な景気停滞懸念等により、総じて弱含みとなり、70ドル台で推移していたが、2024年4月に入り、中東情勢の緊迫化に伴い約5ヶ月ぶりに87ドル台まで上昇した。

 

2 中南米

【政治】
ベネズエラ大統領選挙
  • 反米左派政権による独裁が続くベネズエラでは、7月28日に大統領選挙が実施される。現職のマドゥーロ大統領の立候補は決まったが、有力な野党候補の立候補が禁止され、公正な選挙の実施が危惧されている。バイデン米大統領が自由な選挙の実施を条件に経済制裁解除を示唆しており、これが選挙にどのような影響を与えるかが注目される。
ハイチ治安悪化
  • ハイチでは2月以降、首相に退陣を求めるギャング団による政府機関等への襲撃が激化している。3月2日にはギャング団が国内最大規模の刑務所2カ所を襲撃し、およそ4000人の囚人が脱獄するなど首都ポルトープランスを中心に無政府状態に近い状況となっている。ハイチ政府は非常事態を宣言し、3月11日にはアンリ首相が辞意を表明したが、収束の兆しは見えない。国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)は4月4日、これまでに殺害された住民は1500人を超えたと発表した。先行きが見通せず周辺国への波及が危惧される。

 

3 欧州

【政治】
ロシア大統領選挙
  • 3月15日~17日に実施されたロシア大統領選挙について、ロシア中央選挙管理委員会は3月18日、現職のプーチン大統領が87.3%の得票で当選したと発表した。2000年の初当選から数えて5回目の当選となり、任期は2030年までの6年間である。国営メディアによれば、投票率は77.44%で、旧ソビエト連邦崩壊以降のロシア大統領選挙で得票率、投票率いずれも最も高くなったとのことである。
ロシア・モスクワにおける大規模テロ
  • 大統領選挙直後の3月22日、モスクワ郊外にあるコンサートホールで銃が乱射されるテロ事件が発生し、144人が死亡、551人以上が負傷した。事件後イスラム国(IS)の一派が犯行声明を発したが、プーチン大統領は、実行犯4人を含む11人がウクライナ国境近くで拘束されたことから、このテロ事件にはウクライナが関与しているのではと、仄めかしている。しかしウクライナをはじめとして欧米諸国はこれを強く否定している。なおこれは、2000年以降ロシアで発生したテロ事件の中で、最大の犠牲者数となった。

 

4 中東

【政治】
イスラエル・ガザ地区でのハマスによる攻撃の影響
  • 2023年10月7日、イスラエルのガザ地区を実効支配するパレスチナ武装勢力ハマスがイスラエルに向け、ロケット弾数千発を発射し、武装兵をイスラエルに侵入させた。現在イスラエル軍とハマスは交戦状態となっている。イスラエル政府は徹底的な反撃・報復を表明しており、ガザ地区への空爆を続けるとともに「完全に包囲する」として圧力を強め、過去50年で最大規模・30万人の予備役を招集したと発表した。
  • イスラエル軍は10月7日以降連日ガザ地区に壮絶な空爆を続け、10月28日にネタニヤフ首相が「これは戦争の第二段階だ」と発言し、事実上地上戦が開始された。11月24日には、カタール、エジプト等の仲介により、イスラエルとハマス間で人質の解放や戦闘休止等が合意された。合意された戦闘休止期間は4日だったが、その後2回延長された。しかしイスラエル軍は12月1日、ガザ地区でのハマスへの軍事作戦を再開したと発表した。
  • その後も戦闘が激化しており、ネタニヤフ首相は12月10日、閣議で「ハマスのせん滅、人質の解放などの目標達成のため、ガザ北部と南部で戦闘をさらに強化し続行する」と改めて強調した。
  • イスラエルは1月2日、レバノンのベイルートでハマスの高官が殺害されたと発表した。これに対し、ハマスは「テロ行為」だと非難し、イスラエルに「罰」を与えると警告した。
  • ハマスとの戦闘が始まって100日となる1月14日、ネタニヤフ首相は演説し「目標を達成し、完全に勝利するまで戦いを続ける」と述べ、ガザ地区での軍事作戦を続ける考えを改めて示した。
  • イスラエルがガザ地区南部を激しく攻撃していることからガザ地区での戦闘が激化し、犠牲者が増加する事態(ガザ地区保健当局は2月末、ガザ地区での死者が30000人近くに達したと発表した)に国際社会では停戦に向けた動きが活発化している。また、イスラエルがガザ地区で多くの避難民がいるラファを本格的に攻撃する構えを見せていることに国際社会からは大きな危惧と懸念が示されている。トルコのエルドアン大統領は2月14日、エジプト・カイロでシシ大統領と会談し、イスラエルとハマスの停戦の必要性に合意した。
  • イスラエルとハマスの停戦に向けた交渉がエジプト、カタール等が仲介し進められており、3月10日から始まるイスラム教の断食月(ラマダン)前に何らかの合意がなされるとの見方もされていた。
  • 国連安保理は3月25日、ガザ地区での即時停戦を求める決議案を可決した。15ヶ国中14ヶ国が賛成し、これまで拒否権を行使していた米国が方針を変え、棄権した。これに対しイスラエルは米国に対する批判を表明したが、バイデン米大統領は4月4日、イスラエルのネタニヤフ首相と電話で協議し、「4月1日に発生したイスラエル軍によるガザ地区への攻撃で、食糧支援を行っていた外国人NGO職員ら7人が死亡した件は容認できない。米国による支援継続はイスラエルの対応次第」と伝え、民間人などを保護するための具体策を要求した。これを受け、イスラエル戦時内閣は4月5日、ガザ地区への人道支援物資の搬入拡大に向けた緊急措置をとると決定し、2023年10月の戦闘開始時に閉鎖されたガザ北部にあるエレズ検問所などを解放することとなった。
シリア・ダマスカスのイラン大使館攻撃事件
  • 4月1日、シリアの首都ダマスカスにあるイラン大使館領事部の建物がミサイル攻撃を受け、軍事精鋭部隊幹部らが殺害された。イランは、イスラエルによる攻撃だとして、報復する構えを見せているとのこと。今後の事態の拡大が危惧される。

 

5 アジア・オセアニア

【政治】
ミャンマーにおける少数民族武装勢力と国軍の戦闘激化
  • ミャンマーでは、2023年10月27日に3つの少数民族の武装勢力が東部シャン州で一斉に攻撃を開始し、全土に拡大している。少数民族武装勢力側はこれまでに国軍側の300か所以上の拠点を占領し、国軍兵士も数多く投降するなど、2021年2月のクーデター以降、国軍にとっては最悪の状況となっている。2023年11月8日には大統領が「軍が事態に適切に対応しないのであれば、国家が分裂する危険性がある」とまで発言するなど、長期化する国軍支配が揺らぐ可能性も否定できない状況である。
  • 中国軍は2023年11月25日、ミャンマーとの国境付近で軍事演習を実施した。また2023年11月28日には在ミャンマー中国大使館が、最大都市ヤンゴン南部のティラワ港に中国海軍のミサイル駆逐艦やフリゲート艦が入港したと発表するなど、混乱が長期化した場合、中国の介入もあり得る。
  • 国軍は2023年12月11日、中国の仲介により、少数民族武装集団と会談を行ったと発表した。しかし武装集団側の攻撃は激化しており、3つの少数民族の武装集団で構成する「3兄弟連盟」も2023年12月13日、「クーデターで政権を奪取した軍事政権を打倒する」という決意を改めて示した。
  • 軍部と少数民族武装集団との戦闘は続いており、中国の一部メディアは1月3日、ミャンマーと国境を接する中国雲南省で国境を越えて砲弾が着弾し5人が負傷したと報じた。
  • その後も軍部と少数民族武装組織の戦闘は激化しており、ミャンマー北東部では国軍の支配力が低下して複数の拠点から撤退した。中国の仲介で1月12日に停戦を発表した後も戦闘は続いており、国軍と中国の関係悪化も危惧される。
  • 軍部は1月31日、治安の悪化などを理由に、クーデター後続いている非常事態宣言を今年8月まで延長すると発表した。民政移管に向けた選挙が実施される見込みは全く立たない状況である。一部報道では、少数民族武装組織が国軍拠点500か所を占拠し、国土の7割に両軍の戦闘が広がっているとされ、国軍側は劣勢であると言われている。
  • 国軍は2月10日、国民に兵役の義務を課す徴兵を実施すると発表した。徴兵は18歳以上が対象で、医師などの専門職以外では男性は35歳、女性は27歳までとなる。国軍は劣勢が続き、多数の兵士が投降するなど、士気が低下していると言われており、強制的に動員する徴兵の必要性に迫られたと見られる。
  • ミャンマー東部での国軍と少数民族武装グループとの戦闘は続いており、内戦の様相を呈している。軍政権側の暫定大統領は3月9日、「東部シャン州で勃発した戦闘を軍政権側が制圧できなければ、国が分裂する可能性がある」と述べる等、国軍の劣勢を認めるような発言を行った。大きな転換期を迎えている。
  • ミャンマー民主派組織「国民統一政府(NUG)」は4月4日、首都ネピドーの国軍施設を無人航空機(ドローン)で攻撃したと発表した。国軍側は否定しており、詳細は不明であるが、ネピドーへの攻撃は異例であり、国軍の支配力の低下がうかがえる。今後の更なる国軍の劣勢と混乱の拡大が危惧される。
【社会】
台湾における地震
  • 現地時間4月3日午前7時58分台湾東方の沖合でM7.2 の地震が発生し、これまで10人の死亡と1000人以上の負傷が確認された。台湾は先端半導体の生産施設が集積していることから、世界のサプライチェーンへの影響が危惧される。

以上

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