最新動向/市場予測

企業リスクに影響を与える昨今の事象について

2024年7月5日

政治、経済、社会情勢などの企業活動に影響を与える事象に関して、北米、中南米、欧州、中東、アフリカ、アジア・オセアニアの各地域ごとに、最新状況を踏まえ考察します。

エグゼクティブサマリー

  • イスラエル・ガザ情勢は混乱を極めているが、停戦交渉の進展が見えつつある。
  • 英国総選挙では労働党が地滑り的大勝を収め、政権交代がほぼ確定した。
  • フランス総選挙では、当初リードしていた極右連合から、7月7日の決選投票では左派連合が勝利し、今後の内政の混乱が危惧される。
  • 米国ではバイデン氏とトランプ氏によるテレビ討論会が行われ、精彩を欠いたバイデン氏の大統領選からの撤退がささやかれているが、両氏の支持率は拮抗しており、今後は全く分からない。

 

1. グローバル全体の動き

【経済】
エネルギー価格・穀物価格高騰の影響
  • 世界的なLNG価格の高騰と2022年2月のロシアによるウクライナ侵攻により、2022年3月前半にNYの先物市場の代表的な原油(WTI)は125ドル/バーレルまで高騰したが、産油国の増産や、中国を筆頭に世界的な需要の減少予測から下落傾向となり、2023年3月には70ドル前後となった。その後OPECとロシアなど石油産油国でつくる「OPECプラス」が度々減産等で合意したため、徐々にあがり、9月後半には90ドル前後となった。10月以降、米国の金融引き締めの長期化や世界的な景気停滞懸念等により、総じて弱含みとなり、70ドル台で推移していていた。2024年4月に入り、中東情勢の緊迫化に伴い約5ヶ月ぶりに87ドル台まで上昇、その後弱含み70ドル前後となったが、7月に入り再度の中東情勢の緊張化から、現状では80ドル台で推移している。

 

2. 北米

【政治】
2024年米大統領選挙
  • 民主、共和両党の大統領候補者指名は大詰めを迎え、7月の共和党大会、8月の民主党大会で正式な候補者が指名される。民主党はバイデン現大統領、共和党はトランプ前大統領以外の候補者が見当たらず、両氏が候補者として指名されることは確実な状況である。また無所属のロバート・ケネディ・ジュニア氏の名前が挙がっているが、制度的に無所属の候補が大統領選で候補となることは極めて困難であるため、本選は前回同様バイデン氏とトランプ氏の対戦となる見込みであり、早くも6月27日に両氏によるテレビ討論会が開催された。
  • トランプ前大統領は現在4件の刑事訴追を受けている。2024年4月25日、米連邦最高裁判所において、前大統領が主張する大統領免責特権についての口頭弁論が開かれた。
  • 5月30日、ニューヨーク州地裁の陪審員は、2016年の大統領選挙前に不倫相手の女優への支払いを法的経費として記録した罪で、トランプ氏に有罪の評決を下した。量刑は7月に言い渡される予定である。元大統領が刑事事件で有罪の評決を受けるのは米国史上初である。
  • バイデン大統領の次男は銃の購入や所持をめぐり、3件の連邦法違反の罪に問われているが、デラウェア州連邦裁判所の陪審団は全ての罪で有罪とするという評決を出した。現職の大統領の子供が刑事裁判で有罪とされたのは初めてである。
  • 6月27日にバイデン氏とトランプ氏によるテレビ討論会が行われたが、バイデン氏は精彩を欠いていたとの見方が全米で大勢を占めたことから、民主党内部からも、バイデン氏は選挙戦から撤退すべきであるとの意見が出ている。しかしバイデン氏は撤退の意向は見せておらず、今後の成り行きが注目される。
  • トランプ前大統領が2020年の大統領選の結果を覆そうとした事件を巡り、米連邦最高裁は7月1日、トランプ氏が主張していた免責特権を部分的に認める判断を下した。これにより11月の選挙より前に公判が開かれないことがほぼ確実となった。テレビ討論会の結果と相まってトランプ氏が有利になったと見られるが、現地メディアによれば、両氏の支持率は拮抗しており、ほとんど差がない状況であるとされている。

 

3. 中南米

【政治】
ベネズエラ大統領選挙
  • ベネズエラでは7月28日に大統領選挙が行われる予定であり、7月4日から選挙戦が始まった。野党連合は当初、指導者のマリア・マチャド氏を統一候補としていたが、裁判所が出馬を禁止したことから、元外交官のエドムンド・ゴンザレス氏を新たな候補者に擁立した。世論調査では3期目を目指す現職のマドゥロ大統領の支持率が、知名度で劣るゴンザレス氏に20ポイント程度劣勢となっている。ベネズエラはEU選挙監視団の招致を撤回するなどの措置をとっており、選挙結果が公正なものになるかは不透明な状況である。また選挙結果に不満を持つ勢力による抗議活動等の懸念もあり、内政が混乱する事態が憂慮される。

 

4. 欧州

【政治】
フランス下院議会選挙
  • 欧州議会選挙においてフランスでは、与党連合(得票率14.6%)が極右政党「国民連合」(得票率31.3%)に大差で敗れたことから、マクロン大統領は下院を解散し総選挙を決定した。この大統領の決定に対しては明確な勝算が見えないことから、「非常に危険な賭け」との見方も多い。仮に国民連合が勝利し第1党となり右派の連携が進めば、同党から首相が選出されるかもしれず、そうなるとフランス内政は混乱する可能性がある。
  • 6月30日の下院議会選挙第1回投票では、極右「国民連合」が33.2%でトップ、左派連合「新人民戦線(NFP)」が28.15%と続き、与党連合は21%で3位となった。7月3日パリ中心部では、労働組合や人権団体等の呼びかけで極右政党の勝利阻止を訴える大規模な集会が開かれた。また左派連合と与党連合間で、候補者の調整も行われている。最終的にどのような議席配分になるかは全く分からない状況であったが、7月7日の決選投票では左派連合が勝利し最大勢力となった。
英国総選
  • 2024年5月22日、英国のスナク首相は下院を解散すると発表した。スナク首相は英国のインフレが落ち着き、不法移民のルワンダへの移送が可能になったことから、保守党への支持率上昇が見込めるとの思惑で解散したと見られる。
  • 現地時間7月4日午前7時から全土で投票が始まり、午後10時に投票が終了し、開票作業が行われている(執筆現在)。英国メディアは出口調査等から、野党労働党の地滑り的大勝と一斉に報じており、政権交代が確実な情勢である。仮に労働党政権となっても、NATO等を中心とした外交・安全保障体制、経済的な政策に大きな変化はない見込みである。

 

5. 中東

【政治】
イラン大統領選挙
  • 6月28日の大統領選挙に関して、イラン内務省は6月9日、大統領候補の資格を審査する「護憲評議会」による資格審査の結果を発表した。それによると80人が立候補を届け出たが、前回同様欧米との対話を重視する改革派や穏健派の立候補者の多くは失格となり、認められたのは6人のみだった。
  • 6月28日に行われた第1回投票ではいずれの候補者も過半数には届かなかったことから、7月5日に改革派のペゼジュキアン氏と保守強硬派のジャリリ氏による決選投票が行われた結果、ペゼジュキアン氏が当選した。
イスラエル・ガザ地区における戦闘
  • 2023年10月以降のイスラエルとハマスの戦闘は、ガザ地区での激しい空爆と地上戦が続いており、同地区の人道問題等、国際社会の高い関心を集めている。数多くの国が停戦交渉を仲介しているが、なかなか進まない状況である。
  • 事態の収束が見えないことから、イスラエル国内でも世論の変化が見られる。2024年4月6日にテルアビブなどで、ネタニヤフ首相の退陣と総選挙の早期実施を求める抗議デモがおこった。同様のデモはイスラエル国内各地で実施され、参加者も数万人規模となっている。また、政府と軍の間にはハマスに関する認識の違いがあり、多くの問題を抱えている。
  • 国際社会における停戦に向けた仲介が活発化しており、バイデン米大統領は5月31日、イスラエルが、ガザ地区にいるイスラエル人の人質解放と引き換えに戦闘休止を提案したことを明らかにした。この提案は3段階で構成されている。第1段階は6週間の戦闘休止でこの期間はイスラエル軍がガザから撤退し、イスラエル人人質が数百人のパレスチナ囚人と交換される。第2段階ではハマスとイスラエルが敵対行為の恒久的停止の条件について交渉し、第3段階でガザ地区の大規模な復興計画を策定するものである。この提案はイスラエル側からの提案とされているが、イスラエル閣内の強硬派から反対の意向が示されており、どのように進むかは全くわからない。
  • このような状況下一部米国メディアは、イスラエル首相府が、代表団を交渉会議へ派遣することを承認したと報じた。また、ハマス側も妥協案を提示するという可能性が報じられており、交渉が合意に達する可能性がある。
イスラエル・レバノン情勢
  • 7月3日、イスラエル軍は、ハマスに連携するレバノンのイスラム教シーア派武装組織ヒズボラを狙いレバノン南部を攻撃し、上級司令官を殺害した。ヒズボラはその報復のため、多数のロケット弾をイスラエル国内に向けて発射している。攻撃の応酬が繰り返されており、拡大と中東情勢全体の緊迫化が危惧される。

 

6. アフリカ

【政治】
南アフリカ総選挙
  • 南アフリカで5月29日、総選挙が実施され、1994年にアパルトヘイトが終わり民主化されてから初めて与党・アフリカ民族会議(ANC)の議席が過半数を割り込んだ。
  • 選挙後ANCは野党と連立協議を行い、6月30日、ラマポーザ大統領の再任が決定した。

 

7. アジア・オセアニア

【政治】
ミャンマーにおける少数民族武装勢力と国軍の戦闘激化
  • ミャンマーでは、2021年2月に国軍によるクーデターが発生し、それに対し民主派による抗議活動が繰り広げられた。またそれに呼応するように、2023年10月27日には3つの少数民族の武装勢力が東部シャン州で国軍に対し一斉に攻撃を開始し、全土に拡大している。少数民族武装勢力側はこれまでに国軍側の500か所以上の拠点を占領し、国軍兵士も数多く投降するなど、2021年2月以降、国軍にとっては最悪の状況となっている。2023年11月8日には大統領が「軍が事態に適切に対応しないのであれば、国家が分裂する危険性がある」とまで発言している。
  • 現在も国軍は空爆を強化するなどで対抗しているが、国軍兵士の脱走の増加など、国軍の強権統治の混乱に拍車がかかっている。
  • 現地では政治・経済・社会情勢のすべてにおいて混乱しており、6月30日には、現地で大手小売業を展開する日本企業の現地法人幹部がコメの統制価格に違反した容疑で、現地警察当局に拘束された。日本政府は大使館を通じ、同邦人の解放を求めている。

以上

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