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マーケティングアナリティクス

~マーケティング&セールス領域におけるアナリティクスの活用~

はじめに

市場の成熟により企業間の競争が過熱している中で、一つ一つの意思決定の重要性がますます高まっている。今後も継続的に成長していくためには、根拠を持った、戦略と整合のとれた意思決定を行っていく必要がある。

このような状況を迎えるにあたり、特に投資額も大きく、顧客が多様化することにより複雑性を増しているマーケティング領域において、定量的に現状を把握し、戦略に沿った意思決定を可能とする“マーケティングアナリティクス”が有効である。

そこで、DTC Deloitte Digitalデジタルストラテジーが提供する、最新のマーケティング戦略であるマーケティングアナリティクスについて、国内グローバル先進企業の事例を交えながら紹介する。

 

マーケティングアナリティクスの概要

企業の意思決定に求められる水準が高まる中で、従来よく見られる過去の成功体験やKKD(感・経験・度胸)による意思決定では、この変化に耐えることはできない。しかし、アナリティクスは、現状から脱却し、客観的な根拠をもち、戦略と整合性のとれた意思決定を可能にする。 

特にマーケティング&セールス領域におけるアナリティクスの活用は必要不可欠である。

最たる理由として、多くのトップ企業のマーケティング&セールス投資額は、R&D投資額についで2番目に巨額であり、インパクトも大きい。

また、デジタルデバイスやソーシャルメディアの登場により、消費者行動が加速度的に複雑になっているため、顧客行動の理解や顧客体験を最大化するためにはアナリティクスによるデジタル接点の解析が必要不可欠である。

一方で、企業のマーケティング領域での活動は、その企業の様々なステークホルダーに対して貢献できることも、評価される一つの要因となっている。

消費者 

消費者のニーズをより高い精度で捉えることが可能となり、消費者にとって煩わしい不要な広告の接触が減少する 
価格設定時に不要なマーケティング予算を省くことができ、無駄な価格向上が避けられる 

従業員 

根拠に客観性が保たれ、上位者等への説明が容易となり業務の改善につながる 
データ関連のインフラが整うことにより、継続性なナレッジの蓄積が可能となる 

チャネルパートナー 

相性の良いチャネルパートナーの選定が可能となる 
膨大な投資にも関わらず、予算のコントロールは担当広告代理店が主体となっていたが、アナリティクスの活用は、第三者の目として公平的なモニタリングを行うことができる 

株主 

株主への説明責任が厳しくなる中で、アナリティクスは客観的な説明責任を果たすことができる 
グローバルスタンダードであるファクトベースの報告となるため、グローバル化への整備が進められる

 

意思決定へのアプローチ

マーケティングアナリティクスの具体的な適用例として、「マーケティングROIの最適化」について紹介する。

マーケティングROIの最適化は、マーケティング活動において、データに基づいた計画と意思決定、定量的な振り返りの繰り返しにより、現状の分析と戦略への投資配分を可能とし、利益の最大化を実現する。

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手順としては(1)統計モデルによる定量的なROIの算出、(2)算出されたROIから戦略と整合した打ち手の検討、の流れで行う。

(1)のROI算出は、目的指標(売上、利益、販売個数など)を要素分解することにより、目的指標が何の要素から構成されているかに分解し、支出(金額など)を利用して算出する。

ただし、分析する粒度は、プロダクトライフサイクルのポジションやエリアの違いなど、目的に合わせた適切なセグメントで行う。

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ただし、ROIの算出は現状の可視化であり最終的な打ち手は企業の戦略に従う必要がある。そこで②として、単純に効率の良いセグメントに予算を傾倒するのではなく、全体として何が最適化なのかを検討したうえで意思決定を行う。

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このようにROIの最適化では、現状の可視化だけでなく、戦略の理解も重要となる。

また、マーケティングROIに限らないが、分析のための分析に陥らないために、何のために行うのか、企業/事業戦略とマッチしたものとなっているかを常に心がけ、アナリティクスの活用を進めていく必要がある。

事例紹介

背景・課題

従来より行われてきた施策のROI(様々な施策効果が含まれた“なかりせば”)を用いた投資意思決定から脱却し、より精度が高く根拠のある意思決定方法を確立したいという目的があった。

年間販売マーケティング予算はX00億円。

アプローチ

これらの課題を解決するために、商品・エリア別のROIの算出だけでなく、分析結果可視化のためのダッシュボード整理、結果を実行するための意思決定プロセスの整備を行った。

結果としてROIが100%を下回る施策などが明らかになり、投資効果の悪い施策から良い施策へ予算の組み替えを行った。また、組み替えた場合のシナリオ別のシミュレーションも実施した。

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効果

年間に、200以上打ち出す施策の中で、重ね合わせても効果のない施策が判明した。問題のあるセグメントを改善することにより、売り上げを落とすことなくマーケティング&セールスの投資額を削減し、年間約$40-50millionのコスト削減に成功した。

 

結び

データリテラシーの拡大等によって、ようやくアナリティクスの取り組みの入口に立った。今後は取得可能なデータの増加により、その幅も深さも急速に広がるため、アナリティクスの活用領域は拡大されるだろう。また、クラウドの拡大や情報通信コストの低下、データ分析を扱うテクノロジーの普及もアナリティクスの活用トレンドを後押ししている。 

特に企業だけでなくステークホルダーも巻き込む、インパクトの大きいマーケティング領域でのアナリティクスの活用は、企業にとって最重要領域の一つとなる。 

お問い合わせ:
デロイト トーマツ コンサルティング合同会社
Deloitte Digitalデジタルストラテジー 湯澤 謙一・吉沢雄介
email: dd-info@deloittedigital.jp

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