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Crunch time XVl -決断の時16

2025年の経理財務部門(改訂版)~デロイトの予想~

2018年に掲げた予想を8つの視点(ファイナンスファクトリー、財務経理部門の役割、業務サイクル、セルフサービス、サービス提供モデル、ERP、データ、労働力と職場)に分けて振り返り、2025年に向けて更新したデロイトの予想を紹介します。

ファイナンスファクトリー

2021年の現実

プロセス標準化とデータアーキテクチャへの投資の欠如が自動化の減速を招きましたが、それでもまだ速いペースで進行しています。個別の活動を自動化したことで、経理財務部門はより複雑なプロセスに注力し始めました。ブロックチェーンに対する懐疑的な態度はその利用を限定的にさせましたが、サイバーセキュリティと自動化のおかげで、一部のCFOは、ブロックチェーンの導入に前向きになってきています。
 

2025年の推測

ファイナンスファクトリーは、ビジネスの戦略や決定を周知するために、ビッグデータやアナリティクス、予測モデリングの利用に注力していくでしょう。完全自動のバックオフィスを持つ経理財務機能は、2025年まではほとんど現れないと予想する一方で、日常業務はERPシステムやその他の方法によって自動化が容易になり、経理財務部門は制限から解放され、計画や予測、その他の高付加価値業務に対しても自動化を適用できるようになるでしょう。

Crunch time XVI -決断の時16 2025年の経理財務部門(改訂版)~デロイトの予想~〔PDF, 3MB〕

経理財務部門の役割

2021年の現実

COVID-19の期間、俊敏性と適応性次第で、勝者と敗者が分かれました。パンデミックの大きな課題に直面したことで、ステップアップした経理財務部門もあれば、そうでない部門もありましたが、いずれにせよビジネスリーダーが今後期待することは、経理財務部門が多様な将来シナリオに対して準備ができていることです。単一の戦略を設定して世界全体の状況と関連の無い一直線の道を進む余裕はありません。
 

2025年の推測

自部門のケイパビリティ強化のため、経理財務部門はいかなる状況でも業務を遂行するため自部門の支援パートナーを離さず、特定領域やCoE、および外部ベンダーにある程度の業務責任を強いるようになるでしょう。リアルタイム情報の実現が近づき、ビジネス分析が自動的に生成されるように、テクノロジーもまた、経理財務部門が不確実性に対処して価値提案を実行する助けとなります。

 

経理財務業務のサイクル

2021年の現実

企業は決算処理スピードを高める努力をしてきましたが、それでも、月次のプロセスでその時点のみに有効な主要情報を得るというのが精一杯です。決算締めは存在せず、全ての情報がリアルタイムで計上されるというような継続会計のコンセプトに基づくリアルタイムの報告は、現在までにそれほど牽引力を得てはいません。しかし、インメモリーコンピューティングを搭載したクラウドベースの基幹システム(ERP)によって、その実現に近づくでしょう。
 

2025年の推測

業界内の集約が進み、新しいビジネスモデルが作られ、そしてパンデミック後の経済がサプライチェーン、テクノロジーおよび労働力の制約に対応することに合せて、周期外の報告の需要が加速するでしょう。経理財務部門は、周期的な報告を効率よく行う一方で、周期外のインサイトを提供する必要があります。テクノロジーがそれを支援しますが、望む結果を得ることは容易ではありません。



セルフサービス

2021年の現実

現在、多くの企業がスマートフォンを使用した一定時点の(静的な)報告書へのアクセスを許可していますが、リクエストを調整できないため、何の情報を探しているのかを正確に把握している必要があります。単純に質問すること(例:ヨーロッパで利益率を上げるにはどうすればよいか)ができず、判断材料となるインサイトを得ることはできません。また、これらのインサイトが向こうから率先して届くことはまずありえません。拡大し続ける情報の海をかき分け、何が大事かを判断する必要があります。
 

2025年の推測

セルフサービスの未来は、事前に準備された報告書をより多くダウンロードすることではありません。質問者が何を必要としているかを質問される前に把握しているプッシュ型テクノロジーと、複雑なデータを理解する助けとなる可視化ツールについてです。それにはまた、デスクトップシステムとスマートフォンの高まる能力によって実現されるだろうデリバリーチャネル全体にわたる共通経験を必要とします。チャットボットの兆しは依然見えてはいますが、おそらく2025年までに経理財務部門で普及することはないでしょう。


 

サービス提供モデル

2021年の現実

COVID-19の初期では、効果的なコラボレーションツールと明確に定義された業務プロセスを備えた分散した経理財務の労働力を持つことの利点が強調されました。また、あらゆる場所の人々が企業ネットワークにリモートでアクセスしたことから、データセキュリティの決定的な重要性も強調されました。パンデミック後、多くの企業は急激な成長を現行FTE(Full-Time Equivalent;フルタイム当量)で対応しなければならず、従来の採用チャネルによるオープン経理財務ポジションの採用に苦労しています。
 

2025年の推測

広く分散した労働力によって、経理財務部門はグローバルの人材プールや専門リソースにアクセスするようになります。また、それによって、フリーランス事業者やギグワーカーの利用が増加します。企業は新しいケイパビリティを重要視するようになり、一部のCFOはエンド・ツー・エンドプロセス、オンデマンドのケイパビリティ、および外部パートナーネットワークの連携を強調する「セントラルオフィス」モデルを採用します。そのために、CFOは歴史的に他で管理されていた責任を吸収することになるでしょう。


 

基幹システム(ERP)

2021年の現実

専用アプリケーションやマイクロサービスがより洗練されてきた中、ERPの大手ベンダーは急速度で新機能の追加と競合企業の買収を行い、状況を好転させました。3 競争は主に、非経理財務専門家にユーザーフレンドリーなインターフェースを提供するクラウドベースのソリューション上で起きています。主要ベンダーは毎年数回の大規模システムアップデートを行い、センシングやAI、機械学習およびロボティクスなどのコグニティブ機能を組み込んでいます。
 

2025年の推測

ERPの大手ベンダーは最新ケイパビリティを取り入れ続け、自社ビジネスモデルへの脅威を処理することで、ERPにより多くのデータをもたらします。彼らはサイバーリスクを低減するためにブロックチェーンの利用を開始し、分散型台帳技術は経理財務運用とその導入コストの削減に深く押し進めます。クラウドベースの財務ERPは、バックオフィスコストセンターからフロントオフィスドライバーへとビジネス価値を変化します。


 

データ

2021年の現実

私たちは、2025年の時点でも企業は苦労していると述べましたが、私たちの予想は正しい方向に進んでいるようです。良質のデータを集めるためには、リーダーの号令に加え、プロセスと組織の変更が必要です。ほぼ全ての人がデータに不満を表している一方で、ソリューションにたどり着いた人はあまりいません。ERPのアップグレードは、問題を解決するのでしょうか。データフィード(データを特定フォーマットに変換し、提供・活用すること)が根本原因なのでしょうか。答えを導き出すことは決して簡単ではありません。
 

2025年の推測

自動化されたAIシステムに不適切なデータフローがあると、効率的な結果は生まれず、実用的なビジネスインサイトに繋がりません。自分のデジタル変革ゴールを達成するには、経理財務部門には強力なリーダーが監督する企業のデータ戦略が必要となります。また、プロセスの強化とチェンジマネジメントのスキルも必要になります。そうでない場合、回避ソリューションはこれまで以上に複雑なものとなってしまうでしょう。


 

労働力と職場

2021年の現実

人材こそが成功の鍵であり、経理財務部門における重要な能力には、ロボティクス、コミュニケーション、そしてプロセス管理が含まれるようになりました。さらに、破壊的革新な出来事が新しいビジネスや収益モデルを生む中、ビジネス世界における変化のスピードは加速しています。これら全てが、トップ人材を巡る争いを生んでいます。
 

2025年の推測

経理財務部門は、依然として従来の経理財務および会計スキルを必要としています。しかし、運用、技術、エンジニアリングなどの分野から得られる能力を持った従業員も必要となります。そのような人材を得るためには、経理財務部門は自身の価値ポジションを磨いて人材の層を拡充する必要があります。ビジネス感覚やサービス意識、そしてデジタル見識を持った人材の需要は高まるでしょう。

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