最新動向/市場予測

公営企業主要施策の取組状況調査結果について(R5.11)

公営企業の最新動向解説

令和5年10月に、総務省から経営戦略の策定、公営企業会計の適用、抜本的な改革の検討の3つの施策に関する取組状況調査の結果が公表されました。いずれの施策も一定の進捗が見られる一方で、総務省の要請期間内に取組が完了しない事業も見られます。

1. 総務省による取組状況調査結果の公表

令和5年10月31日に、総務省から令和4年度における公営企業における更なる経営改革の取組状況が公表されました。総務省では公営企業の主要施策として「経営戦略の策定・PDCA」と「抜本的な改革の検討」を改革の両輪とし、「公営企業の見える化」(公営企業会計適用、経営比較分析表)を改革の両輪を支えるものと位置付けています。このうち、経営戦略の策定状況、抜本的な改革の取組状況及び公営企業会計の適用状況について毎年調査を行い、その結果が公表されています。

 

出典:総務省「全国都道府県・指定都市公営企業管理者会議」(令和5年1月24日開催)資料1 公営企業課関連資料 22ページ

公営企業シリーズにおいて、公営企業会計の適用経営戦略抜本的改革について解説してきたところですが、本稿で実際の取組状況について考察していきます。

【参考】

2. 経営戦略の策定状況について

経営戦略は、総務省から令和2年度までの策定が要請されていました。令和5年3月31日時点において、経営戦略を策定済みの事業は6,325事業(全事業の96.8%)であり、令和4年度までに未策定の事業は207事業(同3.2%)となっています。 事業別にみると、令和4年度までで未策定の事業数は、多い順に宅地造成47事業、観光施設33事業、下水道24事業となっており、各事業の事業数に占める割合を高い順にみると、と畜場23.7%、宅地造成18.4%、観光施設16.4%となっています。

【事業別の策定・改定状況】

参照:「公営企業の経営戦略の策定・改訂状況」(外部サイト)

 

昨年度の調査で令和3年度に策定済みとなっていた事業は全体で6,258事業であるのに対し、令和5年3月31日時点で策定済みになった事業は6,325事業であることから、67事業は令和4年度中に策定が完了したことが分かります。

また、総務省では経営戦略策定済みの団体について、より質の高い経営戦略となるよう、令和7年度までの改定を要請しています。令和3年度までに改定済の事業は1,170事業であるのに対し、令和5年3月31日時点で策定済みの事業は1,639事業(経営戦略策定済み事業の25.9%)であることから、469事業は令和5年度中に改定したことが分かります。さらに、令和7年度までに改定予定の事業は3,742事業となっています。

令和5年1月に開催された全国都道府県・指定都市公営企業管理者会議では、令和8年度以降の地方財政措置に経営戦略の改定を要件とする予定であることが示されていますので、未策定の事業は早急に策定・改定を行うことが必要です。

 

出典:総務省「全国都道府県・指定都市公営企業管理者会議」(令和5年1月24日開催)資料1 公営企業課関連資料 29ページ

なお、経営戦略未策定事業の策定支援や改定にあたっての見直し支援のため、「策定・改定ガイドライン」や「策定・改定マニュアル」の公表に加え、令和3年度より総務省と地方公共団体金融機構の共同事業である「地方公共団体の経営・財務マネジメント強化事業」が開始されています。


【参考】

3. 公営企業会計の適用状況について

公営企業会計の適用は、人口3万人以上(平成22年国勢調査ベース。以下、同じ。)の団体の簡易水道、下水道(公共下水道及び流域下水道に限る)については、令和2年度の予算・決算までに取り組むことが総務省から要請されていました。令和5年4月1日時点において、簡易水道事業117事業、下水道事業のうち公共下水道事業及び流域下水道事業1,155事業ともに、すべての事業が取組を完了しています 。

【参考】

また、平成31年1月には、人口3万人未満の団体における簡易水道及び下水道、並びに人口規模を問わず集落排水事業等のその他下水道事業についても、令和6年度の予算・決算までに公営企業会計の適用が要請されたところです。

出典:総務省「全国都道府県・指定都市公営企業管理者会議」(令和5年1月24日開催)資料1 公営企業課関連資料 36ページ

令和4年4月1日時点と比較した令和5年4月1日における取組状況は、人口3万人未満の簡易水道事業では、「適用済」が昨年度から比較して94事業(調査時点事業数の21.8%)から154事業(同36.1%)へと増加し、下水道事業においても486事業(同30.0%)から756事業(同46.8%)と増加しています。取組中の事業も含めると、簡易水道では405事業(同94.0%)から418事業(同97.9%)へ、下水道事業では1,582事業(同97.7%)から1,600事業(同99.1%)へ増加し、いずれも95%を超えています。

人口3万人未満の団体において一定の進捗が見られますが、簡易水道、下水道ともに一部の団体では「検討中」又は「検討未着手」となっています。法適用の意義を踏まえ、取組が遅れている事業についても、早急に推進していくことが必要です。

なお、総務省による取組状況調査では、重点事業として位置付けられている簡易水道、下水道のみ結果が公表されていますが、平成31年1月に公表されたロードマップでは、その他の事業についても、公営企業会計に「できる限り移行」することとされていることから、公表対象とされなかった事業においても取組を進めることが望まれます。

また、公営企業会計の適用促進にあたっては、マニュアル・先進事例集の公表や都道府県による支援、地方財政措置に加え、前述の「地方公共団体の経営・財務マネジメント強化事業」によるアドバイザー派遣が令和3年度から開始されています。

 

4. 抜本的な改革の取組状況について

公営企業における抜本的な改革の検討は、平成21~25年度に集中的に取り組むことが要請されていたことに加え、平成26年8月の「公営企業の経営に当たっての留意事項について」(公営企業課長等通知)により引き続き推進することが要請されています。平成26年の新たな要請による取組状況の公表は平成28年3月31日時点から毎年度実施されています。

令和4年度(令和5年3月31日時点)の調査によると、取組件数合計は令和3年度261件であるのに対し、令和4年度は270件とわずかに増加しています。「包括的民間委託」が37件から46件へと増加していることが主な増加要因であります。

「広域化等」については、89件から83件に減少しています。平成30年度に、令和4年度までに都道府県による水道広域化推進プラン策定が要請されたため、令和2年度まで増加して以降は策定期限に向けて件数が少なくなったものと考えられます。また、「事業廃止」は公営企業全体で100件から103件に増加しており、事業別の内訳は介護サービス21件、下水道19件、宅地造成18件となっています。

【参考】

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