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2017年度 オンタリオ州予算案 ハイライト

Canadian tax alert

2017年5月5日

財務大臣のチャールズ・ソーサは、2017年4月27日午後の立法議会において、2017年度のオンタリオ州予算を発表した。今年度の予算は、医療と教育を重視した均衡予算となっており、以下はその要点である。なお、個人所得税率と法人所得税率は昨年度から変更はない。

財政及び経済の見通し

  • 2016年度の赤字額は、当初予想を28億ドル下回る、15億ドルとなる見込みである。
  • 2017年度、2018年度、2019年度は均衡予算が計画されている。
  • 2017年において雇用総数は1.3%増加し、その後2018年から2020年にかけて平均で1.1%増加する見込みである。それに伴い2020年には、失業率が6.2%まで低下することが見込まれている。
  •  実質GDP成長率は、2017年の2.3%から2020年には1.7%に減少する見込みである。

個人に関する税制改正

不妊治療費に関する税額控除
不妊治療費に関するオンタリオ州医療費控除の取り扱いについて、連邦医療費控除の改正案と同様に改正される。連邦予算では、不妊治療費の税額控除対象範囲の拡大が提案されている。

介護税額控除
2017年度連邦予算で提案された介護税額控除の簡素化に続き、オンタリオ州予算でも、これまでの州の介護税額控除をOntario caregiver tax credit (OCTC) に置き換えることが提案されている。OCTC(現状5.05%)はノンリファンダブルな(税額がゼロになるまでしか控除できない)制度であり、2017年度から適用される予定である。ただし、連邦の制度と同様、成人した子供と同居している身体が虚弱でない高齢者は、OCTCを利用することはできない。

高齢者向け公共交通コスト削減
オンタリオ州予算は2017年7月1日時点の適格公共交通費用について、65歳以上の高齢者に対する新しいオンタリオ高齢者公共交通費用税額控除制度を導入することを提案している。当該税額控除はリファンダブルな税額控除であり、適格公共交通費用の15%が対象となる。税額控除の対象者は平均で年間約140ドルのベネフィットを受けることが見込まれている。

ビジネスに関する税制改正

Employer Health Taxの回避
オンタリオ州政府は、2018年1月1日以降の指定された日より、Income Tax Actにより指定されたパートナーシップのメンバーであるすべての雇用主に対して、Employer Health Tax (EHT)の免除を取り消すことを提案している。EHTの免除措置を小規模雇用主が利用することを確実にするために、オンタリオ州政府は、他の雇用主がEHTを回避するために用いている手法やストラクチャーを引き続きレビューする予定である。

連邦予算に合わせた支配概念の変更
現在オンタリオ州法では、カナダ支配非公開企業(Canadian-controlled private corporations)に対し、認定された事業活動から生じる最初の50万ドルの課税所得にかかる州法人税率を、中小企業の法人税減税(Small Business Deduction)として引き下げている。減税対象の50万ドルは、関連会社又はパートナーシップのメンバー間で共有される。2017年度予算では、連邦法の改正と同様に、関連会社か否かの判定における事実上の支配概念の拡大が提案されている。これにより、上記の規定が適用される関連会社の範囲に影響を与える可能性がある。

その他の税制改正

オンタリオ州の税制システムの強化
オンタリオ州は、税制の一貫性を強化し、誰もが公平な税金を支払うことを確実にするために、連邦政府と共有されているものを含む全ての税金に関して、政策上、法律上、行政上の審査を行うことしている。また、税制の抜け穴と巧妙なタックス・プランニング・スキームを特定し、対処していくために追加のリソースを投入する予定である。

複数国/州での税務申告への対応
別の州に税金を払っているオンタリオ州居住者と、オンタリオ州に税金を払うオンタリオ州非居住者に対する、州付加税とオンタリオ州減税(Ontario tax reduction:以下OTR)の計算方法を変更するためのテクニカルな改正が提案されている。当該変更は2016年12月31日より後に終了する課税年度に適用される。これらの変更は、複数国/州の申告者とその他の申告者で、州付加税とOTRの処理について一貫性を確保することを意図している。現在、複数国/州の申告者の付加税とOTRは、申告者の総所得を適切に反映して計算されていない。

非居住者投機税
以前に発表されたように、カナダの市民または永住者でない個人または外国企業によって購入されたGreater Golden Horseshoe内の家の価格に対して15%の非居住者投機税を課すことが提案された。この措置は2017年4月21日より適用される予定である。Greater Golden Horseshoeは、グレーター・トロントエリア、ピーターバラ、ウォータールー、ナイアガラ、シムコーなどセントラルオンタリオの大部分を含む地域を指す。オンタリオ州の経済は、州内に住宅を持つことを決定した新規移転者から大きな利益を受けている。政府は、同州に住むことを計画していない非居住者投資家が、投機目的でオンタリオ州の住宅を購入していることを懸念し、今回の提案となった。この非居住者投機税は、単一家族向け住宅(最大6軒)を含む土地を購入した場合に適用される。なお、複数居住の賃貸住宅の建物、農地、商業用地などの他のタイプの固定資産の購入に対しては適用されない。

ホテル税
予算は地方自治体にホテル税を課す権限を与えることを提案している。現状では、税務当局は地方自治体が短期滞在に関して税金を課すこと(ホテル税)を認めていない。

バイオディーゼル燃料のサポート
オンタリオ州は、温室効果ガス排出量を削減し、低炭素社会に移行することで、気候変動問題に取り組むことをコミットしている。これらのイニシアチブを支援するために、オンタリオ州政府は、オンタリオ州の非課税着色燃料プログラムの一環として、化石燃料の代替品であるバイオディーゼル燃料をより広く利用できるようにするための変更を提案している。
現在、州は特定の企業に対して、燃料への着色権限を与えている。 これらの企業は登録着色業者と呼ばれている。登録された業者から購入した着色燃料は、非課税燃料であり、燃料税法で定める特定の目的にのみ使用することができる。
州はバイオディーゼルなどの再生可能燃料を支援するために、燃料税法を変更することを提案している。これにより、登録着色業者に新しいカテゴリーが追加される。当該新しいカテゴリーの認定業者は、他の燃料とブレンドしたり、混合したり、化合させたりしていないバイオディーゼル燃料に着色することが認められる。また、すべての登録着色業者が現在課されている燃料輸送要件から免除される。 これにより、より多くの企業が着色バイオディーゼル製品を提供することを可能にし、州の低炭素社会への移行を支援しようとしている。

たばこ税の増税
オンタリオ州は2017年4月28日午前0時01分から、葉巻以外のたばこ製品について、たばこ税を1本または1グラムあたり15.475セントから16.475セントに上げることを提案している。2018年と2019年は、たばこ1本または1グラム毎に2セントずつたばこ税を上げる予定である。

他の法令改正
財政管理法(Financial Administration Act)、燃料税法(Fuel Tax Act)、歳入法(Ministry of Revenue Act)、2007年税制法(Taxation Act, 2007)、土地譲渡税法(Land Transfer Tax Act)など様々な法律に対して追加の法令改正が提案されている。

詳細については、財務省のウェブサイトを参照ください。
 

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