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2016年度 ブリティッシュ・コロンビア州予算案 ハイライト
Canadian tax alert
2016年2月16日、ブリティッシュ・コロンビア州(以下BC州)財務大臣から、2016年度予算が発表された。予算の収支は4期連続で均衡している。2015年度決算の収支は377百万カナダドルの黒字になる見込みで、その後3年間の収支も若干の黒字になると州政府は予想している。
財務大臣は、財政規律を重んじ、抑制の効いた予算を策定するという2015年予算の政府の方針を再度強調した。予算の特徴は以下の通りである。
- カナダの他の州と比べて、州経済の力強い発展を重視
- インフラ整備のための負債が全体的に増加しているため、州運営にかかる負債を削減
- 低所得の世帯、シニア世代、地方の開発への支援を拡大
相対的に強いBC州の経済成長(2015年の予想GDP成長率は2.4%~2.6%)と継続する黒字予算のもと、州政府は負債の返済とインフラ投資を通じてBC州の将来世代に恩恵を与える経済成長基金1億カナダドルを新設する。当該基金は急成長しているBC州のLNG産業から生み出される資金を積み立てる計画としていたが、BC州のLNGプロジェクトが遅延しているにもかかわらず、基金を開始することを選択した。なお、州政府は2018年度の予算においてLNGプロジェクトからの収入は含まないこととした。
本予算における税制改正案は、以下の目的の実現を主眼としている。
- 社会政策目標の達成
- BC州経済の力強い成長
しかしながら、今回の税制改正による影響は、2016年度および2017年度に関してはそれほど大きなものではない。
社会政策目標を達成するための税制改正案
社会政策目標に関連する税制改正案は、低所得の家族およびシニア層の住宅購入と生活費の負担軽減に焦点を当てている。
不動産譲渡税法(Property transfer tax)の修正
不動産譲渡税法の改正により、高価格の不動産を譲渡する場合に、より大きな税負担が求められる。
- 2016年2月17日より、新規に建設される住宅に関する以下の免除規定が導入される。
‒ カナダ市民または永住者の住居として新規に建設される住宅は、75万カナダドルまでは不動産譲渡税が免除される。
‒ 80万カナダドルまでの住宅は、部分的に免除される。
‒ 80万カナダドルを超える住宅には、通常の不動産譲渡税が適用される。 - 2016年2月17日より、第三の区分(third tier)に対する不動産譲渡税が導入される。
‒ 現在適用されている、最初の20万カナダドルまでの1%、20~200万カナダドルの2%の税率は引き続き適用される。
‒ 今回、第三の区分として、200万カナダドルを超える価値に対して3%の税率が導入される。
‒ 第三の区分の不動産譲渡税による州の収入増加は、上述の新規建設の住宅に関する税の免除によって相殺されると考えられる。 - 州政府は譲受人の重要なデータ収集の導入を計画しており、これには譲受人の市民権の開示要求が含まれている
‒ 情報開示を求められた信託受託者(Bare trustees)は不動産の譲渡人と信託の受益者の市民権情報を開示することが求められる。
‒ 企業は役員の市民権情報を開示することを求められる。
‒ 新しい開示要求は2016年春に適用される見通しである。
メディカル・サービス・プラン(MSP)の保険料修正案
医療費の増大により、州政府は2016年度および2017年度に予定しているMSP保険料の増額を継続する予定である。ただし、父子家庭または母子家庭の負担は軽減し、その負担は他の納税者へ転嫁される。2017年1月1日より適用される見込み。
- 月次の保険料は納税者一人当たり4%もしくは3カナダドル増加すると予想される。
- MSP保険料の計算に子供の有無は考慮されなくなる。
- 夫婦の場合は独身の2倍のMSP保険料を支払うことになる。
住宅所有者助成金の支給基準が緩和
住宅所有者助成金の段階的廃止の基準が、2016年は110万カナダドルから120万カナダドルに引き上げられた。基準を超える評価額1,000カナダドル毎に5カナダドルの助成金が減額される。
農業経営者の食糧寄付に関する税額控除の導入
2016年2月17日より、農業経営者の食糧寄付に関する税額控除が導入される。学校給食プログラムを支援する登録慈善団体に税法適格な農業製品を寄付することにより、農業に従事する個人または法人が税額控除を利用することができる。
税額控除の金額は、税法適格な農業製品の公正価値の25%に等しく、寄付の税額控除が申請されるのと同じ年度に申請されなければならない。
その他の税制
- 2016年より、BC州の高齢者住宅改修に関する税額控除(上限1,000カナダドルで適格な改修支出の10%)が、連邦税における障碍者税額控除を申請できる障碍者にも適用される。
- 2016年より、BC州減税控除(BC tax reduction credit)が19,000カナダドルから19,400カナダドルに引き上げられた。また段階的廃止の率も3.50%から3.56%に引き上げられた。
- BC州は2016年1月1日以降に終了する税務年度より、連邦政府と同様に累進税率遺産税(graduated rate estates)と適格障碍信託制度(qualified disability trusts)を導入しようとしている。
‒ これまで、遺産と遺言信託は、基本的に信託期間にわたって個人が利用可能な限界税率に従って課税されていた。
‒ 連邦政府によって導入された制度は、この遺言信託と遺産の最初の3年間における税務面での有利な取扱いを原則として制限する。
‒ この変更により、州税の方針が連邦税と整合することになる。
BC州の経済を強化・成長させるための税制案
州政府は1億4,300万カナダドルを州の経済とコミュニティの活性化のために使う予定である。例として、小規模コミュニティに対する財政支援や、高速道路の保守、若年層のスキルトレーニングなどが挙げられる。
BC州経済の投資に関する税制改正案は、既存の直接税または間接税の控除やインセンティブの拡大や強化が中心のため、BC州の経済全体にそれほど大きな影響は与えないが、主要な税制改正案については下記のとおりである。
鉱業
- BC州の鉱山事業におけるフロースルー株式制度(Mining flow-through share tax credit) は、2016年末まで延長された。
- 鉱業開発税額控除は、2019年末まで3年間延長された。
旅行業
- 地方では、2017年より旅行業の宿泊施設の負担軽減策が拡大される。離れた地方自治体の地域にある適格短期宿泊施設の評価減の最大額が、15万カナダドルから50万カナダドルに増加する。さらに、課税所得が発生する評価額の下限が、200万カナダドルから400万カナダドルに引き上げられた。
その他
- 小規模事業ベンチャーキャピタルに対する税額控除の予算枠が500万カナダドル増加し、税制適格な企業の資金調達において年間1,670万カナダドルの支援が行われる。
- 為替レートの変動により映画産業の成長が見込まれるため、州政府は将来において映画産業の税額控除の増加を抑制することに言及した。
‒ 州において、映画製作者が、労働者に100カナダドルを支払うのに必要な米ドルは、58米ドルであったが、為替レートの変動により、40米ドルに減少した。
‒ 2015年度において、映画産業の税額控除による州政府の負担は約5億カナダドルの見込みである。
その他の税制
炭素及び自動車燃料税
- 2016年3月1日より、燃料保証金を免除されている者に対して燃料を販売する徴収者(collector)は、保証金の納付が免除される。また、BC州で購入された燃料がBC州外で販売されるか、もしくはBC州外に輸送されるほとんどのケースにおいて、代理徴収者は保証金を支払うことを免除される。
州売上税(PST)
- 2016年2月17日より、州売上税法が改正され、テレスコピックハンドラ―(フォークリフトの一種)、スキッドステアローラー(汎用独立四輪駆動車)、ポリカーボネート製温室を適格農家が農業目的にのみ使用する場合にPSTが免除されることとなった。
税制上の競争力に関する今後の検討
- 新しい課税競争委員会は、BC州経済の変化を踏まえて州税をより現代的なものに改善するために、全ての州税を見直す予定である。ただし、統合売上税(HST)の復活は考慮していないことを表明している。
本内容は、デロイトカナダによって配信されたCanadian tax alert の日本語参考訳です。原文(英語版)はこちらをご参照ください。
その他、カナダ連邦・州・準州の予算案に関するCanadian tax alert(英語版)は随時こちらのリンクより更新されますのでご参照ください。