Article
2017 年度 ブリティッシュ・コロンビア州予算案 ハイライト
Canadian tax alert
2017年2月21日
財務大臣Michael De Jongは、2月21日(火)の午後に2017-2018 BC州予算(Budget 2017)を発表した。5期連続の均衡予算で、若干の黒字予算を見込んでいる。また、2020年~2021年にかけて州の営業債務の解消を見込んでいる。財務大臣は、この予算で示されるBC州住民の負担軽減と主要な分野に対する投資を狙いとした数多くの税制改正案を通じて、「購買可能性の改善と競争力の強化」という政府のコミットメントを、繰り返し述べている。
2017年予算は今後数年の州の成長を次のように予測している。
- 2017年の経済成長は全ての州の中でトップであると予測される。
- BC州経済の成長は、2017年、2018年は共に年率2.1%、2019年から2021年は年率2%である。
- 物・サービスの実質的な家計消費は2017年と2018年で2.6%増加すると予想される。
- BC州の小売売上高は2017年と2018年で3.7%増加すると予想される。
- 実質的なビジネスへの投資は、2017年に3.7%、2018年に4%増加すると予想され、中期的には年率3.5%程度で増加するとの見積りである。
- 人口増加率は2017年に1.2%(4.81百万人に到達)増加し、2018年以降も中期的に1.2%増加することが予想される。
- 雇用は2017年に1.2%の増加(約29300人)、2018年も1.2%の増加が見込まれており、中期的には年率1.1%で成長することが予想される。
- 実質的な物・サービスの輸出は、2017年に1.4%、2018年に1.3%、中期的には1.9%増加することが予想される。
以下は予算に含まれる税制改正に関するサマリーである。
個人所得税改正
メディカル・サービス・プラン(MSP)の保険料減額
2017年予算は、政府が将来MSP保険料を廃止しようとしている狙いを反映している。ただそのタイミングと仕組みは州政府の財政余力に依存する。
- 2017年予算によると、2018年1月1日から、MSP保険料は年間の純所得が120, 000ドル以下の世帯において50%減額される。50%の減額を受けるためには、世帯の登録が必要である。グループプランを通じて保険料を支払っている場合は、グループプランの管理者によって登録される。所管省庁は、現在MSP保険料補助を受けている個人及び家族を自動的に登録する。この改正は200万人のBC州住民に影響があり、個人では最大450ドル、家族では最大900ドルの年間保険料減額となる。
- 2018年1月1日より、MSP保険料が完全に免除される所得の水準が、独身の大人で24, 000ドルから26, 000ドルへ2, 000ドル緩和される。4人家族の場合は33, 000ドルから35, 000ドルに緩和される。
- 2016年9月に発表されたように、政府は2017年MSP保険料の最大金額を4%増額することをキャンセルした。2017年のMSP保険料の最大額は、従来通り大人一人月額75ドルである。
- 2017年予算によれば、年間120, 000ドル以上の所得がある住民に対しての負担軽減は無い。De Jong財務大臣は、さらなるMSP保険料の減額は、将来における州の財政余力次第であると述べた。
住居
2017年予算は、州における住宅取得を改善するための施策を導入する。
- ファーストタイムホームバイヤープログラムが適用可能となる住宅の公正価値の基準値が、475,000ドルから500,000ドルに緩和される。これは2017年2月22日以降に登録される住宅から有効となる。500,000ドルから525, 000ドルの住宅については、部分的な免除が適用される。
- 2017年1月10日に公表されたように、住宅所有者助成金を受けることができなくなる住宅価格の基準金額が1.2百万ドルから1.6百万ドルに緩和される。1.6百万ドルの基準値を超えた場合、評価額1, 000ドルごとに5ドルの助成金が減額される。
配当税額控除率の引下げ
- BC州は、すでに課税されている企業からの配当にさらに課税することによる二重課税を回避するため、配当税額控除を導入している。2017年以降の年度において、税制適格ではない配当に関する税額控除率は2.47%から2.18%に引き下げられる。この控除率引下げは、後述の中小企業の法人税率変更(2.5%→2%)に合せることが目的である。
- 税制適格な配当(すなわち中小企業の税率に適格でない配当所得)に関する配当税額控除については、変更は無い。
法人税改正
中小企業に対する法人税減税
現在、カナダ支配非公開企業(Canadian-controlled private corporations: CCPCs)に対する中小企業の法人税減税(Small Business Deduction: SBD)として、州法は認定された事業活動から生じる最初の500,000ドルの所得に対して、州法人税率を11%から2.5%に引き下げている。2017年予算では、2017年4月1日に中小企業に対するこの税率が2.5%から2.0%に引き下げられている。
- 税率変更の効力発生日をまたぐ税務年度においては、税率は2017年4月1日以降に終了する税務年度の日数に応じて日割り計算される。その結果、暦年における州の法人税の実効税率は2017年に2.12%、2018年には2.0%に低下する。連邦税と併せると、カナダ支配非公開企業に対する認定された事業活動から生じる最初の500,000ドルの所得に対する実効税率は、2017年に12.62%、2018年には12.5%に低下する。12.5%の税率は、アルバータ州およびサスカチュワン州に並び、カナダで2番目に低い税率である。
- 年額50万ドルの限度額は、関連する企業間、事業収益を生み出すパートナーシップのメンバー間で共有される。課税対象となる資本が1000万ドルから1500万ドルのカナダ支配非公開企業に対しては、中小企業の法人税減税の適用が除外され、これは関連企業も同様である。年額50万ドルを超える適格事業収益に対する税率は、11%(連邦税と合わせて26%)のまま変更されていない。
信用組合の追加減税
- 2013年以前、信用組合は所得の一部に対して連邦税・州税の優遇税率を適用できた。2013年に連邦は、優遇税制を5年かけて徐々に廃止することを明らかにした。2014年のBC州予算において、州税についても優遇税制が2016年から徐々に廃止されることが公表された。
- 2017年1月24日に公表されたとおり、2017年予算においては、信用組合の所得に対する小規模ビジネス優遇レートの廃止が凍結された。すなわちこの変更により、信用組合は2017年課税年度において優遇税制の80%を引き続き利用することができる。その結果、信用組合の適格所得に対する実効税率は2017年の暦年で18.9%(連邦15%、州3.9%)、2018年の暦年で18.8%(連邦15%、州3.8%)となる。
技術革新に対するインセンティブ
- 連邦とBC州政府は、カナダで科学的な研究・開発活動(SR&ED)を行っている企業に対して数多くのインセンティブを提供している。2017年予算では、BC州の研究開発税額控除(ITC)を2022年8月31日まで5年間延長する。BC州政府は、税制適格な支出に対して10%の税額控除を、税制適格な企業に対して還付可能な研究開発控除を提供する。税制適格な企業は、年間の研究開発費支出の最初の3百万ドルについて、還付可能な研究開発控除を受ける権利を有する。一般的に税制適格な企業は、関連会社と併せた課税所得が前年度の中小企業税額控除(SBD)の上限(2016年は500,000ドル)を超えず、かつ、関連会社と併せた課税資本が1,000万ドルを超えていないカナダ支配非公開企業である。
- 2010年8月31日以降にインタラクティブデジタルメディア製品を開発する企業で税制適格として登録した企業は、還付可能なBC州インタラクティブデジタルメディア税額控除 (IDMTC) を利用することができる。2017年2月22日以降、拡張現実または仮想現実の製品開発に従事するBC州の労働力もIDMTCの税制適格となり、給与または賃金の17.5%をIDMTCとして計算できる。さらに、2017年予算では、IDMTCの税制適格となるための要件である年間200万ドルの製品開発費要件を緩和した。
- IDMTCを適用するための拡張現実製品は、ユーザーの娯楽を主目的として、ユーザーの視野にデジタル情報を重ね合わせることにより、ユーザーの現実認識を強化することを目的とする製品が対象となる。同様に、仮想現実製品は、ユーザーの娯楽を主目的として、ユーザーが人工的な環境の中に入り込むこと(Immersion)を目的とする製品が対象となる。IDMTCは、例えば360度、270度、180度の視野やパノラマのビデオや映画など、限定的にしかその環境にユーザーが入り込むことができないものには適用されない。
- 中小企業ベンチャーキャピタルプログラムに参加しているインタラクティブデジタルメディア企業は、2017年2月21日以後、IDMTCを請求することができる。
ベンチャーキャピタル
- BC州のベンチャーキャピタル法人税額控除は、州に登録されたベンチャーキャピタルからの投資、もしくは税制適格な法人が適用可能である。ベンチャーキャピタル税額控除の金額は2017年以降3,500万ドルから3,850万ドルに拡大された。2017年予算によれば、最大1,170万ドルが税制適格な法人の追加的な資本調達に提供される予定である。このプログラムによれば、税制適格な投資家は、適格事業への投資の30%の税額控除を、年最大6万ドルまで享受することができる。新規設立法人がこれらの連邦税法上の税制適格な法人になるためには、設立2年以内かつ対象となる分野、すなわちコミュニティの多様化、インタラクティブデジタルメディア製品、クリーンテクノロジー、規定された製造や加工技術の開発、観光産業、特許技術の研究開発に関するビジネスを行う必要がある。
- ベンチャーキャピタル税額控除は、取得した関係会社株式の調整後取得価格を引き下げるものではなく、また課税所得に含める必要は無い。
鉱業税における優遇
- 課税年度にBC州に恒久的施設を有する企業がBC州内で行った税制適格な鉱山開発活動費用については、優遇措置として還付可能な税額控除を申請することができる還付可能なBC州鉱業開発税額控除は、課税年度にBC州に恒久的施設を有する企業がBC州内で税制適格な鉱業開発に対して支出した費用に対して適用することができる。税制適格な費用は2020年1月1日まで(2016年予算において2017年から2020年に延期された)に支払われたものである必要があり、BC州の鉱業資源の存在、場所、量、品質を決定するために発生した費用が対象となる。連邦所得税のもとで否認されたフロースルー鉱業関連支出は、このBC州税額控除の対象にはならない。2017年1月23日に公表されたように、2017年予算では鉱業開発税額控除の対象範囲を拡大し、2015年2月28日以降に発生した環境対策費用や地域コミュニティに関するコンサルティング費用も対象となる。この税額控除の率は20%であるが、山岳地帯における害虫 (Mountain-pine-beetle) が発生している地域においては30%となる。
- BC州鉱業開発税額控除は適用する課税年度の終了から36か月以内に請求しなければならない。しかし、2017年1月1日以降は請求可能な期間が36か月から18か月に短縮される。この税額控除はBC州の法人税を減少させる他の方法が無い範囲において還付可能であるが、繰越控除や繰戻還付を受けることはできない。
- 2017年1月23日に公表されたように、2017年予算においてはBC州鉱業フロースルー株式制度における税額控除は2017年の末まで延長された。
電力に対するPSTの段階的廃止
BC州は北米で唯一電力に対してPSTを課税している州である。2017年予算ではBC州の競争力を高めるために電力に対するPSTを徐々に廃止することが述べられている。
- 2017年10月1日より、電力の購入価格に対するPSTは現行の7%から3.5%に引き下げられる。さらに2019年4月1日よりにはPSTは電力に対して課税されなくなる。このPST廃止が完全に施行された場合、ビジネスに与える節税額はは年間1億5千万ドルである。この税制改正は、2016年予算により設立されたBC州の税制を近代化するための独立委員会であるCommission on Tax Competitivenessの勧告により実現した。
- Commission on Tax Competitivenessは、ビジネスにおいてPSTのさらなる改善が優先されるべきであるという重要な指摘を行っているが、2017年予算においてはこの知見を政府が認識していることが述べられている。2017年予算では、PSTや他のビジネスに関連する税のマイナス影響を緩和するための将来のステップについて述べているが、それは州の財政状態や競合する資金調達の優先順位を考慮しながら進めるとされている。
その他の税制改正
子供及び家族に関して
- 一人当たり上限250ドルのBack-to school税額控除など、子供や家族を支えることを目的としたたくさんの小規模な税制改正が公表された。このBack-to school税額上のの導入により、従来の教育税額控除は2017年1月1日に廃止された。未使用の教育費は2018年以降に繰越され、それ以降の課税年度に請求することができる。
自動車燃料税
- 2017年10月1日より、線路の上を走行する全ての鉄道や車両の内燃機関に使用される燃料用の天然ガスについて、1リットルあたり3セントの税が免除される。
たばこ税
- 2017年10月1日より、たばこ200本すなわち1カートンに対するたばこ税が47.80ドルから49.40ドルに値上げされる。きざみたばこに対する税は、1グラム当たり23.9セントから24.7セントに値上げされる。
訓練税額控除
• BC州訓練税額控除は2020年末まで3年間延長される。BC州に恒久的施設を持つ個人事業主、パートナーシップおよび企業は、BC Industry Training Authorityが管理する所定の認定プログラムに登録された従業員への給与・賃金に関して、還付可能な税額控除を利用できる。利用できる税額控除には、基礎税額控除、完了税額控除および強化税額控除がある。
本内容は、デロイトカナダによって配信されたCanadian tax alert の日本語参考訳です。原文(英語版)はこちらをご参照ください。
詳細な情報はカナダ財務省のウェブサイトMinistry of Finance websiteをご参照ください
Recommendations
Directors’ Series
Helping Canadian corporate directors stay informed