Posted: 30 Oct. 2020 5 min. read

多様なメンバー・視点がイノベーションを生む Panel Promise

シリーズ: Diversity & Inclusion

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各界で加速するジェンダー平等への動き

2020年(令和2年)9月16日、菅義偉氏を第99代内閣総理大臣として、菅義偉内閣が成立した。令和となって初めて組閣された内閣であり、いわば新時代の内閣ともいえるだろう。

その顔ぶれが発表された際、様々なメディアやSNSでは閣僚の世代や女性比率について多くの言及がなされていた。中でも、教育を中心に各方面で多様性の推進が著しいフィンランドの閣僚の集合写真と、菅内閣の集合写真を比較した記事を見かけた人は多いのではないだろうか。フィンランドの内閣は9月末日時点で19人中11人が女性であり、2019年12月に34歳で首相に就任したサンナ・マリン首相は歴代3人目の女性首相である。

メディアは揃って指摘する。「菅内閣の閣僚平均年齢は60.38歳、閣僚20名のうち女性は2人」「閣僚が高齢男性に偏っている日本とは大違い」と――。総論としては、「1億2千万人の国民の属性や多様性が反映されていない内閣が、どうやって国民の声を反映して国家を運営していくのか?」という観点からの疑問であろう。

グローバルでは、政界のみならずあらゆる業界・分野で多様化を推し進める声が挙がっている。

9月には、米アカデミー賞®を主催する映画芸術科学アカデミーが、「作品賞にノミネートされるための条件」として多様性の項目を設置した。これにより2024年から女性や人種マイノリティーなどを積極的に起用することなどが条件となるが、背景にあるのは「有色人種の監督・俳優による作品のノミネートや受賞が少ない」という長年の批判である。2016年には俳優部門にノミネートされた20名全員が白人だったことから#OscarsSoWhiteというハッシュタグが生じたほどだ。

現実は、「創作物」よりもバラエティーに溢れている。メディアがインタラクティブさを擁し、昔よりも映画が身近になった分、リアルと比較した「偏りによるウソくささ・入り込めなさ」が気になってしまうというわけだ。

また、9月の世界経済フォーラム公式サイトには「従来、鳥はオスのみがさえずるとされていたが、ここ20年ほどでメスもさえずる事が明らかになった。女性がこの分野の研究に参入したことにより、メス鳥の研究が進んだためである」という内容の記事が掲載され、話題となった。「研究」さえも多様な人材を基盤としなければ視点に偏りが生まれ、「見落とし」が生じてしまうのだ。

 多様性推進へ向けた「Panel Promise」の導入

デロイト トーマツ グループで今年2月に導入した「Panel Promise」も、この「視点の多様化」に起因する。Panel Promiseとは、アジアパシフィック地域で開催されるイベント、フォーラム等のパネルにおいて、バランスのとれた比率である「40%(男性):40%(女性):20%(多様性推進の調整枠)」実現を目指す施策である。当グループのメンバーが登壇する社内外すべてのイベント・フォーラム等が対象であり、外部のイベント・フォーラム等に協賛する場合にも、主催者側にPanel Promiseの履行を要請する、としている。実現が難しい場合は参加辞退を検討することもあり得る、当グループとしてもコミットメントの強いものだ。

ジェンダー平等の観点はもちろん、「20%: 多様性推進の調整枠」では、肌の色などの「目にみえる多様性」・経歴などの「目に見えない多様性」双方を想定しており、これまでプレゼンスが低かった属性・特性の人を含むことで、議論や視点の多様性をさらに推進したいという思いがある。例えば、これまでイベントのテーマや規模によっては「日本人の役員クラスの男性」のみが壇上に上がり、冒頭で述べた日本の内閣の顔ぶれとさほど変わらない状況が続いていたことも多かった。ここに若手メンバーが加わり議論を展開することで、若年層オーディエンスとのつながりが生まれ、より多角的な議論が生まれるのではないだろうか。

Panel Promiseが目的とするのは、単なる「数の観点での多様性確保」ではない。「多様性があることで生まれる新たな価値や、これまでにない視点は何か」という新たな観点からアプローチをすることで、イノベーティブで質の高い対話や議論を促すことが本Panel Promiseが最終的に目指すところだ。よって「この分野の専門家はほとんど男性しかいない」という想定問答は織り込み済みであり、「女性の専門家」がいないのであれば、なぜいないのか分析し、育成する以外にも、そもそも「専門家」の定義についての再考察が必要になることもあるだろう。

イノベーションに繋がるダイバーシティ&インクルージョン

奇しくもPanel Promiseローンチ直後にコロナ禍が拡大し、「イベントのあり方」ひいては「イベントの意義」が問われることとなったわけであるが、あらゆる「情報」が各所にあふれる現代において、イベントやフォーラムに求められるのは「情報」そのものよりも、「視点」や「価値」、「気づき」ではないだろうか。そのためには、【同じような属性や、経験、価値観をもつメンバー】よりも【あらゆる属性、経験、価値観をもつメンバー】の方が、より多くの「視点」や「価値」、「気づき」が得られるはずだ。

多様化が推進された社会においては、公正で多様であることは“当然”のこととされ、「多様性が無い」という状況からは、冒頭の閣僚メンバーのように「違和感」をもたれ、そして“排他的である”という言外のネガティブメッセージを受け取るようになってきている。

性別、年齢、人種、文化など、「違い」を構成する要素は多様だが、「違い」を「違和感」ではなく、「強み」「価値」にしていくことこそが、これからの経済社会の目指すべき姿であろう。

デロイト トーマツ グループ リーダーのPanel Promiseへのコミットメントを示す署名
デロイト トーマツ グループ リーダーのPanel Promiseへのコミットメントを示す署名

 

執筆: デロイト トーマツ グループ Diversity & Inclusion チーム

激変する市場環境の中、自社と顧客の成長を牽引するための経営戦略の1つとして経営層と一体になりDiversity&Inclusionを推進すべく2017年に結成されたチーム。ジェンダー、国籍・カルチャー、LGBT等の個人の多様性や違いを強みするための施策を幅広く立案・実行し、社内外に広く発信中。

「=」をモチーフとしたロゴは、デロイト グローバル共通のDiversity&Inclusionコンセプトである「ALL-IN」をイメージしたもの。

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