Posted: 09 Nov. 2021 4 min. read

サーキュラーエコノミー実現に必要なブロックチェーン技術の活用

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気候変動という世界規模の課題を解決するには、個々の企業や業界単独での取り組みには限界がある。中でも再エネの循環を含むサーキュラーエコノミー(資源循環)を実現するためには、サプライチェーン全体での製品・サービスに関する透明性や信頼性に裏付けられたトレーサビリティが欠かせない。それを可能にする技術として、組織や業界の垣根を超えて安全に情報共有ができるブロックチェーンの活用が進んでいる。

 

ブロックチェーンのメリット

ブロックチェーンの中でも特に「プライベートチェーン」では、特定の参加者間での情報共有とトレーサビリティが可能になっている。サーキュラーエコノミーに当てはめて考えると、データ改ざんを防ぎ、信頼性を担保するなど、ブロックチェーンはモノの流れに透明性を確保し、お金や価値の流が開かれた社会を実現していく可能性を秘めている。また、環境配慮を偽装する「グリーンウォッシュ」や「サーキュラーウォッシュ」などの問題も、ブロックチェーンの持つ透明性・信頼性・トレーサビリティを活かして回避することができるだろう。このようにブロックチェーンを活用したプラットフォームを展開することで、多くの企業が気候変動問題の解決に取り組みやすくなると期待されている。代表的な取り組みを2つ紹介する。

REBO Smart Bottleを通じた海洋プラスチック削減の仕組み

REBO Smart Bottleはユーザーの水分摂取量を計測するセンサーをキャップに搭載したボトルだ(ちなみに、このボトルに使われるキャップやステンレスなどの素材はリサイクル可能なものが使われている)。このボトルを利用してユーザーが水分を摂取すると、その水分量だけペットボトルの利用を節約したものと換算される。ボトルからの水分摂取量はアプリによって管理されており、ブロックチェーンにデータが蓄積されるようになっている。そして利用せずに済んだペットボトルの製造・流通から廃棄にいたるまでに発生するCO2が、世界的な認証機関であるGold Standardによる認証を受けたカーボンクレジットに変換される。スポンサー企業はクレジットの購入を通じて、新興国におけるプラスチック廃棄物収集の資金を提供する。現地で雇用が創出されるだけではなく、海洋プラスチック削減にも貢献する仕組みである。

サーキュライズによるサプライチェーンの透明化の取り組み

オランダのスタートアップ、サーキュライズではトレーサビリティ管理プラットフォームを活用したサプライチェーンの透明化に取り組んでいる。機密情報を明かさずに特定の事項を証明できる技術、「ゼロ知識認証」を活用し、プラットフォームをブロックチェーンによって構築・維持している。利用している企業としては競争力の源泉であるサプライチェーンの情報を公に共有しなくても、透明性の高いトレーサビリティ関連情報を共有することができる。すでにサーキュライズと連携しているポルシェでは、自動車に利用されている素材やその出所、製造・輸送工程といった情報をアプリで把握でき、CO2排出量・削減量といった環境負荷や削減価値も可視化できる。こうした取り組みを通じた消費者の行動変容も期待されている。サーキュライズは日本・アジアでの展開にも注力しており、丸紅と業務提携して化学品分野でのサーキュラーエコノミー実現に向けた実証実験を進めている。

気候変動の解決に向けて持続的な発展が求められる中、企業は物資やエネルギーなどの資源循環を高めてく必要がある。情報共有やトレーサビリティに優れたブロックチェーンは、サーキュラーエコノミーの実現に向けて不可欠な技術である。ブロックチェーンをうまく取り込むことで、企業活動の透明性・信頼性の強化と、持続可能な社会を同時に実現していくことができるだろう。

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前木 和/Wataru Maeki

前木 和/Wataru Maeki

デロイト トーマツ グループ マネジャー

主に官公庁・民間企業向けに、環境価値に係る制度設計や制度へのBlockchain等のデジタル技術活用戦略の検討、民間向け気候変動経営コンサルティング業務に従事。TCFDにも精通し、気候変動シナリオプランニング支援ツールの開発も手掛ける。