Posted: 22 Mar. 2023 2 min. read

第1回 クラウド活用に求められている対応とは何か

【シリーズ】真のクラウド活用

日本企業のクラウド活用の現状は、欧米だけでなくアジア諸国に比べても立ち遅れている。このままでは世界から取り残される恐れすらあるのが実情だ。当社がクラウド移行の準備状況を国・地域別に点数化した「クラウドレディネススコア」で、日本はアジア太平洋地域で最下位となっている。


原因は、クラウドの持つ可能性を正しく理解しないまま、企業のIT部門が社内サーバー上のソフトウエアをクラウド上へ乗せ換えることだけにほとんどの力を割いてしまっている点にある。

それでもコスト削減効果はあるが、クラウドの本質的な利点は、迅速かつ柔軟で拡張可能なアーキテクチャーでビジネスの変革を早期に実現することにある。その意味ではクラウドを十分に活用できていない。

「クラウドは戦国時代の鉄砲伝来に匹敵する大きな変革である」との見方もできそうだ。鉄砲伝来により、その後の戦術や体制、個人に必要な技量は大きく変わった。そこにいち早く対応した織田信長が天下統一に近づいたのは多くの人々が知るところだろう。

クラウド活用に求められている対応とは何か。まずクラウドの特性を理解する必要がある。クラウドを使って高品質なシステムを迅速に開発するポイントは、できるだけ「つくりこまない」ことにある。アマゾン、グーグル、マイクロソフトに代表されるプラットフォーマーのクラウドは日々進化しており、それを最大限に活用することが重要だ。

「モノ」売りから「コト」売りへの変革に代表されるように、新型コロナウイルスの流行前からビジネスのあり方が大きく変わろうとしていたが、コロナ禍でその勢いが増している。こうした状況下で必要なのは、変革に対して迅速かつ柔軟に対応することである。

クラウドはその点、迅速性や柔軟性に優れたツールであり、クラウドのパワーを最大限に活用するアーキテクチャーの構築に向けて、ビジネス部門とシステム部門が一体となってプロセスを進めていく必要がある。

技量の面では、クラウドの特徴を理解してビジネスに適合するようにアーキテクチャーを組み上げる力、迅速に開発を実行する能力、さらに複数のクラウドを連携させて一つのビジネスに仕立てる能力が必要である。世の中に存在するクラウドサービスを最大限に活用して、迅速にビジネスを再構成する力が求められているのである。

本連載では、クラウドの本質を理解して真に活用できることを目指して、考えるべきポイントなどについて、様々な視点から解説していく。
 

本稿は日経産業新聞に2022年11月15日~12月6日まで掲載された寄稿を一部改訂したものです。

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根岸 弘光/Hiromitsu Negishi

根岸 弘光/Hiromitsu Negishi

デロイト トーマツ コンサルティング 執行役員

大手システムインテグレーター、複数のコンサルティング会社を経て現職。デジタル時代のEnterprise Architecture設計に強みを持つ。また、グローバルサプライチェーン改革、グローバル営業改革、ERP導入等のオペレーション変革、システム構造改革の経験を多数持つ。 関連するサービス サブスクリプションビジネスモデルへの変革支援 代表的なプロジェクト ■ デジタル・プラットフォーム構築構想・企画・実行支援 自動車メーカーにおけるコネクティド基盤構築支援 家電メーカーにおけるIoTプラットフォーム構築支援 ■ レガシーモダナイゼーション構想・企画支援 自動車部品メーカーにおける基幹システム刷新の構想・企画支援 ■ サブスクリプションビジネス企画・設計・導入支援 通信メーカー、事務機器メーカーにおけるサブスクビジネス推進支援 ■ エンタープライズ・アーキテクチャーデザイン支援 複数事業におけるEA設計とアーキテクチャー改革の計画策定支援 ■ 欧州販社システム構造改革 事務機器メーカーの欧州15販社の全システム機能の標準化・統合。MDM, ERP,CRM, SFA, Service Management, e-Commerce, 各種OAツール等の販社全機能のプロセス標準化、導入計画策定支援 ■ グローバル営業改革/標準システム導入展開 事務機器メーカーのグローバル営業プロセス標準化・効率化の業務改革のグランドデザイン、業務設計、システム開発、グローバル展開、現場意識改革、現場定着化実施(スクラッチ開発)