Posted: 22 Mar. 2023 2 min. read

第2回 サブスクビジネスへの転換に見るクラウド活用のポイント

【シリーズ】真のクラウド活用

クラウド活用の利点は、ビジネスの変革を早期に実現する点にある。わかりやすい事例がサブスクリプションビジネスへの転換だ。

サブスクは、単なる従量課金や月額定額課金のビジネスを指すのではない。スマホアプリや家電製品や自動車などのIoT(機器を使って、企業が消費者とつながり、消費者の利用状況を把握してアプリや機器、サービス自体を改善しながら、消費者に解約されないよう変革し続けるビジネスなのである。

 

特に重要なのが、利用状況を把握し改善するまでの「スピード」だ。いかにビジネスの機会を捉え迅速に変革できるかが、生き残りの必要条件となる。

サブスク実現には、いくつかの仕組みが必要になるが、いずれにも構築を支えるクラウドサービスがある。

まず、消費者やIoT機器、加入サービスの情報を管理する仕組みが要る。情報家電の購入時にユーザー登録や製品のシリアルナンバーを登録したことがあると思う。特定のサービス加入時にはそれも登録しているはずだ。この仕組みを実現するには米セールスフォースが提供しているような顧客情報を管理する業務機能を実装するクラウドの活用が考えられる。

次に必要となるのが、アプリやIoT機器から利用状況のデータを収集・分析する仕組みである。必要に応じて結果を消費者に情報配信もする。最近はユーザーごとのパソコン利用時間などの情報配信も始まっている。米国のアマゾン、グーグル、マイクロソフトなどのプラットフォーマーが提供する、IoT機器と連携する「部品」を提供するクラウドサービスや、収集したデータを分析する業務機能を実装するクラウドサービスがある。

3つ目は、従量課金の計算をしたり月額の請求書を作成したりする仕組みだ。サブスクのサービスには様々な料金体系があり、多様な機能が求められる。例えば「契約月から1カ月は無料」「今契約したら、半年は料金50%オフ」などにも対応しなければならない。サブスクの運用管理クラウドを手掛ける米ズオラが提供しているような多様な料金体系に対応した契約管理や課金計算の業務機能を実現するクラウドサービスがある。これを活用すれば早期にビジネスの立ち上げができるだろう。

4つ目は、スマホアプリやIoT機器、サービス自体を改善する仕組みである。改善に半年や1年かけていては消費者は離れてしまう。スピードが重要であり、迅速な開発手法や開発自動化のツールなどが大きな武器となる。その点、プラットフォーマーなどが開発の効率性を高め、人為的な間違いが生じるリスクを最小化するような開発自動化機能をクラウドサービスで提供している。もちろんこの開発機能を有効活用するためには、IT(情報技術)人材や組織の考え方の変革も必要となってくる。

既存のクラウドサービスを活用することで、サブスクビジネスの実現スピードを向上させることができるようになる。活用が広がるクラウドサービスを利用することは品質の向上にもつながる。

クラウド活用の意味は、社内のサーバー上のソフトウエアをクラウド上に乗せ換えることではないのだ。

 

本稿は日経産業新聞に2022年11月15日~12月6日まで掲載された寄稿を一部改訂したものです。

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根岸 弘光/Hiromitsu Negishi

根岸 弘光/Hiromitsu Negishi

デロイト トーマツ コンサルティング 執行役員

大手システムインテグレーター、複数のコンサルティング会社を経て現職。デジタル時代のEnterprise Architecture設計に強みを持つ。また、グローバルサプライチェーン改革、グローバル営業改革、ERP導入等のオペレーション変革、システム構造改革の経験を多数持つ。   関連するサービス サブスクリプションビジネスモデルへの変革支援   代表的なプロジェクト ■ デジタル・プラットフォーム構築構想・企画・実行支援 自動車メーカーにおけるコネクティド基盤構築支援 家電メーカーにおけるIoTプラットフォーム構築支援 ■ レガシーモダナイゼーション構想・企画支援 自動車部品メーカーにおける基幹システム刷新の構想・企画支援 ■ サブスクリプションビジネス企画・設計・導入支援 通信メーカー、事務機器メーカーにおけるサブスクビジネス推進支援 ■ エンタープライズ・アーキテクチャーデザイン支援 複数事業におけるEA設計とアーキテクチャー改革の計画策定支援 ■ 欧州販社システム構造改革 事務機器メーカーの欧州15販社の全システム機能の標準化・統合。MDM, ERP,CRM, SFA, Service Management, e-Commerce, 各種OAツール等の販社全機能のプロセス標準化、導入計画策定支援 ■ グローバル営業改革/標準システム導入展開 事務機器メーカーのグローバル営業プロセス標準化・効率化の業務改革のグランドデザイン、業務設計、システム開発、グローバル展開、現場意識改革、現場定着化実施(スクラッチ開発)