Posted: 22 Mar. 2023 2 min. read

第3回 クラウドインテグレーションの要諦

【シリーズ】真のクラウド活用

ビジネスを早期に立ち上げるためには、自社ですべてを構築することは得策ではない。サブスクリプション(継続課金)サービスは、様々なクラウドサービスを活用することで実現スピードを向上できることを紹介した。今回はクラウドサービスを活用する際にポイントとなる機能分割の考え方と、複数のクラウドサービスを束ねるクラウドインテグレーションについて、その要諦を挙げたい。

 

他社が提供する様々な「機能」を活用してビジネスを開発した事例に、配車サービスのウーバーのアプリがある。配車サービスと言うと、日本ではタクシーアプリのイメージが強いかもしれないが、ウーバーはもともとフリーランスのドライバーを手配するライドシェアのサービスだ。ウーバーのアプリは目的地に行きたい人と、その人を乗せて目的地に運ぶ車のドライバーとのマッチングが肝となる。

ウーバーのアプリは、ウーバーがすべてを自社開発したのではない。このアプリの機能は、主に(1)地図(2)通話・ショートメッセージサービス(3)決済(4)人と車のマッチング――と分類できるが、(4)以外は他社が提供する機能をAPIを使って情報連携させて活用している。つまり、サービスの肝となる部分以外は他社が提供する機能をうまく組み入れることで、開発費用や開発時間を削減し、ビジネスを迅速に立ち上げている。

サブスクの迅速な実現にはクラウドサービスの活用が考えられるが、そのためにはサブスクのサービスを、(1)消費者情報管理(2)データ収集・分析(3)従量計算・請求(4)開発機能――と4つの機能に分割して考える必要がある。そしてそれぞれの機能を提供するクラウドサービスをうまく組み合わせて、一つのビジネスを実現する仕組みに仕立てるのである。

分割することの利点は「より先端技術を採用することができる」ことにある。クラウドサービスは日々進化しているので、より良いクラウドサービスが出てきたら、乗り換えることができるからである。例えば、今より良いデータ収集・分析のサービスが出てきたときには、新しいものに乗り換えて、最新のものを利用するといったことである。

ここまで「他社の機能の活用」と「複数のクラウドサービスを統合して活用」について解説してきたが、そこで重要な要素となるのが、APIを使った連携である。

複数の機能を統合して活用することになるため、他社のそれぞれの機能やクラウドサービスの性能差を考慮しないと、全体として見た時に、ビジネス上運用に耐えられないような状況になってしまう場合がある。

それを回避するためには、APIの使用頻度や応答の様子などを管理し、改善に向かえるような機能も備えておくことが必要となる。これについては、第5回、第6回で解説する。

クラウド活用では、自社が必要とするビジネス上の要件をにらみながら、他社が提供する機能やクラウドサービスなど社外にある利用可能な機能を積極的に取り入れて統合し、迅速に活用することが重要である。

次回からは、クラウド活用に向けて必要な取り組みについて、詳細に解説していく。

 

本稿は日経産業新聞に2022年11月15日~12月6日まで掲載された寄稿を一部改訂したものです。

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根岸 弘光/Hiromitsu Negishi

根岸 弘光/Hiromitsu Negishi

デロイト トーマツ コンサルティング 執行役員

大手システムインテグレーター、複数のコンサルティング会社を経て現職。デジタル時代のEnterprise Architecture設計に強みを持つ。また、グローバルサプライチェーン改革、グローバル営業改革、ERP導入等のオペレーション変革、システム構造改革の経験を多数持つ。 関連するサービス サブスクリプションビジネスモデルへの変革支援 代表的なプロジェクト ■ デジタル・プラットフォーム構築構想・企画・実行支援 自動車メーカーにおけるコネクティド基盤構築支援 家電メーカーにおけるIoTプラットフォーム構築支援 ■ レガシーモダナイゼーション構想・企画支援 自動車部品メーカーにおける基幹システム刷新の構想・企画支援 ■ サブスクリプションビジネス企画・設計・導入支援 通信メーカー、事務機器メーカーにおけるサブスクビジネス推進支援 ■ エンタープライズ・アーキテクチャーデザイン支援 複数事業におけるEA設計とアーキテクチャー改革の計画策定支援 ■ 欧州販社システム構造改革 事務機器メーカーの欧州15販社の全システム機能の標準化・統合。MDM, ERP,CRM, SFA, Service Management, e-Commerce, 各種OAツール等の販社全機能のプロセス標準化、導入計画策定支援 ■ グローバル営業改革/標準システム導入展開 事務機器メーカーのグローバル営業プロセス標準化・効率化の業務改革のグランドデザイン、業務設計、システム開発、グローバル展開、現場意識改革、現場定着化実施(スクラッチ開発)