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第39回 サステナビリティ基準委員会(SSBJ)での審議の概要
サステナビリティ基準委員会(SSBJ)は、2024年9月19日に第39回サステナビリティ基準委員会を開催し、「ガイダンスの情報源」における「SASBスタンダード」及び「産業別ガイダンス」の取扱い等、三つの論点について審議を行いました。9月から本格的に公開草案へのコメントの再審議が始まっており、再審議の内容について今後速報ベースで概要をお伝えしていきます。
2024年9月24日
2024年9月19日に第39回サステナビリティ基準委員会(以下「SSBJ」という)が開催され、以下の三つの論点が審議されました。
【第39回SSBJで審議された事項】
(1) 「ガイダンスの情報源」における「SASB スタンダード」及び「産業別ガイダンス」の取扱い(審議事項 A1-2)
(2) IFRS S1 号 B4 項及び B5 項に相当する定めの取扱い(審議事項 A1-3)
(3) ISSB 基準と差異になり得ると指摘があったもの(審議事項 A1-4)(※1)
(※1)審議事項A1-4については、資料は非公開
上記事項は、2024年3月29日に公表された公開草案(※2)に寄せられたコメント(コメント期限2024年7月31日)について、SSBJ事務局が分析の上、コメントへの対応につき個別に提案を行ったものです。
(※2)2024年3月29日に公表された三つの公開草案
- サステナビリティ開示ユニバーサル基準公開草案「サステナビリティ開示基準の適用(案)」(以下「適用基準案」という)
- サステナビリティ開示テーマ別基準公開草案第1号「一般基準(案)」(以下「一般基準案」という)
- サステナビリティ開示テーマ別基準公開草案第2号「気候関連開示基準(案)」(以下「気候基準案」という)
(1) ガイダンスの情報源における「SASB スタンダード」及び「産業別ガイダンス」の取扱い(審議事項 A1-2)
【事務局提案】
本公開草案に寄せられたコメントのうち、「ガイダンスの情報源」における「SASB スタンダード」及び「IFRS S2号の適用に関する産業別ガイダンス」(以下「産業別ガイダンス」という)の取扱いについて、事務局より以下の提案がされました。
① サステナビリティ関連のリスク及び機会の識別、並びに、識別したリスク及び機会に関する重要性がある情報の識別(適用基準案第45項~第46項、第54項~第55項)
- 「SASBスタンダード」(2023年12月最終改正)を「参照し、その適用可能性を考慮しなければならい」情報源とする。(本公開草案から変更なし)
- IFRS財団により「SASBスタンダード」が改正された場合、IFRS財団が公表する「SASBスタンダード」(2023年12月最終改正)に代えて、改正後の「SASBスタンダード」を参照し、その適用可能性を考慮することができるとする。(本公開草案から変更なし)
- 「ISSBが公表する『IFRSサステナビリティ開示基準』 及び付属するガイダンス」を「参照し、その適用可能性を考慮することができる」情報源に追加する。(本公開草案から変更あり)
② 気候関連のリスク及び機会の識別、並びに、開示する産業別の指標の決定(気候基準案第17項、第89項)
- 「産業別ガイダンス」(2023年6月公表)を「参照し、その適用可能性を考慮しなければならい」情報源とする。(本公開草案から変更なし)
- 「SASBスタンダード」(2023年12月最終改正)についても、「適用基準」の適用を通じて「参照し、その適用可能性を考慮しなければならい」情報源とする。(本公開草案から変更なし)
- IFRS財団により「SASBスタンダード」が改正された場合、IFRS財団が公表する「SASBスタンダード」(2023年12月最終改正)に代えて、改正後の「SASBスタンダード」を参照し、その適用可能性を考慮することができるとする。(本公開草案から変更なし)
- 「ISSBが公表する『IFRSサステナビリティ開示基準』 及び付属するガイダンス」を「参照し、その適用可能性を考慮することができる」情報源に追加する。(本公開草案から変更あり)
【審議結果】
検討の結果、事務局の提案が基本的に支持され、本公開草案の最終版に反映される予定です。
また、適用可能性を考慮する際の文書化に関する記述(適用基準案BC79項からBC81項)について、サステナビリティ開示基準の最終化にあたり、本公開草案における当該記述を削除し、補足文書又は解説記事において当該文書に関する記述を提供すること(本公開草案からの変更)が提案されました。
(2) IFRS S1号B4項及びB5項に相当する定めの取扱い(審議事項 A1-3)
【事務局提案】
本公開草案に寄せられたコメントのうち、次のIFRS S1号B4項及びB5項に相当する定めを、適用基準の結論の背景に取り入れることが、事務局より提案されました。
- 企業がその活動及びアウトプットによって依存し、また影響を与える資源および関係は、自然なもの、製造されたもの、知的なもの、人的なもの、社会的なもの又は財務的なものなど、さまざまな形をとり得る。これらは、企業の労働力、ノウハウ又は組織プロセスなど、内部的なものであることもあれば、企業がアクセスする必要がある材料及びサービス、又はサプライヤー、流通業者及び顧客との関係など、外部的なものであることもある。さらに、資源および関係には、企業の財務諸表において資産として認識される資源および関係が含まれるが、これらに限定されない。
- 企業の依存関係及びインパクトは、当該企業が直接関与する資源や、当該企業の直接的な関係に限定されない。それらの依存関係及びインパクトは、バリュー・チェーンを通じての当該企業の資源および関係にも関連する。例えば、企業の供給チャネル及び流通チャネル、企業の製品の商品及び廃棄の影響並びに企業の資金源及び投資(関連会社及び共同企業への投資を含む。)に関連する可能性がある。企業のバリュー・チェーンを通じてのビジネス・パートナーがサステナビリティ関連のリスク及び機会に直面した場合、企業自身も関連する結果にさらされる可能性がある。
【審議結果】
検討の結果、事務局の提案が基本的に支持され、本公開草案の最終版に反映される予定です。
IFRS S1号B4項及びB5項は、開示の要求事項そのものではなく、「資源および関係」や「依存関係及びインパクト」という概念の補足説明と考えられます。適用基準案にIFRS S1号B4項及びB5項に相当する定めを取り入れることで、ISSB基準と異なる定めとする意図があるとの誤解を回避し、より有用な情報が開示される可能性があるため、適用基準案を修正し、結論の背景に追加することが考えられるとしたものです。
(3) ISSB 基準と差異になり得ると指摘があったもの(審議事項 A1-4)
【事務局提案】
ISSB基準と差異になり得ると指摘のコメントがあった項目のうち、上記(2)のIFRS S1号B4項及びB5項以外の項目のコメントへの対応について、事務局より以下の提案がされました。
① 本公開草案から変更なし
- 法令との関係
- 親会社の財務情報の報告期間と子会社等の財務情報の報告期間が異なる場合
- 比較情報
② 本公開草案の記載を変更するのではなく、追加的なガイダンスを公表すべきかどうかを検討してはどうか
- 温室効果ガス排出の測定アプローチに関する用語の定義
- スコープ3測定フレームワーク
③ ISSB基準と同じ要件となるように公開草案の記載を修正
- 商業上の機密情報
- 「つながりのある情報」に関する説明及び例示
- バリュー・チェーンの範囲の決定
- 識別したリスク及び機会に関する重要性がある情報の識別
- 相互参照の要件
- 準拠表明
- 戦略に関する気候関連開示における指標の開示
- 翌年次報告期間において、関連する財務諸表に計上する資産及び負債の帳簿価額に重要性がある影響を与える重大なリスクがあるもの
- 気候関連における「リスク管理」の開示目的
- 企業が用いるリスク管理プロセスを変更していない場合
【審議結果】
検討の結果、事務局の提案が基本的に支持され、本公開草案の最終版に反映される予定です。
ただし、「親会社の財務情報の報告期間と子会社等の財務情報の報告期間が異なる場合」について、親会社の報告期間と子会社の報告期間との際の期間に生じた重要な取引を、子会社の財務情報に反映させる場合の取扱いについては、基準上の対応又は補足文書等への記載の要否を検討することとなりました。
参考:第39回サステナビリティ基準委員会の概要 (ssb-j.jp)
サステナビリティ開示・保証の規制動向
日本・ヨーロッパ・南北アメリカ・アジアパシフィックにおけるサステナビリティ開示・保証の規制に関する最新動向を取りまとめています。