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SSBJがサステナビリティ開示基準の公開草案を公表し、金融審議会ではサステナビリティ情報の開示・保証の制度化の議論をスタート

2024年3月29日に、サステナビリティ基準委員会(SSBJ)は日本のサステナビリティ開示基準の公開草案を公表しました。

2024年4月25日

2024年3月29日に、サステナビリティ基準委員会(SSBJ)は日本のサステナビリティ開示基準の公開草案(以下「SSBJ公開草案」)を公表しました。

日本のサステナビリティ開示は、従来から法定開示書類の外側の任意開示書類における企業の自主的な取組みとして、グローバルに事業展開する企業を中心に拡充が進められてきました。特に気候変動については、TCFD提言を活用した開示の実務が、コーポレートガバナンスコードの改訂に後押しされる形で普及してきています。こうした任意開示書類における情報拡充の動きと並行して、法定開示書類である有価証券報告書におけるサステナビリティ情報の開示拡充についても本格的な議論が行われるようになり、2022年6月に公表された「金融審議会ディスクロージャーワーキング・グループ報告-中長期的な企業価値向上につながる資本市場の構築に向けて」において、有価証券報告書の中に新たにサステナビリティに関する記載欄を設けることが提言されました。この提言を踏まえて2023年1月に金融庁から公表された「企業内容等の開示に関する内閣府令等の一部を改正する内閣府令」(以下「改正開示府令」)において、2023年3月期の有価証券報告書から、新たな記載欄として「サステナビリティに関する考え方及び取組」が設けられ、法定開示書類におけるサステナビリティ開示の義務化が始まりました。

とはいえ、改正開示府令はTCFD提言に基づく4つの柱や人的資本に関する最低限の開示要求事項を定めているのみで、有価証券報告書の「サステナビリティに関する考え方及び取組」の開示は、企業の取組み状況に応じた柔軟な開示が認められることとされています。

今回公表されたSSBJ公開草案が最終化されると、有価証券報告書の「サステナビリティに関する考え方及び取組」の記載は、SSBJ基準に基づく開示が義務付けられることになると考えられています。

SSBJが公表した公開草案は以下の3つから構成されています。

  • サステナビリティ開示ユニバーサル基準公開草案「サステナビリティ開示基準の適用(案)」
  • サステナビリティ開示テーマ別基準公開草案第1号「一般開示基準(案)」
  • サステナビリティ開示テーマ別基準公開草案第2号「気候関連開示基準(案)」

このうち、サステナビリティ開示ユニバーサル基準公開草案「サステナビリティ開示基準の適用(案)」及び、サステナビリティ開示テーマ別基準公開草案第1号「一般開示基準(案)」の2つを合わせたものがIFRS S1に相当し、サステナビリティ開示テーマ別基準公開草案第2号「気候関連開示基準(案)」がIFRS S2に相当するとされています。SSBJのスタンスとしては、基本的にIFRS S1及びS2の内容を取り入れることを提案しています。ただし、国際的な基準との整合性を図る程度及びその方法に関しては、より国際的な基準に近い方が良いという考え方と、国際的な基準との整合性を保ちつつも、我が国独自の状況を勘案して国際的な基準の定めを修正した選択肢を追加することが良いという考え方が示され、一部の項目についてSSBJ委員間での意見が分かれました。公開草案おいては多数派の意見に基づき基準案が作成されているものの、結論の背景において少数派の意見やその背景が示されており、公開草案に対するコメントを検討する際に参照できるようになっています。

また、SSBJ事務局は、IFRSサステナビリティ開示基準とSSBJ公開草案との差異等の一覧、及びIFRSサステナビリティ開示基準とSSBJ公開草案の項番対照表も公表しています。
 

SSBJ公開草案の公表直前の3月26日には、金融審議会「サステナビリティ情報の開示と保証のあり方に関するワーキング・グループ」(第1回)が開催されました。このワーキング・グループ(以下「WG」)では、我が国のサステナビリティ情報の開示と保証の制度化について、今後継続的に議論が行われる予定となっています。第1回のWGにおける事務局作成資料によれば、SSBJ基準の強制適用の対象はプライム市場の全上場企業となっています。さらに、プライム市場の上場企業は時価総額によってグループ分けされ、時価総額3兆円以上のグループが第一陣となり、2027年3月又は2028年3月期から強制適用が開始され、時価総額1兆円以上のグループが第二陣として一年遅れて強制適用になる案が示されています。最終的にプライム市場に上場している全企業が強制適用となる時期については明記されていませんが、これから議論が深まっていくものと思われます。また、このWGでは、開示されたサステナビリティ情報に対する第三者保証の義務化についても議論がされる見込みです。第1回のWGの事務局資料では、2028年3月期から第三者保証を義務化する案が示されています。第2回以降のWGの内容についても注視していく必要がありそうです。

 

(参考)

SSBJ公開草案:
https://www.ssb-j.jp/jp/domestic_standards/exposure_draft/y2024/2024-0329.html

金融審議会「サステナビリティ情報の開示と保証のあり方に関するワーキング・グループ」(第1回):
https://www.fsa.go.jp/singi/singi_kinyu/sustainability_disclose_wg/shiryou/20240326.html

 

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