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第38回 サステナビリティ基準委員会(SSBJ)での審議の概要
サステナビリティ基準委員会(SSBJ)は、2024年9月5日に第38回サステナビリティ基準委員会を開催し、サステナビリティ開示テーマ別基準公開草案第2号「気候関連開示基準(案)」の論点について審議を行いました。今回から本格的に公開草案へのコメントの再審議が始まっており、再審議の内容について今後速報ベースで概要をお伝えしていきます。
2024年9月17日
2024年9月5日に第38回サステナビリティ基準委員会(以下「SSBJ」という)が開催され、サステナビリティ開示テーマ別基準公開草案第2号「気候関連開示基準(案)」の以下(1)~(4)について審議が行われました。
【第38回SSBJで審議された事項】
(1) 用語の修正(「金額」)(審議事項 A1-2)
(2) 産業横断的指標等(気候関連のリスク及び機会)(審議事項 A2-1)
(3) 産業横断的指標等(資本投下)(審議事項 A2-2)
(4) 産業横断的指標等(報酬)(審議事項 A2-3)
上記事項は、2024年3月29日に公表された公開草案(※)に寄せられたコメント(コメント期限2024年7月31日)について、SSBJ事務局が分析の上、コメントへの対応につき個別に提案を行ったものです。
(※)2024年3月29日に公表された三つの公開草案
- サステナビリティ開示ユニバーサル基準公開草案「サステナビリティ開示基準の適用(案)」
- サステナビリティ開示テーマ別基準公開草案第1号「一般基準(案)」(以下「一般基準案」という)
- サステナビリティ開示テーマ別基準公開草案第2号「気候関連開示基準(案)」(以下「気候基準案」という)
(1) 用語(「金額」)の修正(審議事項 A1-2)
本公開草案に寄せられたコメントのうち、気候関連のリスク及び機会並びに資本投下に関する産業横断的指標等における「金額」という用語(気候基準案第46項(2)~(5)及び第80項~第83項)について、事務局より以下の提案が行われました。
【事務局提案】
- ISSB基準における「amount」 の訳語として用いた「金額」という用語を「数値」に修正する。
- 金額以外も排除しない旨(「開示される情報は、金額であることが多いと考えられるものの、金額以外も排除しないという意味で「数値」という用語を用いている。」)を、結論の背景に記載する。
【審議結果】
検討の結果、事務局の提案が基本的に支持されました。
(2) 産業横断的指標等(気候関連のリスク及び機会)(審議事項 A2-1)
本公開草案に寄せられたコメントのうち、気候関連のリスク及び機会に関する産業横断的指標等については、気候基準案(第46項(2)~(4)及び第80項~第82項)を変更せず、以下の事項を開示することなどが、事務局より提案されました。
【事務局提案】
- 気候関連の移行リスクに対して脆弱な資産又は事業活動の数値及びパーセンテージ、又は、気候関連の移行リスクに対して脆弱な資産又は事業活動の規模に関する情報の少なくともいずれかを開示しなければならない。
- 気候関連の物理的リスクに対して、脆弱な資産又は事業活動の数値及びパーセンテージ、又は気候関連の物理的リスクに対して、脆弱な資産又は事業活動の規模に関する情報の少なくともいいずれかを開示しなければならない。
- 気候関連の機会と整合した資産又は事業活動の数値及びパーセンテージ、又は、気候関連の機会と整合した資産又は事業活動の規模に関する情報の少なくともいずれかを開示しなければならない。
- 指針の追加の要否
企業が表現しようとするものを忠実に表現するため、「脆弱な」や「整合する」について指針は追加せず、企業の解釈に委ねること明らかにしたうえで、企業がどのような資産又は事業活動を識別したのか開示することを求めることが考えられる。
【審議結果】
検討の結果、事務局の提案が基本的に支持されました。
なお、本公開草案における「規模に関する情報」はISSB基準と全く同じ定めではないものの、その開示目的を満たす情報を促進することを目的とした開示であり、ISSB基準の要求事項を取り入れたうえで、明確化を図るためSSBJ基準独自の取扱いとして「規模に関する情報」を用いて開示すること(「大」「中」「小」などの定性的な表現を用いた開示)が、ISSB基準の要求事項に代わる選択可能なオプションとして示されています。この点についても検討の結果、事務局の提案が基本的に支持されました。
また、「企業がどのような資産又は事業活動を識別したのか開示することを求める」はISSB基準の開示要求に対する追加開示要求となる見込みです。
(3) 産業横断的指標等(資本投下)(審議事項 A2-2)
本公開草案に寄せられたコメントのうち、気候関連のリスク及び機会に関する資本投下に関する産業横断的指標等については、気候基準案(第46項(5)及び第83項)を変更せず、次の事項を開示することなどが、事務局より提案されました。
【事務局提案】
- IFRS S2号「気候関連開示」(以下「IFRS S2号」という)の定めと同様に、気候関連のリスク及び機会に投下された資本的支出、ファイナンス又は投資の数値を開示しなければならない。
- 指針の追加の要否
企業が表現しようとするものを忠実に表現するため、「気候関連のリスク及び機会に投下された資本的支出、ファイナンス又は投資」については、指針は追加せず、企業の解釈に委ねることを明らかにしたうえで、企業が「気候関連のリスク及び機会に投下された資本的支出、ファイナス又は投資」をどのように識別したのかを開示すること求めることが考えられる。
【審議結果】
検討の結果、事務局の提案が基本的に支持されました。
(4) 産業横断的指標等(報酬)(審議事項 A2-3)
本公開草案に寄せられたコメントのうち、報酬に関する産業横断的指標等については、気候基準案(第87項、第88項)を変更せず、次の事項を開示することが事務局より提案されました。
【事務局提案】
(1) 気候関連評価項目が役員報酬に組み込まれている場合、次の事項に関する情報を開示しなければならない。
① 気候関連の評価項目を役員報酬に組み込む方法
② 当報告期間に認識された役員報酬のうち、気候関連の評価項目と結びついている部分の割合
(2) 気候関連の評価項目が役員報酬に組み込まれていない場合、その旨を開示しなければならない。
(3) 気候関連の評価項目が役員報酬に組み込まれているものの、他の評価項目と合わせて役員報酬に組み込まれており、気候関連の評価項目に係る部分を区分して識別できない場合は、その旨を開示したうえで、気候関連の評価項目を含む評価項目全体について上記(1)①及び②の事項に関する情報開示することができる。
【審議結果】
検討の結果、事務局の提案が基本的に支持されました。
参考:第38回サステナビリティ基準委員会の概要 (ssb-j.jp)
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