ナレッジ

業界展望2023 小売

変化し続ける消費者を受け入れ、インフレ時代の成長を後押しする

市場の不安定性、長引く労働問題、サプライチェーンの混乱など小売企業は現在の逆風を乗り切るために、パンデミックで経験した回復力をどのように維持できるのか。ここ数年で最も高い生産性を実現してきた方法を振り返り、オムニチャネルやサプライチェーンマネジメント、デジタルコマースに磨きをかけることで利益を確保し、将来的な収益性向上を目指すべきである。従来のコスト削減を超えて企業のビジネス戦略を向上させることに役立つ小売業界のトレンドを解説する。

小売業界の概要:大量生産におけるレジリエンス

激動が予想される新たな年に差し掛かる中で、Deloitte USが調査を行った米国小売企業の経営幹部のうち、利益率を維持・向上させることに自信を持っているのはわずか3分の1に過ぎない。また、調査回答者のほぼ全員が、経済的な懸念の高まりから消費意欲が落ち込み、消費者にとっても厳しい時代が到来すると予想している。

しかし、小売業界の展望は暗いものばかりではなく、パンデミック下のこの数年で小売企業はレジリエンス(回復力)について多くを学んだことは新しい困難に立ち向かうヒントになるだろう。多くの小売企業は、パンデミック時の大規模な需要の変動によって、旧態依然のシステムを見直し、より柔軟なオペレーションに転換することを余儀なくされたと共に、急速に進化する消費者の嗜好を捉えロイヤルティを向上させるためには、より効果的な分析とツールが必要であることを学んだ。

Deloitte USは、小売企業の動向を探るため、50人の経営幹部を対象に今後1年間の課題と機会について調査を実施した。

本レポートは、調査結果を基に現在の市場、将来への期待、変化する消費者ニーズが、今後の戦略にどのように反映されるか、トップパフォーマーとなりうる企業から得た教訓として独自の見解を示している。

(2.7MB, PDF)

小売業界の3つのトレンドと優先事項

小売企業が消費者の変化に対応しながら効率化を図るために、取り組むべき3つの重要な領域を解説する。

サプライチェーン

ラストワンマイル

送料無料が当たり前になった今、送料が自己負担であることが分かると半数以上の消費者は買うのをやめてしまうおそれがあることを考えると、元の状態に戻すのは難しい。当たり前になったサービスを縮小させると顧客ロイヤルティが損なわれるおそれがあり、小売企業は苦境に立たされている。
こうした利便性への対応が引き続き求められていることから、小売企業は、採算が合わないことが多い人手をかけるサービス(例:ピッキング、梱包、加工)に解決の糸口を見つけざるを得ない。
小売企業がシームレスな購買体験を実現するためには、自動化されたマイクロ・フルフィルメント・センター(MFC)に投資し、より収益性の高いラストマイル配送ソリューションの構築を検討する必要がある。MFCを活用することで、保管容量や処理速度を向上させ、複数店舗の注文処理やこれまで手作業で行っていたピッキング作業を廃止して効率化を図ることができる。さらに、MFCにより、小売企業が提供できる当日・翌日配送サービスの範囲を拡大することも可能になる。

オムニチャネル

リバース・ロジスティクス

小売企業は、返品や交換を受け入れ、全ての顧客が簡単に利用できるようにすることで、返品/交換を市場価値のある、差別化要素となりうるひとつの機能に昇華させる必要がある。消費者の利便性が重要視される中、返品にかかる時間は、顧客の期待に応え、競争力のあるものでなければならないが、季節的な需要を外さないためのスピード感も求められる。
小売企業にとっては、オンラインで類似商品を提案したり、店舗での返品を接客の機会として利用したりするなど、全ての返品が別の販売のチャンスとなり得る。
同時に、店舗でのリバース・ロジスティクス機能を活用することも検討する必要がある。対面での返品は、すぐに払い戻しを受けたいという顧客の欲求を満たしつつ、郵送での返品にかかる費用を削減することができる。さらに、店員が接客することで、同様のスタイルの商品を紹介したり、利益率の高い商品を提案したりする機会が生まれるというメリットもある。米国では、提携している小売企業のために返品商品を梱包して発送する返品窓口である「リターン・バー」の人気が高まっており、リターン・バーに参加している小売企業は、返品処理コストを20%以上削減しているというデータもある。

デジタル

ソーシャルコマース

ソーシャルコマースは顧客を獲得・維持する際のコスト効率を高めることができるため、小売企業にとって特にデジタルチャネルに投資することは非常に魅力的だ。
また、インフルエンサーとの協働も同様に効率化を可能にし、ブランドが適切なクリエイターと提携することは、獲得可能な潜在的消費者へのアクセスを得られ、ブランドマーケティング業務の大部分を省略することができるのである。さらに小売企業は、自らあらゆるソーシャルチャネルに進出せずとも、クリエイターが複数のソーシャルプラットフォームで確立してきた基盤やコミュニティを活用することができる。
小売企業は、ソーシャルチャネルやショッパブルメディアでシームレスな購買体験を提供する技術に投資し、利用者の購買意欲を刺激することでロイヤルティを向上させる必要がある。商品情報を含むショッパブルタグを有効にし、ブランドのウェブサイトをソーシャルメディアアプリに組み込み、アプリ内取引を可能にすることで、ショッピングジャーニーにおける障壁を低減することができる。これにより、ユーザーは数回のクリックで素早く商品を特定し、購入することが可能になる。
インフルエンサーに対するロイヤルティは、ブランドに対するロイヤルティにもつながるが、ブランドは消費者の変化を反映した、様々な職業・社会的地位、ライフスタイル、地域からの多様なインフルエンサーを巻き込んだ真の戦略を構築しなければならない。

${column4-title}

${column4-text}

調査概要

本調査は、Deloitte USの委託により、第三者調査会社が2022年10月21日から10月31日にかけて、小売業界の経営幹部50人(うち70%が年商100億ドル以上の企業)を対象にオンラインで実施したものである。回答者の中には、主要な戦略的イニシアチブに直接的な責任を負う、または大きな影響力を持つC-Suiteおよびシニアエグゼクティブ等が含まれる。

本レポートはDeloitte Touche Tohmatsu Limited が発表した内容をもとに、デロイト トーマツ コンサルティング合同会社が翻訳・加筆したものです。
和訳版と原文(英語)に差異が発生した場合には、原文を優先します。

原文(英語)レポートは以下よりご参照頂けます。
2023 retail industry outlook

Fullwidth SCC. Do not delete! This box/component contains JavaScript that is needed on this page. This message will not be visible when page is activated.

お役に立ちましたか?